一章
復讐宣言
ここは、古い家と田んぼの多いO市E村。泥臭い匂いと自然の爽やかな香りに包まれた、のどかな村である。
この場所にも青い光が浸透し、ゲームの世界に移り変わっていた。
倒すべき敵のモンスターは、元人間で欲深い選ばれし者のみ。
世界に青い光が包まれる直後、二人のいじめっ子にいじめられていた。
だがこのいじめっ子二人は家庭環境が最悪である。
一人は、兄と違って優秀な成績も取れず運動もできないせいか、呆れた教師の父から虐待と暴言を喰らう。世間を気にしてしまい、誰にも相談できずストレスが溜まる。その鬱憤が爆発して、父や物に八つ当たりするようになった。
もう一人は母からの過剰な愛を注がれたせいで、自分が偉いと思い込むようになったのだ。
二人はそのような過程で自己中心的になり、いつしかいじめをすることでストレスを発散。自分が優位に立つことで、彼らは気分爽快になる。
高校二年の初期の頃は全く彼らに目を向けられることもなく、友達はいないのでいつも一人だった。
たまたまトイレに入ったら他の弱々しい体の少年がいじめられていたのを目撃。確かあの黒髪の彼は、この前転校してきた都会から来た子だったな。村八分が働いている有様だ。
しかも二人は笑い声を上げて、そいつにモップを口に咥えさせていた。あれでは窒息して死んでしまう!この二人、正気じゃない!
「その子をいじめるのはやめろ!」
僕は死んでしまう少年を見たくなかったので、勇気を出して高らかに声をあげる。モップを掴んで救済した。尻餅をつく。
「お前、何するんだ?先生に言うつもりか?」
「そ、それは……」
二人はにっこり笑みを浮かべた。
いじめているのを見てしまった口封じとして、標的が変わる。自業自得だ。
やはり助けずにスルーした方が……いや、それだとこの少年が死んでいたかもしれない。それだけ酷い仕打ちだった。可哀想だ。
元々優しい性格で、誰かのために何かをしたいという気持ちが強かった。それが裏目に出てしまう。
僕は二人に陰キャだからという屁理屈で殴り蹴られを繰り返される。アニメと漫画が好きなただの高校生だが、それだけで陰キャ呼ばわりは流石に首を傾げてしまう。
「へ。金がないっていたのに、三千円あるじゃないか」
「それは漫画を買うための……!」
「そんなの知ったこっちゃねえ。サトルの金は俺のものさ。俺は世界一のイケメンだからな。お前とは違うんだ。この金をもらえて当然だ」
そんな痛いことをカッコつけて言われたあと、漫画を買うためのお金を押収された。財布とカバンを投げられる。
その後僕は取られたくなくて彼らに対抗するが、二人に蹴られてしまうばかり。起き上がれない。
僕は弱いんだ。彼らに全く対抗できない。体力と力が違いすぎる。
二人がいなくなったのを見計らい起き上がってカバンを背負う。渋々家に帰ろうとした時、一人の女の子が声をかけてきた。
黒い髪に胸が小さく、小綺麗な顔をしている。クラスで見たことはあるが、話したことはない。確かクラス委員長で、友達がたくさんいたはず。
彼女は腕を組んで、強い口調で話す。
「あんた、なんでやり返さないの?」
「え?」
「前にいじめられていたの、偶然見たことがあってさ。やり返さないと、自分が痛い目を見るわよ。逃げちゃだめよ!死んでもいいの?」
「本当はやり返したいです。でも、僕は何も出来ません。ですから……」
暗い顔で目線を下にしたら、彼女に頬を掴まれ正面を向けられる。ドアップな顔が、視線の先にあった。
「ネガティブな思考はやめなさい。あたしが話聞いてあげるわ」
「ありがとうございます……」
「同い年だし、タメ口でいいわよ」
「はぃ……あ、うん!」
心を許した彼女とそれから話をした。
声をかけた理由はただ一つ。彼女はたくさんの友達と話しているのが楽しいのに、いつも一人でいる彼が心配になったから。
心優しい彼女は、こんな僕の話し相手になってくれたのだ。明るい良い子だな。
たくさん今の気持ちをぶつけたら、スッキリする。こんな気持ちになるのは始めてだ。ずっと後ろめたいはずだったのに、前向きな気持ちへ変化していく。
