第63話海旅行①

「忘れ物とかしてないよね?」


氷室家と田辺家と北城家のメンツは今ラギ学の校門前で荷物を抱えながら人を待っていた。


今日は東城さんのご厚意で東城家が所有している海辺の別荘に東城さん含むクラスメイトと外から麻衣さんと文字通りうちと一子とせんちゃんの家族でお邪魔することになっているのだ。


「まぁ、忘れ物があってもある程度の物なら私が予備を持っているのでご安心を。」


「忘れ物だったら...さくやちゃんのいってきますのチューかな?♡」


「「「「「「それだ!!!!!」」」」」」


「仮に俺がいってきますのチューした場合、皆は家でお留守番していることになっちゃうよ?」


「「「「「「それは嫌ー!」」」」」」


朝から元気だな皆。


「せんちゃんと百華さんは肌が白いけど日焼けとか大丈夫ですか?」


「大丈夫だよさっちゃん!対策するからね!」


「さくちゃんが日焼け止めを塗ってくれれば大丈夫よ♡」


「え?さくやが日焼け止め塗ってくれるの?」


「定番だけど必要なイベントよねぇ。」


「さく君、お願いね?」


「さくや君、ギャルママって需要あるかしら?」


「日焼け止めならたくさん持ってきているので咲夜様...お願いします。」


おっと?何故か日焼け止めを俺が塗ることが確定したぞ?まぁ昨日は相棒とエデンでしこたま特訓したから大丈夫だろ。


「そうだね。せっかくの旅行だから皆の期待に応えようかな。」


「「「「「「「♡♡!?」」」」」」」


そんな話をしていたらロケバスのような大きな車が俺達の前に止まった。


「皆さんお待たせしましたー」


村正さんが運転席から降りてこちらに来てくれた。


「恵ちゃんおはよう。運転ありがとね〜。」


「いえいえ、さあお乗りください。」


バスにのると椅子が真ん中のテーブルを囲うようなUの字型に繋がった席になっていた。


あーこういうパターンか。


こういう席って何処に座るか悩むんだよなぁ。しかも皆闘志剥き出しでジャンケン始めようとしているし。


「お待ち下さい!」


マリアさんがジャンケンをしようとしていた皆を静止して皆がマリアさんに注目する。


「皆様が席を取り合う姿は予想ができていました。ですので僭越ながら私の方でクジを作りましたのでそちらで席をお決めください。」


「いいわね。クジなら公平性が保たれそうね。」


「恨みっこなしね!」


さすがマリアさんだ。あんなに敵意剥き出し状態の皆が落ち着いた。


「では、氷室様からクジをお引きください。」


クジは割り箸に数字が書かれているタイプで席を見ると数字が書かれていた。


「じゃあ、お先に。...5番ですね。」


俺の席は一番奥のど真ん中だった。


「さすが氷室様。一番いい席を引きましたね。」


周りの皆も「4席もチャンスがある!」と盛り上がっていた。


結果俺の右隣には南条さんと母さんが、左隣には百華さんと東城さんが座ることになりその場は落ち着いた。


「じゃあ、出発しますねー。」


村正さんの合図と共に車が動き出した。

進と正輝は運転席近くの椅子にマリアさんと座っていた。


「さくちゃんお菓子食べる?はいあ〜ん♡」


「あ、あ〜ん。ありがとうございます。百華さん」


「氷室っち!こっちのも美味しいよ!はい、あ〜ん♡」


「あ、あ〜ん。ありがとね南条さん」


「さくやちゃん!お母さんのも食べて!はい、あ〜ん♡」


「氷室君!私のもどうぞ。はい、あ〜ん♡」


車が動きだして暫くして気が付いた。この席、忙しすぎる!

