幕間 白羽の少女

「とり。明日が決戦の日だ」

「くるる」

「心配か?」

「くる」

返事をするかのように白羽の鳩がないた。

「でも、大丈夫だ。きっと帰ってこれる! 正しいのは俺たちだ。いつの時代だって正しい者が勝ってきた。それなら、正しい俺たちが勝つんだ」

勇者はにっこりとほほ笑んで心配そうな鳩の頭を優しく撫でた。

「くるる」

「わかっている。魔王を倒したところで、亡くなった者たちが帰ってくるわけじゃないさ。でも、魔王を倒せばみんなもういつ殺されるかわからない恐怖に怯えなくて済むんだ」

「くる」

頑張ってね、というように鳩は勇者の頭にのり、頭をぽすぽすとたたいた。

「ああ、がんばる。だから、見ていてくれ」

「くるる」

わかった、と言うように鳩は元気にないた。

勇者は鳩を寝床におくと、おやすみ、と言ってその部屋から去っていった。

「ゆうしゃ…。ごめんね」

鳩は人間の姿になるとそう呟いた。

その少女の瞳から、涙が一粒こぼれたのには誰も気が付かなかった。

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