第2話 魔物出現!
翌朝、セレスと一緒に森の奥へ散歩に出かけた俺は、まだまだ見慣れない光景にワクワクしていた。
鳥のさえずりや木漏れ日の美しさも、どこか幻想的に見える。
歩きながら、ふとセレスが俺の横顔を見て微笑んだ。
「シュウ、今日は魔物が出るかもしれないわ。もし出ても、あなたなら余裕で対処できそうね」
「はい。なんだか、そんな気がしてるんです」
実際、この世界に来てからは自信みなぎる場面ばかり。
特に俺の【神速思考】と【完全記憶】は凄まじい効果を発揮している。
すでに村の人たちから聞いた話や、セレスから教えてもらった知識など、頭の中にしっかり整理されている感覚がある。
どうやらこの世界の魔物は、森の外れにも出没するらしいが、危険というほどでもないという。
森を進んでしばらくすると、小さな池のような場所が見えてきた。
澄んだ水がキラキラと光を反射して、まるで宝石みたいにきれいだ。
セレスが嬉しそうに手を広げる。
「ここが村で一番きれいな泉。どう? 素敵でしょ?」
「めちゃくちゃきれいですね。水も澄んでて、飲めそう」
「実際、飲んでも大丈夫よ。ここは聖なる霊気が宿っている泉だから、汚れたりしないの」
そう聞いて、俺は泉の端にしゃがみ込み、手で水をすくって口に含んでみる。
冷たくて甘い。
まるでミネラルウォーターみたいに美味い。
思わず「おお」と声が出た。
「すごい。まるで最高級の水だ」
「そうでしょう。ここは私が幼い頃から大切にしてきた場所なの。あなたを案内したかったの」
セレスはそう言って微笑む。
なんだか俺だけ特別扱いされてるようで嬉しくなる。
ふと、その時だった。
森の奥のほうから、茂みを揺らす音が聞こえた。
すると、黒い毛並みの小型の狼のような魔物が姿を現す。
鋭い目つきでこちらを見てくるけれど、俺はまったく焦らなかった。
むしろ【神速思考】が働いて、「こう動けばいい」と頭の中に勝手に最適解が浮かんでくる。
魔物は牙をむいて唸り声を上げている。
セレスが杖を構えるが、俺は手で制した。
「大丈夫です。僕がやります」
「頼もしいわ。じゃあお願いするわね」
セレスは俺を信頼してくれている様子で、すっと杖をおろした。
俺は魔物と向き合いながら少し近づく。
すると魔物は低く身構え、飛びかかろうとしてくる。
翌朝、セレスと一緒に森の奥へ散歩に出かけた俺は、まだまだ見慣れない光景にワクワクしていた。
鳥のさえずりや木漏れ日の美しさも、どこか幻想的に見える。
歩きながら、ふとセレスが俺の横顔を見て微笑んだ。
「シュウ、今日は魔物が出るかもしれないわ。もし出ても、あなたなら余裕で対処できそうね」
「はい。なんだか、そんな気がしてるんです」
実際、この世界に来てからは自信みなぎる場面ばかり。
特に俺の【神速思考】と【完全記憶】は凄まじい効果を発揮している。
すでに村の人たちから聞いた話や、セレスから教えてもらった知識など、頭の中にしっかり整理されている感覚がある。
どうやらこの世界の魔物は、森の外れにも出没するらしいが、危険というほどでもないという。
森を進んでしばらくすると、小さな池のような場所が見えてきた。
澄んだ水がキラキラと光を反射して、まるで宝石みたいにきれいだ。
セレスが嬉しそうに手を広げる。
だけど俺の頭の中では、魔物が動き出すタイミングや軌道が手に取るように見えていた。
だからこそ、魔物が跳んだ瞬間を狙って横へステップし、素早く背後をとる。
そして手に持っていた木の枝でトントンと魔物の背中を軽く叩いた。
すると魔物はびっくりしたように飛びのき、そのままこちらを見て威嚇する。
俺は追い打ちをかけず、穏やかに笑いかけた。
「この子、そこまで凶暴じゃないみたいです。もしかしたら縄張りを荒らされたと勘違いしてるだけかも」
【神速思考】でこいつの動きや感情をなんとなく推測すると、確かに本気で襲ってくる様子じゃない。
むしろ追い払おうとしているだけのように思える。
だから俺はゆっくり近づき、優しく手を差し出した。
魔物は少し警戒しているが、俺が攻撃の意志を見せないので戸惑っている感じだ。
「ほら、怖くないよ」
そう話しかけると、魔物はうなるのをやめ、そろそろと俺の手先を鼻でくんくんと嗅ぎ始めた。
そして完全に警戒を解いたのか、ゴロンと腹を見せてころがる。
拍子抜けするぐらいあっさりと懐いてくれた。
「すごいわね。まるで調教師みたい」
「はは、ありがとう。どうやらこの子は人に慣れてるのかもしれません」
魔物というよりは、少し野生の残る犬のような感じだろうか。
俺はその小さな狼っぽい魔物の背中をそっと撫でてみる。
すると気持ちよさそうに尻尾を振っている。
「名前、どうしようかな。せっかくだし、ちょっとだけ一緒に行動してみたいんだけど」
セレスは微笑んで、「いいわよ」と言う。
こうして俺は、初めてこの世界で動物系の魔物を仲間に迎えることになった。
名前は「ルナ」にしよう。
黒い毛並みが夜空のようだったから、そう思いついた。
ルナは嬉しそうに一声鳴いて、俺の足元にまとわりついてくる。
可愛い。
「ルナがシュウになついてるわね。これなら村に連れて行っても平気だと思う」
「ですよね。なんか一瞬で仲良くなれちゃった」
こうして俺とセレスとルナの三人で、森の散策を楽しむことにした。
しばらく歩き回ってもルナはおとなしくついてきて、時々鼻をひくひくさせては俺を見上げる。
そんな姿が微笑ましくて、俺も気分がいい。
帰り際、森の出口あたりで今度は少し大きめの魔物が現れた。
黄色い目をした熊のような見た目で、どうやら先ほどのルナよりは攻撃的な雰囲気がある。
それでも俺は落ち着いて、【神速思考】で状況を把握する。
セレスが杖を構えながら俺を見る.
