第14話 ─悪魔の少女─
パキン。
少女の瞳に宿っていた妖しい光が音を立てて砕ける。
それに驚くようにして、少女が数歩後退り睨みつけてくる。
「あなた何者……。」
「こっちからすればお前の方がどちら様って感じなんだが。」
《スキル、《知りたがりの瞳》を発動します。》
《ステータス》
種族名: グレーター・デーモン
真名: 悪魔の第一皇女・《ガーベラバラ・アイビー》
Lv: 206
HP: 100506/182050 攻撃力:150206
MP: 100006/250146 敏捷:102120
SP: 100450/190500 防御力:120056
スキル: 《従属化の呪い》《王の威厳》《魅惑の微笑》
《惺彗槍》《魔王の覇気》《悪魔の微笑》
《絶剣術》《武王の拳》《神羅万掌》
《王の特権》《覇王領域》《即時再生》
《死滅する劫火の種》《真価解放》
《刹那の歩》《隠密》《悪魔の唄》
《破壊を望む瞳》《精神汚染》《神滅の呪い》
《第四の壁》《鎧狩り》《魔闘気術》
《甘美な捕食》《眠る姫のワルキューレ》
《嘆きの龍の吐息》《死する英雄の再来》
その他: [<称号>・王の継承者][<称号>・受け継ぐ者][<称号>・戦乙女][<称号>・遍く者][<称号>・踏破者][<称号>・神に仇なす者][<称号>・ラストエンペラー]
後退る少女になんというべきか分からず、ステータスを確認する。
彼女の名乗りに偽りはなく、例により王としての威厳を感じる。
とはいえ、ステータスがバグのように見える。
俺のレベルもついさっき200台に突入したばかりなのだが、僅差で何とか俺の勝ちのようだ。
ただスキルの量が尋常では無い。
そこいらの魔物とは一線を脱した存在であることが、疑いようも無いほど鮮烈に読み取れる。
そこでようやく、彼女が悪魔の王であることを理解する。
「悪魔の皇様か。」
俺の一挙手一投足に最新の注意を払いながら、常に警戒を怠らないのは、彼女がここにいる理由にあるのだろうか。
「……お前は人間なのか?」
警戒する少女にどう切り出すかを考えていたところだったが、以外にも彼女の方から声をかけてくる。
「もちろん人間だ。」
「だが、お前の存在感は異質だ。人間にしてはやけに澄んでいる。」
怯えるような目でそう訴えると、また少し後退したところで全身を魔力が包む。
「《魔皇の鎧》!!」
彼女が声を張り上げた瞬間、彼女を包み込んだ魔力が結晶化するように突然輪郭を手に入れる。
龍の鱗を剥いで無理やりくっつけたかのような鎧が全身を包み込むように現れ、ステータスを上昇させる。
部屋の真ん中で膨らんだエネルギーは、行き場を失うようにして飛び出してこようと膨張を続ける。
そんな姿を見て、さすがに慌ててしまう。
「おい!部屋の中を荒らすなよ!!」
ここは父さんが買った家ではあるが、まだローンは残っている。
その上で家が壊れたなんてことになれば、母さんにこっぴどく叱られるだろう。
「とりあえず!敵意は無い!だから落ち着け!」
慌てた俺の声にどう感じたかは分からないが、膨らみ続けていたエネルギーは萎んで行き、身にまとっていた鎧も粒子のようにキラキラと舞っていく。
「……お前は私のレベルを超えているというのに、悪魔である私に敵意を持たないのか。」
睨みつけるような鋭い眼光に嫌な汗がたれ始める。
今まで感じたことの無い圧力に少し圧倒されるが、ここでめげては行けないと、平然を保って話を続ける。
「ああ。そもそも、お前だって今は争いなんてしたくないだろう。その首の傷、外は完全に治ってるが中は相当酷いみたいだな。」
指をさして指摘してみれば、サッと掌で首元を隠す少女。
彼女はどこか驚いたような顔をしている。
