1ー4 集合

「「さよならー」」

下校のチャイムがなり、僕は教室から出ていく人たちの背中を見送る。

全員が出ていったのを確認したあと、窓の方に向かった。

(もう待っててくれてるのかな…?)

窓の外に目をやる。校門を通り帰っていく人達をみつめる。

「…」

たくさんの笑い声と、話し声が僕がここに独りだと言うことを強調させているように思えた。

(まあ…いつもの事だし)

リュックを背負い、教室を出る。鍵を閉めて職員室まで届けに行ったあと、靴箱へ向かった。

門にむかうと、もう人はいない。時計が5の数字をさしていて、空は少し深い青色。

(雨御さん…いるかな…?)

キョロキョロと周りを見渡す。

も、人も車もいない。

(今考えると…なんか危ない気がしてきた…)

あの人、不思議な人だったし…と、心の中で今日あった雨御さんの姿を思い出す。

(あの服って書生服?ていうのかなぁ…不思議…)

霊がみえる、とも言っていたし、そういう関係のお仕事をしている人なのかな。

(…待ってよう…)

少し肌寒い春の夕暮れ、僕は来るのを待っていた。


しばらくすると、門の前にすごい大きい高級な車が止まった。車のことは分からないけど、白色のゴツイやつ。

(…もしかして…)

ドキドキしながらその車を見つめていると、後部座席のドアがあいた。

ドアの隙間からひょっこりと顔がでる。雨御さんの中性的な顔だった。

「待たせてごめんね、零くん」

手招きをされ、まるでカボチャの馬車に乗るみたいに手を差し出される。

「い、いえ…!」

(よかった…嘘じゃなかった…)

待っていてよかった、と思いその手を取ろうとした時だった。

ふとしたことが、頭をよぎった。

キョロキョロと、もう一度人がいないか確認する。

先生や同級生にもし見られたら…また、噂の内容が増えるかもしれない。

普通の高校生に…遠ざかるかもしれない。

車に乗るのを躊躇していると、雨御さんがニコリと微笑んだ。まるで、僕の心の中を読んだみたいに。

「大丈夫だよ。私たち、全然怪しくないから」

その微笑みが、さらに胡散臭く感じた瞬間だった。


「あ、あの…今どこに向かってるんですか…?」

車に乗ったことを今更後悔している、なんて口が裂けても言えない。

流れていく窓の外の景色は、全く見覚えがない。不安が積もり積もっていって、泣きそうだ。

この車は6人乗りだそうで、雨御さん以外の知らない人…あの日僕を取り囲んでいた人達が乗っていた。

「大丈夫、安心してね。変な場所じゃないから」

隣に座り、またもやニコリと微笑む雨御さんは、本日何回目かのその言葉を発した。

「は、ひゃい…」

(いざとなったら逃げよう…)

「にしても、零くんは…どうしてそんなに周りに霊がいるんだろうね」

すると、急に真剣な表情になる雨御さん。怖いこと言わないでよ。

「そ、そんなについてるんですか、僕…」

車に乗った時にも言われた。霊がいっぱいだね、と。

(僕はやっぱり…普通じゃないんだ…)

「結構ついてるんだよね。みんな、弱い霊たちだけど」

僕は後ろを見たり横を見たり下を見たりする。けど、霊なんてものはみえない。

もしかしたら、自分についている霊は自分では見られないのかもしれない。

「今日の朝、祓ったつもりだったんだけど…何でだろうね」

パッパッ、と今朝のように僕の肩ら辺を払う雨御さんに、少し申し訳なくなった。

「す、すみません…。昔から、なんか…そういうのがあって」

今日の白い空間…霊の心の中?にいたりとかも。

(なんでなんだろ…)

そういって苦笑いしていると、雨御さんは首を振る。

が、何かを考えるかのように目を逸らした。

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