第17話 社獣ハンター 太陽光発電投資の罠

 社獣ハンターのメンバー

 堀部映理(ほりべ えり)

 社獣ハンターのメンバーで格闘技の天才。『必殺飛燕真空回し蹴り』で数多くの悪人を沈めてきた。オフィスでは筋トレを欠かさず、常に身体を鍛えている。

 五十嵐いづみ(いがらし いづみ)

 社獣ハンターのスタッフ。女優・山岸あや花似の美女。身長175cm、痩身でメガネをかけた知的な雰囲気を持つ。セクハラを行う社獣を罠にはめるのが得意。

 藤堂葵奈(とうどう あいな)

 社獣ハンターのアシスタント。一見クールだが、小心者。強くありたいと努力するものの、恐怖や極度の緊張に襲われると嘔吐してしまう体質。

 AI先生

 社獣ハンターに確実な情報を伝えるモニター上のクリーンなインターフェース。

 チャプンド

 情報工学の専門家。盗聴や盗撮を駆使して堀部映理たちを援護。デスクはモニターと機材で埋め尽くされ、最新の情報を解析する。


 第一章:川畑川男、投資の甘い罠に落ちる

 公務員として堅実に働いてきた川畑川男(かわばた・かわお)は、今年で四十五歳。年収は620万円。これまで特に派手な生活をしてきたわけではないが、そろそろ「自分の資産を増やしたい」と思うようになっていた。

 「銀行に預けておいても増えないし、株はリスクが高い。だけど、太陽光発電なら安定した収益が見込めるらしい」

 ある晩、スマートフォンで「初心者でもできる太陽光発電投資」という記事を読んだ川男は、すっかりその魅力に取り憑かれた。年間利回りは10%を超えることもあるという。これなら老後の不安も和らぐ。

 「よし、俺もやってみるか」

 その気になって検索を続けると、「今だけの限定物件! すぐに収益化可能!」と謳う業者の広告が目に留まった。問い合わせフォームに情報を入力すると、わずか数時間後に電話がかかってきた。

 「川畑様、素晴らしい投資の機会です!」

 電話の向こうの営業マンは流暢に話す。愛媛県の離島にある太陽光発電施設。土地付きで、価格は2400万円。しかも、「すぐに売電収益が入る」「管理も不要」「人気の物件なので、すぐに決断を」と畳み掛けてくる。

