第3話 シンデレラ

  むかしむかしあるところに、シンデレラがいました。シンデレラは老害の継母と醜い姉妹の奴隷でした。

 家事育児やって、夜はパプで美声をひびかせ、ブサイク姉妹のお見合い相手を探さすのに奔走していました。


 アホの王子がいました。

 顔、体格、性格、頭脳。

 すべて兼ね備えているのに、王子はギターとベースを方にかけて、前のだいじなところと、尻を隠しながら同時に弾く。


 ギターのバンドを左肩にかけます、ギターでまえのだいじなところを隠します。

 ベースをバンドを右肩にかけます、ベースを尻で隠します。

 この2つの重さに耐えられるほど、王子の体幹はボルトのごとく。

 そしてギター弾いて、ベース弾いてを繰り返していまし。


 アホです。


 彫像のような一ミリの狂いなく整った顔、広い肩幅からの全身の筋肉美、前のだいじなところはご立派様。

 見た目は最高の男前なのに、アタマの中はアホチャレンジャーの小学五年生のままです。

 臣下は「あれをなんとかしないと、殺す」と言う労基も絶句するパワハラで、臣下はあれはどうしようもない、殺される、と覚悟して走馬灯を見ました。

 走馬灯に、大ヒントがありました。

 初恋のあの子が、僕を大人にしたよね。

 そうだ、王子は初恋をしていない。

 ということで、アホの好みがわからないので、国中の女性に招待客を配りました、


 もちろん、老害とブサイク姉妹、シンデレラにも届きました。


 アホくさ、とシンデレラは招待状を破りました。

 老害とブサイク姉妹が出かけたあと、ネットフリックスで韓ドラの続き見たかったからです。パプでいろんは男を見てきましたが、王子と呼びたくなるいいなんて、見たことがない。なりふりかまわず、招待状出してるのは何か裏がある。

 シンデレラは賢い。

 老害とブサイクをなんとか見れるようには仕上げてやり

「気ぃつけて行けよ」

 と見送ってから、寝転がって韓ドラを見始めした。


 ピンポーン。

 ウーバーイーツがとどきました。


「どうも、おこんばんちわ。かぼちやの馬車とトレンドのドレス、メイクアップセット、ティアラ、ガラスの靴をお持ちしました」


「ウーバーイーツは、食べ物以外もウーバーするんですね。へえ、あれがカボチャの馬車。すっっごいですねーあれできはったんですか!? え、これがトレンドのドレスね、はいはい、ちょっと合わさせてもらいますね。うん、いい色やしいい生地使ってますねぇ、いい手触り。で、ガラスの靴。わたしねぇ、靴はうるさいの。足が小さくてね、なかなかジャストフィットの靴ないの。って、ありゃま!ぴったりやわ。助かりました、舞踏会に着ていく服もないし、遠いしどうしよかなと思ってたら」


「…………………………………………

 って、なるかー!!!!!


 うちが頼んだのは、

 牛丼、カツ丼、親子丼や!」


「えー、舞踏会行きましょう。なんか食べ放題、飲み放題、やってますよ。無料で飲み放題、食べ放題ですよ。タッパーにも詰めて帰れますよ」


「ほんまかぁ?」


「まぁ、行くだけ行って、嫌やったら帰ってきたら?」


 シンデレラはそう言われ、あしたの晩御飯作らなくていいなら、と、しこたまタッパーをカバンに詰めて着替えるとカボチャの馬車で舞踏会に行きました。

 舞踏会で、シンデレラは光り輝きました。誰よりも得をして帰る。食って飲んでしこたまタッパーに詰めて持って帰る。その決意でギラギラしていたからです。


 王子の目に止まりました。

 王子はギラギラしたものが、大好きだったからです。


 シンデレラは王子と踊りました。


 王子の体幹パワーに、惹き込まれたのです。王子の見た目など、見ている暇もない。高速スピン、リフト、ジャンプ。

 ダンスはいつの間にか、フィギュアスケートになっていました。


 シンデレラもまた頭に積み重なった皿、右手にゴミ袋、左手に洗濯物を持って階段を降りられるスーパー体感の持ち主でした。

 二人の演技は拍手喝采、もういい、あの二人が幸せにするなら王子を諦める。

 王子の見た目だけに惚れた女は、そう涙しました。


「あなたのお名前は?」


  王子に話しかけられ、ハッと我に帰ったシンデレラはタッパーに残り物を詰めて走って帰ろうとしました。その時、ガラスの靴が脱げてしまいましたが、無料で貰ったものなのでいらぬと放置しました。

 どっと疲れてシンデレラぐっすり眠りました。

 翌朝、老害とブサイクに叩き起こされました。


「はいはい、起きるから!うるさい何よ!?」


 白馬に乗った王子様が、ガラスの靴を手にやってきたのです。

 シンデレラは、驚きました。

 太陽の下が、王子の壮大な美しさを照らしていて、見入ってしまいました。


「どうして、私がここにいるとわかったのですか?」


「あなたが残していった、この靴の匂い嗅いできました」


 王子はガラスの靴に鼻をつっこみ、クンクンかぎました。


「あなたが歩いたあとを、鼻でたどってきたら、ここにたどりつきました。あなたに言いたいことがあります」


「はい???」


「臭いでわかりました。あはたは、水虫です。水虫の治療はお早めに」


「だ!か!ら! この世は白馬の王子様が迎えにくるなんてことはねーーーんだよ!

 そいつはストーカーの変態でデリカシーの欠片もないクソ男だ!

 美形だからって調子のりやがって!

 私も美形だからな!私が王子の身の振る舞いを教えてあげるわよ! じゃあな、老害とブス姉妹!てめぇのことはてめぇでやれ!」


 こうして、シンデレラは家を出て、宝塚の男役トップ「世界の王子」になりました。

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