春雷
大丈夫だと 誰かが私に言った
髪をなぞり 頭を撫でる 優しい手
目も鼻も口も分かるのに 顔が分からなかった
雨が降る 雨が降る
いちにちごとに 春が来る
ここにいてよと 誰かが私に言った
その声はジンチョウゲのように とても甘やかで
とろけた耳が落ちそうだったのに ぬかるみが邪魔をした
花が散る 花が散る
後悔をのこして 冬が去る
あたたかなあなたと つめたいあなた
柔らかな結晶に似た その心に触れるとき
はざまにいる私の身体に
ビリビリと稲妻が走ったこと
覚えている 覚えている
だけど 少しずつ忘れていく
いつまでも鳴りやまない 春の雷に打たれて
求めていないのに また 春が来る
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