第7話
車で数分、卯月優香は学校から少し離れた商店街に来ていた。
如月聖の運転は終わっており、至る所をぶつけていたため遠出はできないだろうと察する。
車を商店街の入口にとめ、中に入る。
「前ここに食料を取りに来た時に災害が何体かいたのよね。ここなら土地勘もあるし一本道だから遠距離で戦うにはもってこいよ。とりあえずそいつを狩りましょ」
挟まれたら終わりじゃんと思いつつ、さすがに考えがあるだろうと納得する。
実践となると少し緊張した。
それに破片持ちの災害だったらと考えると銃を握る手も震える。
人だったものだとしても、命を手にかけることはまだしたことが無いから。
しかし、どれだけ探索しても災害はいなかった。
違和感を覚える如月聖。
辺りの店や外壁などを見ても災害のいた痕跡は無い。
そして、1つの足跡を見つけ違和感から核心へと変わる。
「こんなに災害が居ないなんてことありえない…それにこの足跡は…まさか…変異種…?…いや、でも…」
変異種という言葉を聞いたことがない卯月優香は状況が理解できなかった。
破片を持つ災害を変異種と呼んでいるかと思ったが、それなら勝てる相手だと思った。
「聖、その変異種って…?」
如月聖がそれに答えようとした時、それを見つける。
身体は2mないくらいの大きさであり、普通の災害と違って二足歩行。
人の構造と似ており、姿形は災害よりも人に限りなく近かった。
そして、卯月優香から見たらそれは災害よりも強く見えなかった。
(あれが…変異種…普通の災害より小さいけど…)
「優香、逃げるわよ。早く、少しでも遠くに」
しかし、それは叶わぬ願いであった。
変異種と呼ばれたそれは背後にいた。
音もせず、不気味な笑顔を向けて。
気づいた頃には弓が壊され、銃を奪われる。
それは2人に何かを発する。
乾いたその声が2人を見る。
まるで玩具を見るように。
卯月優香は足が動かなかった。
しかし、如月聖は冷静な判断をとる。
卯月優香を蹴り飛ばし、煙幕弾を放つ。
それの視界を奪えるかはわからなかったが、逃げるためにはそれしか無かった。
蹴り飛ばされた卯月優香は煙幕の中、頭に入れていた地図を頼りに外に向かう。
如月聖を助けるには自分では役不足、睦月千奈と弥生飛鳥の2人が必要だと理解していたから。
商店街の入口まで来た卯月優香、そこで発煙筒を投げる。
災害に居場所を言うようなものだが、あの化け物がいる場所に近づいて来ないと判断して。
「2人が来るまで待つしかない…わたしにできること…何か…」
その時、思い出す。
車に積んだそれの存在を。
「これなら…これを当てられれば…」
車の荷台には大きなスナイパーライフルが置いてあった。
化け物はわざと如月聖が避けれる程度の攻撃しかしない。
どれもかするだけで致命傷になりうる攻撃であり、一瞬も気を抜けない。
(優香は無事よね…良かった。あの子だけでも逃げられて)
背負っていた矢を捨て、回避に専念する。
ここで時間を稼ぐことが卯月優香を逃がすことに繋がると信じて。
商店街の構造、各店舗ごとに何が置いているかを覚えている如月聖はその記憶を生かし、何とか化け物の攻撃を避けている。
化け物は遊んでいるのかそれを楽しんでいるようにも見えた。
殴りながら何かを発するそれ。
何かを話しているように、何かを伝えるように。
しかし、そんなことを気にする余裕はなかった。
如月聖の目的は2つ。
1つ、卯月優香の逃げる時間を稼ぐこと。
2つ、できることなら商店街のもう一方の出口まで逃げること。
それらを考えて動いていた。
化け物は確実に遊んでいる。
だからこそ、可能性はある、そう思っていた。
化け物の攻撃が足にあたる。
鋭利な爪のようなそれは如月聖の皮膚を、血肉を、骨を貫いた。
「…ア゙ッ!」
声にならない悲鳴が出る。
如月聖にとって今までに感じたことの無い痛み。
希望を打ち消すほど強く、激しい痛み。
動けなくなった如月聖を化け物は不思議そうに眺める。
なぜ逃げないのか、なぜ動かなくなったのか、それらがわからない様であった。
壊れた玩具を見るようにそれは如月聖の様子を伺っていた。
如月聖は自分の死を悟るはずだった。
それを見なければ。
「あんたは確かに化け物ね…多分、あれと同じくらい。でも、私たちも強くなってるの。鬼ごっこはおしまいよ」
如月聖の言葉を理解出来ていない様子のそれは玩具に飽きた子供のように如月聖を殴ろうとした。
そして、それは2人の人影にとめられる。
「聖さん!大丈夫でしたか!?」
睦月千奈と弥生飛鳥の援軍が間に合う。
化け物攻撃を受け止めることは出来なかったが、軌道を逸らすことはできた。
化け物はひるむことなく攻撃をしようとする。
しかし、大きな音とともに攻撃の軌道が逸れる。
「優香ちゃん、ちゃんと当ててくれたみたいだね」
如月聖を支えながら出口走る弥生飛鳥は言う。
出口の方にはスナイパーのようなものを構えた卯月優香がいた。
4人はそのまま商店街を脱出する。
足を撃ち抜かれた化け物は既に再生しており、追ってこようとすれば間に合う距離でもあった。
しかし、それは追ってこなかった。
むしろ手を振り、4人を見送った。
如月聖は微かに「またね」と聞こえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます