第56話 貴様らに明日を生きる資格はない!
USの離島にある、リゾート地。
明るい線で描かれたヘリポートや、オシャレな港湾施設。
さらには、小型機なら離着陸できそうな滑走路まで。
南国を思わせる建物が並び、金持ちの象徴である、サイドでゆっくり過ごせるサマーベッド、同じく濡れてもいいテーブルと椅子が目立つプールも。
いかにも金がかかっている外観では、スーツを着ている、サングラスをかけた男たちが規則正しく歩き、もしくは、壁を背にしたままの立哨。
誰もが、片耳に大型のイヤホンをつけている。
1人は、その一部を触った。
英語で、手短に報告する。
ザッ
「キャット1より本部へ! 定時連絡、異常なし」
『……本部、了解! キャット1は、監視を続けろ! 以上』
スーツ姿の男たちは、ズボンの前から出ている拳銃のグリップだけではなく、肩がけのスリングで背中に回している、小型のPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)を持っている。
警備する彼らは、気配を殺して、インテリアの一部に成りきる。
その一方で、利用者と思われる人々が、ラフな格好で行き来。
日曜にゴロゴロするような雰囲気でも、金持ってんぞ、俺は偉いんだぞオーラが凄いが……。
それとは別に、執事やメイドも、注文されたメニューが入ったワゴンを押していくか、グラスや軽食をのせたお盆を運ぶ。
――別荘の私室
完全な防音が施された、密室。
アンティークな調度品に囲まれた場所では、やはり偉そうな中年男が数人。
1人は、高級将校のようだ。
「そういえば、あの件は残念だったな? ほら、襲撃されたアイドル部隊の!」
言われた中年男は、私服の軍人のほうを向く。
「ああ! 上手くいけば、我々の専用にできたのに……」
最後の1人は、比較的若い。
成功したビジネスマンの雰囲気で、笑った。
「ハハハ! 先生がそんなことを言ったら、いけませんよ?」
しかし、言われた議員は怒らない。
「よく言う! お前が言い出した話だろ?」
「本当は、襲撃してきた武装勢力を撃退して、最前線の基地で慰問をしていたアイドル部隊の女たちをここへ呼びつけられるはずでしたが……」
若い男は、悔むように言った。
けれど、それは予定通りにいかず、武装勢力による一時占拠で狙っていたアイドル部隊が蹂躙されたことが悔しいだけ。
首肯した軍人が、それぞれに述べる。
「エルデル姉妹は、是非ともに欲しかったが――」
「ちなみに、どちらを?」
議員のツッコミで、軍人は肩をすくめる。
「姉のほうだ! 君も狙っていたのか?」
「私は、妹のほう……」
計画が上手くいっても仲良くできたと知り、どちらも吹き出す。
「ところで、君は?」
「気になる……」
若い経営者は、慌てて言う。
「いえいえ! 私は、あなた方と争う気はございません! 残りの誰かで、十分……」
卑屈なまでに媚びる男に、問いかけた2人がさらに笑う。
「「「ハハハハ!」」」
議員が、息を吐いた。
「まあ、何だ……。ここまで話が大きくなったら、しばらくは無理だ!」
軍人も、頷く。
「そうだな……。味気ない商売女には、飽き飽きしているが。アイドル部隊の生き残りはFBIやCIAが見張っているだろう」
「あの! だ、大丈夫ですよね?」
不安そうな若い男に、軍人は手を振る。
「心配いらん! 悪いのは、襲撃した武装ゲリラだか、反政府勢力! とはいえ、私たちもマークされているだろう。悪目立ちする真似は、慎みたまえ」
「は、はい!」
その時に、ビーッと、呼び出し音。
若い男が立ち上がり、壁の端末に指を伸ばした。
声だけで、やり取り。
「何だ?」
『……島の沿岸部に、侵入者らしき人影があります! ご指示を!』
うろたえた男に対して、近づいた軍人が代わる。
「危険度は?」
『……パワードスーツにも使われるスマートキャノンを抱えています。戦闘服で顔に迷彩をしているため、無警告で処理するべきと具申いたします』
「判断は、私が行う! 事実だけ報告するように! とはいえ、君の言う通りだ……。待て、数と装備は?」
『失礼いたしました! 沿岸に上陸したのは、1人。確認できたのはスマートキャノンだけで、ドローンなどの無人兵器も見られません』
「最優先で、非戦闘員を島外へ退避させろ! 発砲を許可するが、まだ殺すな! 侵入者に無警告で撃って構わん!」
『ハッ! ただちに実行します! 以上』
ブツッと、内線が切れた。
振り返った軍人は、ニヤリとする。
「諸君! このイベントを最大限に楽しまないか?」
3人の男たちは、軍人に案内されて、混乱する別荘エリアを通り抜けた場所にある軍事スペースへ。
冷たい輝きに包まれた格納庫には――
「パワードスーツ!? それも、軍用の……」
若い男の驚いた声に、軍人が笑った。
「私を誰だと思っている? 趣味でUS軍から横流しをさせたが、こんな形で使うとはな! 良かったら、君たちも使えばいい」
言うや否や、ラフな私服のままで開いている部分へ体を滑り込ませる。
バシュッと閉じたことで、完全密閉。
『ホビー用にしているから、素人でも動かせるぞ? 武器は、そこに重機関銃、ロケットランチャー、スマートキャノンが訓練弾である』
内部の動きに連動して、座ったままのパワードスーツが指差した先には、生身では撃てそうもないサイズの重火器が並んでいた。
残り2人もパワードスーツに乗り込み、立ち上がった。
好みの重火器で武装した、3機。
頭部のスリットを光らせた、軍人が乗っている機体が告げる。
『では、諸君……。ハンティングの時間だ』
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