第2話 いやいや学校へ

何回アラームをスヌーズにしたのだろうか。うるさい。

 枕を被って、もう少し寝ていたかった。でも――。


 ぐしゃっ。


 「……っ、いたっ!」

 気づけば、私はベッドから転がり落ちていた。じんじんと鈍い痛みが背中に広がる。ぼんやりした頭が、一瞬で覚醒した。


 「遅刻だ!!」


 飛び起きて、カバンを探しながら服を着る。靴下はどこ!? カバンは!?うぅ〜 頭の中がぐちゃぐちゃだ。朝ごはん。パンとハムエッグをかき込むように口に押し込み、「行ってきます!」と家を飛び出した。


 その瞬間、母が玄関で手を差し出した。


 「これ、つけなさい」


これは? マスクだ。

 私は無言で受け取ると、顔に装着する。途端に感じる、息苦しさ。

 わかってる。母は優しい。私のことを、心配してくれている。でも――それでも、

このマスクは、顔を隠すためのものに思えてならなかった。


 気持ちを振り払うように走り出す。

 角を曲がった、その時だった。


 視界の端に、黒い影が見えた。

 同じ制服。同じく駆け足。

 私と同じように、急いでいる誰か――。


 「――えっ」


 目が合った。


 男子だった。短めの黒髪。寝癖が、治っていないかんじの髪が風になびく。

 そんな――彼も、マスクをしていた。


 どんっ!!!


 思ったよりも衝撃が強かった。

「う!?」

 体が大きく弾かれ、私はよろめいた。足元がぐらつく。

 ――倒れる!


 その瞬間、腕が伸びてきた。

 男子の手が、私の腕をぎゅっと掴んだ。

 「っ、大丈夫ですか!?」

 驚いたような声。でも、どこか優しい。


 「こ、こちらこそ、ごめんなさい……!」


 彼も、私も、マスク越しに息を乱していた。

 じっと目を見つめ合う。


 なんだろう、この感じ。今までにない胸の鼓動。


 彼は、なんとなく私と似ている気がした。

 ――マスクをしているから? それとも……?


 「えっと……急いでるので!!」


 この気持ちの正体がわかる前に、私は走り出してしまった。

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