4話:生徒会長の素顔? 放課後の打ち合わせ

 

――鋭い剣がきらりと光を放つ。


 辺りは深い闇に包まれていて、視界はほとんどきかない。


 だけど俺は、背後に感じる“味方”の存在に安心しながら前へ進んでいた。

「任せて……大丈夫、敵は必ず倒せるから!」


 白いローブを纏った人物が、力強い声を投げかけてくる。

 まるで聖職者が奇跡を約束するような、そんな温かいトーン。


 その声に促されるまま、俺は剣を掲げる。


「よし、いくぞ……!」


 激しい稲光が走り、目の前に巨大な魔人が姿を現す。


 その姿はあまりにも禍々しいが、どういうわけか俺は恐怖より希望を感じていた。

後ろに“彼女”がいるからだ。


「これで決める――ッ!」


 剣を振り下ろそうとする、その瞬間――


「――鳴海くん? 聞こえてる?」


 バサリ。


辺りの暗闇が一瞬でかき消え、視界にノートパソコンの画面が映り込む。


 放課後の生徒会室。

俺はまた妄想(というか半分昼寝)をしそうになっていたらしい。


 目の前には、青柳 翔太と茅ヶ崎 香澄がこちらを見ている。

いや、茅ヶ崎さんはいつも通りクールな表情だけど、翔太がニヤニヤ笑ってる。


「おいおい、寝てんじゃねえよ。珍しく生徒会室になんて来たから、緊張しちゃったのか?」

「うるさい……ちょっと考えごとしてただけだ」


 顔を赤らめながら誤魔化す。

 今日は茅ヶ崎さんから“文化祭のステージ企画に協力してほしい”と頼まれた初めての打ち合わせ日。


 そしたらなんでか翔太まで呼ばれていて、話を聞くと「彼もSNSの活用に詳しいから」とか。

正直、余計な茶々を入れられそうな気しかしない。


「翔太くんには拡散や宣伝のお手伝いをお願いしました。」

「鳴海くんが作ってくれる動画とか企画案を、どう見せれば興味を引けるか、彼は意外と得意だと聞きまして」


「そうそう、こういうのはガンガン広めて盛り上げるのが大事だろ? 

俺に任せとけ!」


 翔太が胸を張る。

 しかし、そんなに大風呂敷広げて大丈夫なのか……

と思いつつ、俺も文句は言えない。


 茅ヶ崎さんは机の上の資料をサッとまとめると、落ち着いた声で続けた。


「では、本題に入りましょう。文化祭のステージを単に使うだけじゃなく

映像や音響を絡めて、観客にインパクトを与えたいんです。」


「そこで――ネット配信やVTuberみたいな要素を入れたら面白いかもって」


「ネット配信……か」


 俺は心臓がドキリと鳴る。


 もちろん興味あるよ。

というか、俺自身がVTuber「ナール」だからね。


 でもそれを表に出すわけにはいかないし

下手に詳しいそぶりを見せるのもリスキーだ。


「香澄ちゃん、それは斬新だな! 

学校行事とネット配信を組み合わせるなんて、今までにない感じだぞ」


 翔太があっさりノリノリになる。

そりゃ確かに盛り上がりそうだけど、学校側に許可を取るのが大変そうだ。


 茅ヶ崎さんは資料を指差して言う。


「私たちが使える機材は限られています。放送部との連携も考えていますが

そこに鳴海くんの“編集技術”が入れば、ある程度形になるかもしれない」


「まあ、編集ってほど大したことは……」


 謙遜するが、香澄は軽く首を振る。


「先生からも聞きましたよ。鳴海くんが文芸部の動画発表会でリーダーを担い、短い映像作品も作っていたとか」

「それは……まあ、はい。一応やったけど……」


 確かに俺は以前、文芸部の催しで朗読劇に合わせた動画を作ったことがある。

その出来が割と好評だったと聞いたけど。


 あれが今回の役に立つのか……?


「とにかく、できる範囲でいいので力を貸してください。

私もステージの企画運営でなるべくサポートします」


 茅ヶ崎さんの目は真剣そのもの。

いつもクールで完璧なイメージだけど、こうして話すと意外と熱意があるんだなと思う。


 まるで“本当に何かを成し遂げたい”という強い意志を秘めているようだ。


「……わかった。何をやればいいか、具体的な資料を後で渡してくれれば」

「助かります。じゃあ今日はこの打ち合わせで内容の方向性を決めましょう。文化祭まで時間がありませんから」


 そうして、俺と翔太と茅ヶ崎さんの三人でステージ企画の会議が始まった。


 文化祭を盛り上げるための企画案――ネット配信、VTuber的演出、映像編集。


 どれも俺が隠れてやっている“ナール”としての活動に通じるところがあって、興味は尽きない。


 でも、それ以上に俺は気になっていた。

 ――なぜ茅ヶ崎さんがそこまで必死に頑張っているのか。


 生徒会長だから? それだけじゃなさそうな気がする。


 ひょっとして彼女にも何か“秘密”があるんじゃないだろうか……?


 そんな疑念を抱きつつ、気づけば放課後の夕暮れも過ぎ

校舎にはほとんど人気がなくなるまで話し込んでいた。



◇◇◇



 廊下を歩いて昇降口へ向かう途中、茅ヶ崎さんと二人きりになった。


 翔太は先に帰って、「あとはよろしく〜!」と無責任な捨て台詞を残して去っていった。


「……今日はありがとう。きっと大変になると思うけど、よろしくね」

「うん。何とかがんばるよ」


 空っぽの廊下に足音だけが響く。


 茅ヶ崎さんは少し疲れた顔をしているが、どこか満足げな笑みを浮かべていた。


「鳴海くんは……動画とか、結構好きなんでしょ?」

「ま、まあね。一人で編集したり、こだわり出すと止まらないタチなんだ」


「私も、実はそういう配信とかに興味があって……最近よく見るの」


 さらっと言われた言葉に心臓が跳ねる。

 まさか“ナール”の配信を見てたりしないよな? 

たまたま検索で引っかかったり……ないとは言えない。


 でも茅ヶ崎さんの言い方からすると、何か別の理由がありそうな。


「あ、そう、なんだ……やっぱ今流行ってるしね」

「うん。特にVTuberは、自由に自分を表現できるのがいいよね」


 茅ヶ崎さんが語る口調には、どこか羨望のような響きがあった。


 ――自由に自分を表現できる。


 そう、俺もそれがうれしくてナールとして活動しているんだ。

地味な自分を覆い隠し、やりたい放題できる場所。


 けれど、茅ヶ崎さんは完璧な生徒会長じゃないか。

わざわざ匿名の姿になる必要なんてあるのだろうか?


 その謎めいた思考が頭を回り続けているうちに、昇降口へ到着。

 靴を履き替えながら、茅ヶ崎さんがふいに俺の目を見て微笑んだ。


「お疲れさま、また明日」

「う、うん……お疲れ」


 そんな短い言葉だけで、俺の胸はなぜかドキドキしていた。


 ――茅ヶ崎さんは一体、どんな思いでネット配信に興味を持っているんだろう?


 完璧生徒会長のイメージとはまるで違う姿があるような気がして、頭から離れない。


 ――まさか、彼女が“あの大人気VTuber”だなんて

 このときの俺は知るよしもなかった。



◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


 こんにちは。

 のいのいです。

 最新話まで読んでいただきありがとうございました。


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