「これは少し手ごわいかもしれないから、一緒に倒しましょう」
「はい。僕は直接攻撃しますので、カバーをお願いします」
「わかったわ」
魔物が低い唸り声を上げたかと思うと、その巨体で突進してくる。
でも俺の頭の中では、その突進のタイミングや振動までもがはっきり感じられた。
だから迷わず左にステップし、横腹に軽くタックルを加えると、魔物はそのままバランスを崩して転がりそうになった。
そこにセレスの放った魔法弾がヒットして、あっという間に魔物は気絶。
これで勝負ありだ。
「二人ともすごい連携だったわね」
「ありがとう、セレス。なんだか、めちゃくちゃ楽しい」
まったく焦りはなかった。
こうして俺は魔物退治も楽々こなせることを知り、ますます自信が湧いてきた。
ルナも「ワン」と可愛い声を上げて俺を見ている。
自分でも信じられないぐらい、すべてがうまくいっている。
そのまま村に戻ると、村長さんや村の女性たちが「シュウが新しい魔物を連れて帰ってきたぞ」と大騒ぎ。
でも俺が危険ではないことを説明すると、みんな面白そうにルナを眺めている。
「かわいいわね、警戒心がない」
「シュウにずっとくっついてるじゃない」
そんな声を聞いて、俺は嬉しくて仕方がない。
さらにセレスが「そういえば魔物のくせに、すごく人懐こいのよ」と笑顔で言うと、女性たちは「シュウの人柄かもね」と一斉に頷いた。
俺はこの評価に照れながらも、内心すごく満足感を覚えている。
「ねえ、シュウ。もしよかったら、これから冒険者ギルドへ登録してきたらどう? せっかく力があるんだもの。村だけじゃなくて、もっと広い世界で活躍するのもいいかもしれないよ」
そう提案してくれたのは、ギルドの情報に詳しいという女性のシエナ。
明るい茶髪が印象的で、セレスとはまた違った可憐さがある。
彼女はこの村の外からやってきた人らしいが、今は村で手伝いをして暮らしているらしい。
「なるほど。ギルドに登録すれば、いろんな依頼を受けられるんですか?」
「ええ。報酬ももらえるし、冒険の幅が広がるわ。シュウならすぐに人気者になりそう」
「そっか。じゃあ、行ってみようかな」
こんなにスムーズに話が進んでいいのかなと思うほど、俺の周りは好意的な人ばかり。
それなら遠慮せず飛び込んでみようと思った。
セレスも「私も一緒に行くわ」と言ってくれたし、ルナも連れていけば盛り上がりそうだ。
シエナは俺たちに町の場所を教えてくれて、ギルドの入り口や受付の手順まで丁寧にアドバイスしてくれた。
どうやら徒歩で一日かからない距離に、そこそこ大きな町があるらしい。
その町にはたくさんの冒険者がいて、いろんな依頼をこなしているそうだ。
「よし、じゃあ明日、セレスと一緒に行ってくるよ」
俺は決心して、シエナにそう伝える。
すると彼女は拍手して喜んでくれた.
「きっとシュウなら有名になれるよ。実は、町にいる冒険者って荒くれ者も多いの。でもあなたなら大丈夫。だってすごいスキルを持ってるんでしょ?」
「はは、ありがとう。なんだかやる気が出てきました」
この世界に来て、まだ二日しかたっていないのに、これだけ歓迎されている。
自信なかったはずの俺が、今は普通に堂々と返事している。
不思議だけど、最高に気分がいい。
俺は改めて【神速思考】の力を確信した。
情報を一瞬で整理できるのは、本当に便利だ。
会話だけじゃなくて、相手がどう思っているかも、ある程度推測できる。
おかげで人付き合いがとてもスムーズだし、魔物との戦いも楽勝だ。
夜になってからは、村の女性たちとおしゃべりを楽しみながら夕食をいただいた。
俺が「明日は町に出発するね」と言うと、みんな「頑張ってね」「気をつけて行ってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれる。
こんなに優しい人たちに囲まれたら、もう不安なんてなにもない。
就寝前にセレスが俺の家を訪ねてきて、軽く打ち合わせをする。
「明日、私があなたを町まで連れて行くわ。道中はルナもいるし、安全に移動できると思う。それにしても、あなたは不思議ね。普通はもっと緊張しそうなのに、全然そんな様子がない」
「本当にそうですよね。俺もびっくりしてるんです。でも、この世界が合ってるのかな。楽しくて仕方ないんです」
「それは何より。じゃあ明日は早めに支度して、朝食を済ませてから出発しましょう。あなたの冒険者デビュー、私も楽しみだわ」
そう言ってセレスは上品に微笑む。
俺は心から期待を抱きながら、「お願いします」と元気よく返事した。
布団に入ってからも、「明日からどんな依頼をこなせるかな」「どんな人に会うんだろう」と考えるだけでワクワクが止まらない。
もちろんネガティブな思考はまったくわいてこない。
ADHDの特性や自己肯定感の低さなんて、この世界ではもう遠い昔の話のように感じていた。
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