ブッ翔んで「日ノ本」

龍玄

第1/5話 魔の選択肢

 日ノ本はまほろばだった。それが全ての非は我、行いの非とする日ノ本民族の隙に付け込み浸食する者に侵されつつあった。その根源から話は始まる。

 日ノ本は更なる成長を目指し海外に目を向けた。見渡せば、西洋諸国に事実上支配された国ばかりだった。支配されているアジアの国を西洋の呪縛から解放し、貿易相手とするため、日ノ本は戦いの場へと向かった。

 また、独裁政治からその国の人民を解放し、貿易のし易いように国の成り立ちの正常化を目指すためにも戦いを良しとしていた。盧溝橋事件により発生した支那事変が大戦へと日ノ本を導くことになる。攻められた中酷は、西洋諸国の親玉である米酷にちっぽけな国がアジアで暴れ支配しようとしている、助けてくれと懇願した。中酷はいち早く、この世界を牛耳るのは米国だと見透かし、国の重要人物を米国に送り込み、愚かにも米国に忠実なペットであるとアピールしていた。米酷は、本音では有色人種の中酷を醜い茶色の猿と息が交わる事さへ嫌いでいた。

 しかし、常にご機嫌を取り、逆らうことなく尻尾を振り続けた結果、ペットの地位を得た。米酷は経済的な起爆剤を欲しがっていた。米酷は中酷の嘆願を暇つぶし程度に受け入れた。その裏には、経済的な起爆剤を求めていたこともあった。政府内では、他国のいざこざに手出しする必要性を中酷から搾り取る軍事費の補填として説明していた。

 当初は、小国日ノ本など直ぐに捻り潰せるはずだった。支那事変で空中戦は米軍の戦闘機だった。中酷には対戦できる軍事設備はなかった。戦況は芳しくなかった。その責任をトルーマンは取らされるきな臭さが政府内に蔓延していた。トルマン大統領は無能さを払拭する手立てを模索していた。新兵器開発に投資していた投資家たちからも成果を求められ続けていた。

 「我が国が撒けるわけにはいかない。代理戦争では予算を確保できない。我が国の戦争にしなければならない。醜い猿が、遠くで黄色い猿が粋がって暴れまくっていると言っていたな。黄色い猿か?本腰を入れ、懲らしめて儲けてやるか」

 トルマン大統領は無能を払拭するため暴挙に出た。トルマン大統領にとって、心を痛めない相手に何の躊躇いもなく、悪魔の選択肢に手を伸ばした。

 トルマンは戦争を行う大義名分を模索していた。調べてみると小国でありながら日ノ本は西洋諸国から奪い取り、統治していた。その地域は、想像を遥かに超えていた。

 「あの露西亜を負かしたのか?手応えがなければ軍事産業は儲からないからな。都合のいい対戦相手を醜い猿は貢いでくれたものだ」

 日ノ本には資源がなかった。米酷からも多額の日ノ本への資源供給を行っていた。それをいいこに何かとクレームをつけ関税を掛けたり、輸出を禁止するなど日ノ本に大きなダメージを与えていた。日ノ本は理不尽と思える米酷の対応に欲する者の弱みから、要求の多くに屈していた。

 「米酷の奴、足元を見やがって。このままでは我が国は…」

 日ノ本は米酷に追い込まれていた。意を決した日ノ本は、兵糧攻めに合い死するは恥に等しい。ならば、いくさにこの命散らして見せよう、と勝てる見込みのない戦に突入してしまう。米酷のハワイ真珠湾の攻撃に向かった。米酷は、日ノ本軍の接近に気付いていたが、既成事実が欲しかったトルマン大統領は情報を隠蔽し、重要な戦艦や戦闘機を非難させていた。日ノ本軍も米酷の動きに不信感を抱きながら、実行に移した。

 『新高山登(ニイタカヤマノボ)レ 一二〇八(ヒトフタマルハチ)』を合図に攻撃を開始した。事前に米酷には通達していた。日曜日で礼拝日。米軍は静かだった。日ノ本は基地のみを攻撃した。余りにも手ごたえもなく『トラトラトラ!』、「我奇襲に成功せり」。と任務を終えた。

 岐路に着いた日ノ本の指揮官であった山本五十六は、「嵌められたか」と今後の戦況の苦難を見つめていた。

 

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