 「でも、現地は見なくていいんですか?」

「ご安心ください! 当社がすべて調査済みですし、過去のデータを見れば明らかに優良物件です。すでに他の投資家も興味を持っていますよ!」

 営業マンの焦らせる言葉に、川男の心は揺れた。実際、ネットには「太陽光投資で年収を超える収益を得た」といった成功談が溢れている。

 「……よし、決めた!」

 こうして川男は2400万円を投じ、晴れて「発電事業者」となったのだった。


 第二章:投資家の現実

 契約から一週間後、川男のもとに契約書とともに施設の管理マニュアルが届いた。

 「これで俺も不労所得生活か……」

 そう呟きながら書類を読み進めるが、そこにはいくつか不可解な点があった。

 「地盤の補強が必要? 廃棄物処理? ……まあ、そこまで大したことじゃないだろう」

 ところが、現地の管理会社から最初の報告が届いた時、川男の夢は崩れ始める。

 「川畑様、大変申し訳ありませんが、発電所の前の地盤が緩んでいて、水が溜まっています。何らかの対策が必要ですね」

 「……え?」

 「それと、施設内に産業廃棄物が大量に残っているようで、処理費用がかなりかかるかもしれません」

 「……産廃?」

 不安が募る中、さらに衝撃的な報告が続く。

 「あと、パワーコンディショナーなんですが、メーカーのリコール対象になってまして……修理もできませんし、新品に交換すると約80万円かかります」

 「なっ……!」

 川男の心臓が冷たくなった。だが、それだけでは終わらない。

 「それとですね……最近、電力会社の買取制限が厳しくなっていて、売電できない時間帯があるんです。収益は不安定になるかもしれません」

 もはや悪いニュースの連打。この投資は「安定収益」どころか、予想外の出費とリスクの連続だった。


 第三章:絶望の決断

 4ヶ月が経ち、川男は厳しい現実を突きつけられていた。

 「売電収入は4ヶ月で約90万円か……でも、産廃処理費用、地盤改修費用、パワーコンディショナー交換費用……全部合わせたら、もう完全に赤字だ」

 気がつけば、売電収入どころか、これ以上維持するのも困難な状況に陥っていた。何より、離島にあるため、自分で管理することもできない。

 「もう、手放すしかない……」

 泣く泣く施設を2000万で売却することを決めたが、購入時より300万円の損失。これまでの手続き費用や修繕費用を考えれば、さらに大きなマイナスだった。

 最後に不動産業者が言った言葉、川男の胸に突き刺さる。

 「太陽光発電施設って、もう“ババ抜き”みたいなもんなんですよね。買う人が見つかるだけでも良かったですよ」

 ――ババ抜き。まさにそれだった。

 ネットの情報を鵜呑みにし、現地確認もせず、甘い言葉に乗せられた結果がこれだ。

 最後に川男は、呆然としながらスマホを見つめた。そこには、かつて彼が心を躍らせながら読んだ「太陽光投資で成功する方法!」という記事が、虚しく輝いていた。

 「もう二度と、太陽光なんて買わない……」

 川男は、そう呟いてスマホの画面を閉じた。


 第四章 川畑川男の依頼

 夜のオフィス。社獣ハンターの本部に、一人の男が肩を落として訪れた。彼の名は川畑川男(かわばた・かわお)。

 「お願いです。僕を騙したあの男を……何とかしてくれませんか?」

 彼の声は震え、拳は机の上で固く握られていた。五十嵐いづみが冷静に眼鏡のブリッジを押し上げ、優雅に問いかける。

 「落ち着いて、詳細を話してください。騙されたというのは?」

 「太陽光発電投資です。利回りが良いという話に乗せられて、愛媛の離島にある発電施設を2,400万円で買いました。でも……そこは地盤が緩み、産廃も放置されていて、まともに発電できない施設でした。電力会社の買取制限で収益は安定せず、最終的に3,000万円近い損失を出して売却するしかありませんでした……」

 いづみが手元のタブレットを操作すると、AI先生のクリーンなインターフェースが現れた。

 『解析開始。該当案件の情報を収集します……』

 次の瞬間、大型モニターにデータが映し出される。そこには、悪質なソーラー事業を手掛ける会社――**「グローバル・サン・エナジー」**の名が浮かび上がっていた。

 「代表取締役、両倉和人(もろくら・かずひと)……ですか」

 堀部映理が腕を組み、眉をひそめる。「いかにも怪しい名前ね。チャプンド、こいつの素性を洗い出せる?」

 「了解、少々お待ちを」

 チャプンドのデスクには無数のモニターが並び、彼の指が光速でキーボードを叩く。瞬く間に、両倉の豪遊ぶりが映し出された。


 第五章 両倉和人の豪遊

 東京・六本木の高級クラブ「エリュシオン」。そこは金持ちのための楽園だった。シャンパンタワーの光が反射し、ゴージャスなドレスをまとった美女たちが笑顔を振りまいている。

 「ははは! これが勝者の余裕ってやつよ!」

 中央のVIP席で、高級シャンパンをラッパ飲みする男こそが両倉和人だった。派手なスーツに腕にはロレックス。隣には美女二人を侍らせ、豪快に札束をばらまいている。

 「いいか? 投資なんてのは、売る側が勝つんだよ。馬鹿なカモが金を出す限り、俺はこうやって楽しませてもらうのさ!」

 「さすが両倉社長!」

 取り巻きが拍手を送る中、一人の長身の美女が店の奥から現れた。

 「両倉社長……ですか?」

 それは五十嵐いづみだった。シルクのスリットドレスに身を包み、知的な瞳の奥に妖艶な光を宿している。彼女はまるで高級クラブの常連のように振る舞いながら、両倉の前に歩み寄った。

