第2話 夢の鏡の間
リゼは鏡をくぐり抜けると、そこにはエレセイラの不思議な世界が広がっていた。澄んだ空気に甘い花の香りが漂い、青い空の下には虹色に輝く草原がどこまでも広がっている。現実の世界では見たこともない、美しく幻想的な光景だった。
「ここが……エレセイラ……」
彼女は驚きと同時に、自分の足元がふわりと軽くなったような感覚を覚えた。しかし、その喜びも束の間。前方に現れた壮大な建物に視線を奪われた。
その建物は「夢の鏡の間」と呼ばれる場所だった。エレセイラにおいて、試練の第一歩を踏み出すために訪れる場所。建物の壁は鏡でできており、そこに映る自分は現実の自分とも違い、夢や心の奥底を反映するという。
リゼは不安と期待の入り混じった気持ちでその建物に足を踏み入れるのだった。
夢の鏡の間に入ると、そこは無限に広がる鏡の世界だった。どこを見ても、自分が映っている。しかし、それぞれの鏡に映るリゼは少しずつ違って見えた。ある鏡では華やかなドレスをまとった自分、またある鏡では自然な笑顔が魅力的な自分。
「これが私……?」
すると、部屋の中央に大きな鏡が現れた。それは「真実の鏡」と呼ばれ、試練の最初の関門だった。
鏡が静かに語りかける。
「リゼよ。お前が目指す美しさの形を示せ。」
リゼは一瞬戸惑った。彼女の心には、曖昧な願望しかなかった。「美しくなりたい」という漠然とした夢。それだけでは、鏡は彼女に道を示してくれないのだ。
「私の美しさの形……それって、どんなものなの?」
鏡は答えない。ただ、リゼが自分で見つけることを待っているようだった。
彼女は目を閉じて、自分に問いかけた。
「どんな私になりたい?どうすれば胸を張れる?」
しばらくして、リゼの心の中に一つのイメージが浮かんだ。それは、どんな服を着ていても自信を持って笑顔でいられる自分だった。ただ華やかで目立つだけではない、内側から輝くような美しさ。
彼女がそのイメージを口にすると、真実の鏡は柔らかく光り始めた。
「よくぞ見つけた。お前の夢の形は、確かに輝きを持っている。」
鏡の光がリゼを包み込み、次の試練の場所への道が開かれるのだった。
次の間に進むと、そこには再びいくつもの鏡が並んでいた。しかし、今回はリゼの理想と現実が交互に映し出される鏡だった。
一つの鏡には、理想のリゼが映っている。
背筋が伸び、目には自信が宿り、その笑顔は見る者を惹きつけるような輝きを放っていた。彼女が夢に描いた「こうありたい自分」そのものだ。
しかし、その隣の鏡には現実のリゼが映っていた。少し頼りなげな表情、自分に自信が持てない姿……今の自分そのものだった。
リゼは立ち止まり、鏡をじっと見つめた。
「理想の私と現実の私……この違いは何だろう?」
鏡が語りかけるように、彼女の心の中に声が響いた。
「理想と現実の間にあるのは、行動と信念だ。自分を信じ、進むことを恐れなければ、この差は埋められる。」
リゼは拳を握りしめた。
「私ならできる。この一歩を踏み出せば、理想の私に近づけるはず。」
鏡はその言葉に応えるように柔らかく輝き、次の試練への扉が開かれた。
リゼは、自分の夢の形を見つけることで一歩前進した。次の試練では、彼女の情熱が試されることになる――果たして彼女はその情熱を持って進むことができるのか?
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