皆お菓子をくれるのはありがたいのだが食べさせてくるので右向いたり左向いたりと忙しい。


「お、お菓子ばかりでちょっと喉が渇いちゃったから飲み物取って欲しいかな〜。アハハ」


「なら、私の飲みかけだけどあげるわね♡さくちゃんどうぞ♡」


百華さんがお茶のペットボトルを俺に渡してきた。


「せっかく飲んでいたのに貰うのは申し訳ないわ!さくやちゃん、このコップに入れたらどう?」


「あ、ありがとう母さん!そうするよ!」


母さんが気を遣ってくれてコップを渡してくれたのでありがたく百華さんのお茶をコップに移して少し貰うことにした。


「あらあら、礼子さんったら余計な気をまわしてくれちゃって〜うふふふふ。」


「あら?何でしょうか?おほほほほ。」


母さんと百華さんの間に見えない火花が見えた気がした。


チラッと他の席を見ると、俺から少し遠くに座っている皆はお通夜のような静けさでお菓子を食べていた。


・・・・・・・。


「すみません、少しお手洗いに行かせてください。」


運転している村正さんがトイレに行きたいらしくサービスエリアに停まった。

運転してもらっているのだから運転手の体調優先にしていただきたい。


「あ、なら俺も行っておこうかな。」


「なら僕も!」


「俺も!」


進と正輝も行きたかったのか俺についてきた。


「咲夜君たいへんだねぇ」


「忙しそうだったな。」


「うん、まぁ皆善意でしてくれているんだろうから無下にはできないよね」


「...善意ねぇ」


「ん?」


「まぁ何でもないよ。戻ろっか咲夜君に進君。」


トイレの前で待ってくれていたマリアさんと橘さんと合流して車に戻った。


「公平性を保つ為に次は席替えをしましょうか。氷室様はそのままで。」


「な!?」


それから俺の右隣は麻衣さん、橘さん、一子、町田さんとなり左隣は一江さん、せんちゃん、姉さんの席順に変わった。少し詰めて座っているので窮屈なのは内緒だ。


先程俺の近くにいた皆はお通夜モードとなった。


「あのね、咲夜君...実はこれ作ってきたの。食べてみてもらえるかな?」


麻衣さんが取り出したケースにはドライアイス等で傷まないように丁寧に梱包されたチョコケーキが入っていた。


「え?これ麻衣さんが作ったんですか?すごい!」


麻衣さんが作ったチョコケーキは店で売っていても不思議ではないほど見た目が良かった。


「それじゃ、いただきますね。...うまっ!?このチョコケーキ凄く美味しいですよ!」


味も見た目も良いと完璧なチョコケーキだった。


「ホント?...嬉しいわ///...お菓子作りが私の趣味なの。」


麻衣さんは照れながら趣味のことを語っていた。

可愛いすぎないか?


「良かったら、皆も食べてみてもらえる?」


周りの皆も麻衣さんのチョコケーキを食べて絶賛していた。


「あら?さくや君、お口にチョコがついているわよ?とってあげるね♪」


一江さんが俺の口に付いていたチョコを優しく指で取ってくれた。


「あ///ありがとうございます。一江さん///」


いい年して口に食べかすを付けていたのを恥ずかしいと思うと共に一江さんの優しく大人な仕草に俺は少しドキっとしてしまった。


「あれ?町田さん大丈夫?顔色悪いよ?」


町田さんの方をみると青い顔をしていた。


「う、うん。少し...酔っちゃったかも。」


「大丈夫美久ちゃん?私の膝に頭乗っけていいよー。」


隣にいた一子が町田さんを介抱していた。


気付くと周りの皆も町田さんが心配なのか水をあげたり薬を用意したりと色々と看病をしていた。


俺は席が席なので手伝えないがその光景をずっと見ていた。


「....皆のその優しいところ...好きだなぁ」無自覚


「・・・・・!?...♡」


皆はいきなり驚いたような仕草をしたと思ったら急におとなしくなった。どうしたんだろ?


チラッと窓を見ると海が見えた。


「あ、海だ!」


「あら、海が見えてきたら別荘までもうすぐですわね」


しばらく窓から海を見ていると村正さんが大声で東城さんに話しかけてきた。


「東城様ー。ここの私道入って大丈夫なんですかー?」


「はい、その私道に入ればもう家の敷地内ですのでお願いします。」


「了解でーす!あ、ここの駐車場でいいのかな?」


「あ、ここです。皆さん着きましたよ。」


皆が荷物を持ってぞろぞろと車から降りていく。俺は皆が降りないと降りれないので忘れ物のチェックをしていた。


「村正さん運転ありがとうございました。」


降りる時に俺は村正さんにお礼を言った。


「いえいえ、大人数を乗せた運賃は久しぶりだったんで楽しかったですよ」


俺と村正さんは最後に車から降りて皆の所に向かった。

東城さん以外の皆が途中で立ち止まったまま動かなかった。


「みんなどうしたの?」


俺と村正さんで皆の近くまで来たときに皆が立ち止まったままだった理由がわかった。


別荘と呼ぶにはあまりにもでかすぎたのだ。


2世帯住宅程の大きさの別荘を見て俺もしばらく固まってしまった。


お金ってあるところにはあるんすね。


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