「あんた、自信持ちなさいよ。怖がらずに、誰でもいいから『〇〇さん、今よろしいですか?』って声をかけて、天気の話とか好きなものの話をしてみたらどう?いつか、仲の良い友達が見つかるといいね」
「色々教えてくれてありがとう」
「はい、これ。お守り。大事に待っててね。中身は開いちゃダメよ」
「大事にするね」
オレンジ色の「御守り」と書いてある唐草模様の袋をもらう。
僕は昔から両親に指摘と貶されてばかりいたので、元気が沸いていた。彼女の言葉は、いつ聞いても胸に響くものがある。僕の教訓にしようと、心に秘めた。お守りをぎゅっと握りしめる。
だがそんな二人で帰っている姿を、いじめっ子の一人に見られてしまったのは運が悪い。パシャっとスマホでカメラに収めた。
次の日の朝。学校に来てみたら、あの女の子がいない。噂話によると、僕と彼女が歩いている姿をスマホで撮影したようだ。
強い口調で問いかける。
「彼女はどうしたんだ!」
「あー、あの子なら死んじゃったな。殺すつもりなかったんだけど、気がついたらしてたって感じかな」
スマホの写真の一つを見せてきたら、首を絞められて死んでいる彼女の姿が。周りには、蠅が飛んでいる。
なんていう悪どい奴らだ。許さない!彼女にはなんの落ち度もなく、僕の話を初めて親身に聞いてくれた人なのに。
僕は怒りに支配されたが、やり返せば痛い目をみる。やはり怖い。彼らに対抗することが。
僕は下を向いて、何もできない自分に腹が立った。
背後から蛇口で組んできたバケツの水をかけられ、黒髪のタツヤに背後から蹴られる。机に顔をぶつけて、鼻から血がでる。
金髪のナスシルトのアサヒはそんなことも気にせずに、僕の首を掴んで虫の抜け殻を食わせようとしてきた。そんなもの食べたくないので拒絶する。
「やめてよ……」
僕は涙を流しながら、目を閉じ首を横に倒す。と次の瞬間、教室が青に染まる。二人の体に、床から這い上ってきた、青くて細い電気棒が入っていく。
彼らは僕のことをゲラゲラと笑っていたが、その声がモンスターの遠吠えに変わっていった。
「何が起きているんだ?」
目を見開き、彼らがモンスターになっていく様子に震えが止まらない。怖い……。殺される!
黒髪のタツヤは巨大な翅が生えて頭から触覚が出てくる。牙も二本生えて、脚が六本背中から生えてくる。足の一つがロブスターのハサミへ変化していった。虫の形をしたモンスターになっていく。
ナルシストのアサヒは、茶色い毛がたくさん生えた巨大な熊に変身していく。鋭い爪に尻尾がナイフになっていて、後ろはクマの毛ではなくチーターの毛皮。少し奇妙な動物だ。
恐怖に震えて、足が棒のように硬くなる。こんなことが起きることがありえなくて、頭の中が真っ白だった。
「サトル……サトル……」
「誰……?」
誰かか僕の名前を呼んでいる。誰の声かはわからない。聞いた覚えがあるような、ないような……。
気がついたらタツヤのハサミで腹を真っ二つにされ、アサヒのクマの牙で体を喰われていく。血が飛び出て、教室の机と床を真っ赤に染める。
生徒の中にもモンスターに変身した人たちがいて、そいつらがモンスターにならなかった人間を次々と殺していく。これが弱肉強食ってやつか。
叫び声をあげて、逃げ惑う生徒たち。
殺された瞬間何が起きたか、理解できなかった。だが、時間が経てば死んでしまったことを理解する。
僕は死にたくなかった。ただただ生きたい。
僕は女の子の言葉を振り返る。
やり返さないと、自分が痛い目を見る。逃げちゃダメ。自信を持ちなさい……。
その言葉が胸に強く刺さる。この言葉は忘れないようにしよう。
強くなって絶対に潰してやる!復讐だ。あいつらに復讐してやるんだ!
そう強い意志を持ったまま、僕は噛み砕かれて粉々になり死んだ。お守りが黄色い光を帯びたままで。
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