 「あなたに、ぜひご相談したい投資話があるのですが……」

 両倉は一瞬、いづみの容姿に見とれた。身長175cmの痩身、洗練された美貌に知的なメガネ。彼のような成金には、こうした「高嶺の花」が最も魅力的に映る。

 「ほう……投資話ね。いいだろう、ここじゃ落ち着かない。場所を変えようじゃないか」

 両倉は自信たっぷりに笑い、いづみの腰に手を回そうとする。しかし、その瞬間――

 「その手、引っ込めてもらえます?」

 いづみの眼鏡がわずかに光り、ピタリと冷ややかな笑みを浮かべた。その雰囲気に、両倉は思わず動きを止める。

 「ふふ、冗談だよ。さて、その投資の話、詳しく聞こうじゃないか」

 彼は場所を移動するつもりだった。だが、それが彼の転落の始まりとも知らずに。


 第六章 社獣ハンターの反撃

 六本木の高級ホテル「ル・クラシック」。煌びやかなシャンデリアの下、両倉和人はワイングラスを傾けながら、五十嵐いづみの魅惑的な瞳を覗き込んだ。

 「さあ、二人きりになったことだし……楽しい時間にしようか?」

 彼は薄ら笑いを浮かべ、いづみの肩に手を伸ばそうとする。しかし、いづみはグラスの中のワインを軽く揺らしながら、涼しげな微笑みを浮かべた。

 「本当に楽しめるかしら?」

 その瞬間、部屋のドアが音もなく開いた。風が吹き抜けるような静寂の中、突如として空気が張り詰める。次の瞬間、夜の闇のように素早く、そして嵐のように激しく堀部映理が飛び込んできた。

 「あんたの悪ふざけはここまでよ!」

 両倉が驚く間もなく、映理の鋭い蹴りが空を切り裂く。

 「必殺・飛燕真空回し蹴り!」

 回転蹴りが両倉の顎を捉え、彼の身体は吹き飛ばされ、背後のソファに叩きつけられた。

 「ぐあっ……!!」

 ワイングラスが床に落ち、赤い液体がカーペットに広がる。両倉は意識を失い、力なく崩れ落ちた。

 その瞬間、チャプンドのハッキングが完了し、SNS上でグローバル・サン・エナジーの悪事を暴露する投稿が一斉に拡散される。証拠となる契約書、被害者の証言、裏取引の記録。すべての悪行が白日の下にさらされた。

 「やったわ。これで奴の悪行も終わりね。」

 いづみがスマホを手に取り、リアルタイムで炎上していく投稿を眺めながら、満足げに微笑んだ。数分もしないうちに「詐欺」「悪徳業者」「社会のゴミ」といったタグがトレンド入りし、世論は完全に両倉を見放した。

 SNSでの書き込み

1.  @investwatch_jp

「グローバル・サン・エナジー、ついにやらかしたな。投資詐欺の証拠が続々と出てきてる。これ、もう終わりでしょ… #詐欺 #悪徳業者」

2.  @eco_fighter99

「太陽光発電で儲かるとか言ってたのに、結局ただの詐欺会社だったか…。被害者がたくさん出てるみたい。許せない。 #環境ビジネスの闇」

3.  @city_news_alert

「【速報】グローバル・サン・エナジーの代表、両倉和人氏が詐欺まがいの投資勧誘をしていた証拠が拡散中。関係者によるとすでに破産手続きへ…。 #ニュース速報」

4.  @justice_warrior

「六本木で豪遊してた悪党が、今は路上生活者って…まさに因果応報。詐欺で儲けた金はどこへ? #自業自得 #社獣ハンターの勝利」

5.  @hunter_justice

「社獣ハンター、また1つ悪を駆逐! これは見事な制裁だ。もっとこういう悪党を駆逐してほしい! #社獣ハンター #正義は勝つ」

 

 【エピローグ】

 それから数ヶ月後。

 かつて高級車を乗り回し、豪遊していた両倉和人の姿は、六本木のどのクラブにもなかった。

 グローバル・サン・エナジーは倒産。両倉は破産し、すべてを失った。

 ボロボロの服をまとい、憔悴しきった両倉は、ゴミ箱を漁る惨めな生活を送っていた。

 「……嘘だろ……俺が、こんな……」

 六本木のクラブ「エリュシオン」の前で、足を引きずるように歩いていたその姿を、かつて彼に媚を売っていたホステスたちが見つけた。

 「ふふっ、あれ両倉じゃない?」「金がなくなったらただのゴミね。ざまあみろ。」

 彼女たちは冷たく笑い、何の情もなく通り過ぎていった。

 一方、カフェのテラス席では、堀部映理と五十嵐いづみがゆったりと座り、静かに紅茶を傾けていた。

 「終わったわね。」

 「ええ、また一匹、社獣が駆逐された。」

 彼女たちはお互いに視線を交わし、グラスを掲げた。

 「乾杯、社獣ハンターの新たな勝利に。」

 明るい日差しが降り注ぐカフェのテラス。穏やかな微笑みを浮かべながら、彼女たちは次なる戦いに思いを馳せていた。

 (完)

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