「なぜそんなことが分かる。人間にはそんな芸当不可能なはずだ。やはり貴様は……。」
「まあ、お前がそこまで言うなら人間じゃないとしよう。だとしても俺はお前に敵意なんてないし、お前が望むならお前の手助けもしてやる。」
俺の言葉に、ピタリと動きを止める。
その顔は、苦渋に染まりきっていた。
「まあ無理にとは言わないが、悪魔の皇族ともあろう存在がそんなボロボロな状態で逃げてきたんだ。まずは自分よりも強い相手に助けを求めてみるのも手では無いのか?」
俺の言葉に、しかし依然として決断をくだしあぐねた様子で俺を睨みつける。
「……分かった、ならばその言葉に有難く甘えさせてもらおう。」
苦しそうな顔でそう言うのは、皇としてのプライドなのか、彼女の性格なのか。
定かではないが、これで家の安全は守れたわけだ。
「で、詳しく聞くことになると思うが、何があったのか聞いてもいいか?」
「……いや、すまないが、今は少し休ませてくれないか。先程の《解放》で少し力を消耗してしまって意識を保つのもやっとなんだ。」
俺の言葉にそう返すと、ゆっくりと膝を折り曲げて地面に座り込む。
どうやらよほど激しい戦いだったようで、まるで生気を吸い取られているかのようにみるみると顔色が悪くなっていく。
「きっと《魔力欠乏》だろう。数日もすれば良くなる。だからその時にまた詳しい話をさせてくれないか。」
「そう言う事なら、まあしょうがないか。すぐに布団を敷くから少し待っていてくれ。」
さすがにこんな状態に陥ったヤツを放っておく訳にも行くまい。
妹はまだ《魅了》にかかっているのか、上の空といった表情で棒立ちを決め込んでいる。
そんな妹を横目に、そそくさと持ってきた布団を座敷に敷いて、少女を案内する。
「一応、何か食べ物とかで必要なものがあれば声をかけてくれ。」
俺の言葉に「ありがとう」と言うと少女は、ゆっくりと横になって目を瞑る。
俺も「どういたしまして」と声をかけると座敷の襖を閉めて出ようと、木の枠に手をかける。
ゆっくりと力を入れ、襖を閉じ、最後の隙間を閉じようとしたところで少女が目を開いてこちらを向く。
何かを言おうとしているのか、意図は分からなかったが、感覚的に少し隙間を広げる。
「どうした?」
「……ありがとう。よろしく。」
言おうとしてから恥ずかしくなったのか、そう言うとすぐに布団の中に潜ってゴロンとこちらに背を向ける。
そんな光景に、俺もそっと「よろしく。」と返すと、少女、アイビーの背中を見送るように扉を閉めて座敷から離れるのだった。
「後は琴里を元に戻せば終わりか。」
俺は妹に近づくと、妹にかかった呪いを解除する。
呪いが解除された妹は、正気に戻ったようで俺を見るなり少し目に涙を浮かべる。
「おにーちゃん……こわかったよぉ。」
ギュッと目の前にいる俺の体を腕いっぱいに抱きしめてそんなことを言う。
呪いにかかっている中で、何か怖い思いでもさせてしまっただろうか。
俺は妹の頭を撫でながら次の言葉を待つ。
「もしかしたら死んじゃったんじゃないかなって、怖くなっちゃって。さみしくて……。」
確かに、一日中連絡もなくダンジョンに潜り続けていれば怖くもなるだろう。
悪いことをしてしまった。
優しく、何を触るよりも優しく妹の頭を撫でると、「俺はここにいる。」と、漫画で見たセリフを言ってみる。
一度言ってみたかった言葉だ。
ただ、その言葉で落ち着いたのか、妹は俺から離れると「ご飯食べよ!」なんて元気に夜ご飯の支度をしてくれる。
「ありがとう。」
俺は何気なくお礼を言うと、妹が用意してくれた料理を美味しく頂いてお腹を満たし、疲れを癒すためにその日は床に就くのだった。
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