第9話 初めての帰り道
私は、理玖君と並んで歩いていた。
夕焼けが、道をオレンジ色に染めている。
でも、空気は淡いピンク色だ。
――でも、別に一人で帰ってもよかったのに。
「ドジなオメーが心配だからさ」
そんなことだけ言って、理玖君は当然みたいに隣を歩いてる。
もう…その口調、ほんとズルいんだよ。
心配とか、そんなの言われたら――私、嬉しくなっちゃうじゃん。
「…聞いてるか? 柑奈」
「え!? あ、ご、ごめん…聞いてなかった」
びくっとして返すと、理玖君はちょっとだけ目を伏せた。
「別にいいや。あの頃の話なんて、おもしろくねーし」
――あの頃?
気になった。でも、聞けない。
今の空気を壊したくなかった。
「そ・れ・よ・り」
理玖君が小さく笑いながら、私の方をチラ見してくる。
ドキッ。なに? 今度は何?。急に立ち止まって。
「柑奈って、好きなやついんの?」
――うわ、きた。突然の爆弾発言。
心臓が跳ねすぎて、息が止まりそう。
「い、い、いるわけないじゃん!!」
完全に動揺しながら叫ぶと、理玖君はくすっと笑って、ぽつり。
「良かったわ」
その言い方が、優しすぎてずるい。
なんなの、その笑い方。そんな顔、私に向けていいものじゃない。
「ど、どういう意味……?」
私がそう聞こうとしたら、彼はくるっと前を向いた。
でも、わかった。
顔、赤かった。私と同じくらい。
「俺、家ここだから。また明日な」
さりげなく言って、扉に手をかける。
待って…そんな顔して帰るのずるいよ…。
こっちの鼓動、どうしてくれるの…。
そして、私も自分の家を探そうと歩き出して――止まった。
「え? …えっ!?」
玄関。すぐ隣。
理玖君の家の、ほんの1メートル横。
私の家が――あった。
お、お隣!?
それって、つまり……毎朝会っちゃうし、
もしかして、窓から見える距離だし……
ひょっとして、これって、まさか……
恋が始まる距離じゃん……!?。
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