第48話 「現代医学が気づかないわけがないんだよ、そもそも」
『以前に報道しました、大学教授を含めた10名を超える失踪者が最後に訪れたであろう村が、消滅した模様! 住人が消えたことで地元警察が立ち入っていますが――』
『Retus Pharmaceuticals' storage facility was targeted in an attack, leading to the loss of some materials and sensitive data, according to reports.』
終わった……。
振り返ってみれば、単純な事件だったが。
「まあ、知らないと無理ゲーだな?」
独白した俺は、観察特区にある魔法学校の敷地へ足を踏み入れた。
通りがかった生徒が、ギョッとした表情で足早に立ち去るか、周りの友人と固まる。
(すっかり、恐れられた……)
生徒会室で、警察の女捜査員にいきなり発砲した男子だ。
面構えが違う。
(おまけに、特区の外でJKビジネスの幹部だったと?)
むしろ解決したほうだが、他のやつらは面白ければいい。
みんなが言ってるから。
俺、私に、責任はない……。
(アホらし! 衆愚政治が、唯一のベターか! 大事なのは後援者だけ)
政治家の気分を味わいつつ、顔に縦線が入った
梨理香は、俺を見上げたまま、ポツリと呟く。
「ニュースを見ました……。私の中で結論は出ましたが、みなさんには説明が必要でしょう」
私も、詳しい話を聞きたいです。
付け加えた梨理香に対して、佳乃が呟く。
「春を売るクラブに続き、世界的な製薬会社への襲撃ぃ……」
警官への銃撃もあるぞ? 忘れるな!
心の中で突っ込みつつ、生徒会室を目指す。
やがて、海外ドラマか、ベンチャー企業がありそうな生徒会室へ。
すでに、全員が集まっていた。
生徒会長の
「よく来てくれた……。とりあえず、座ってくれ」
思っていたよりも、穏やかなスタートだ。
俺が銃撃した警官である
「今日は、銃を持っているの?」
「……次にやるなら、発動したことも分からない魔術です」
口元がピクピクしている真夕は、指摘する。
「あなたを収容した警察署が、いきなり崩壊したんだけど? 物理的に」
「コンクリの経年劣化でしょう! 拘置所に入れた市民を製薬会社の違法実験に売り飛ばす警察署があるはずない。だったら、俺がそんな報復をする必要もない。……違いますか?」
黙り込んだ真夕に、付け加える。
「先に言っておきますが、俺を再起不能か、殺せば、妹の
「疑わしい殺傷であれば、私も許しませんよ?」
すかさず、梨理香が告げる。
「私も、
「ハイハイ! 黙れば、いいんでしょ!?」
ため息をついた、真夕。
その隣に座っている
「ここでの銃撃だけど、警視庁は書類送検をせず、検察もだんまり!」
「……世界的な製薬会社を殲滅できるやつ、どこも敵に回したくないわよ」
真夕が、不貞腐れた声でかぶせた。
香穂は、話し続ける。
「結論から言うと、私たちは不干渉! 銃撃事件がなかったことにされたの! 君を売ったことがバレれば、うちもタダでは済まないし」
「警察の上層部は保身第一で、自分の命がヤバいとなれば、こんなものよ! 君1人でやったとは思えず、背後関係を怖がっている感じ……。どうせ特区にいるなら、わざわざ刺激する必要はないってこと」
真夕は、俺をジッと見ている。
「もみ消してくれた礼に、1つだけ教えます! レトゥス製薬会社の日本支社に、超常的な連中が収容されていました。俺が暴れたことで、そいつらを解放して、結果的に支社が滅びた流れ……。USにある本社がやられたのも、その仕業だと思います」
表情を変えた真夕が、質問する。
「大丈夫なの?」
「たぶん……。俺と戦う気がないから、USへ行ったんじゃないですか? あとは、そいつらに聞いてください」
ここで、生徒会長の良高が言う。
「水鏡くん! 警察が許しても、うちの判断がある……。君の話を聞いたあとに決めるつもりだ! バラバラに返事をすれば、かえって混乱する。結論を述べた後で、時系列に沿って説明したまえ」
「分かりました……」
息を吐いた後で、用意されたコーヒーを飲む。
「結論から述べると、天城の依頼は完了しました! レトゥス製薬会社の日本支社に何があったのか? それは、人を化け物に変える薬品の研究でした」
俺に注目している全員の雰囲気が、変わった。
「さっき話した、超常的な存在……。天城の未来予知が合っているとしても、前提が間違っていた。月面に建設される『アルカディア』で開発されたんじゃなく、そもそも地球上にあっただけ! 因果関係は、逆だった」
「そんな!?」
思わず立ち上がった梨理香に、視線が集まる。
「秘密が漏れずに隔離できる場所で研究したかったから、月面へ運んだ……。未来のレトゥス製薬会社がどうなったか知らんが、正直に言っても信用されんだろうし、戦犯として会社や告発したやつの人生が終わるだけ」
「ですが!」
「現代医学を舐めるな! お前は『アルカディアからの帰還者に対し、徹底した防疫、隔離をした』と言ったよな? 未知のウイルスでも、既存とのパターン不一致か、怪しい挙動をしている細菌なりがあると判明しなければ、おかしいんだよ! それで、『彼らは安全です』と言うわけないだろ?」
盲点だったらしく、梨理香はポカンと口を開けた。
なまじ頭がいいだけに、こういう話には弱いらしい。
「あああぁ……」
脱力した流れで自分の席に座りつつ、両手で頭を抱えた梨理香。
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