第13話 獣のようにハッピーになる薬

 香港て、今は政治的に難しいヒリヒリヒヤヒヤな街と思われてるけど。

昔は、観光客が本当に浮かれポンチでね・・・。

買い物と来たら、ブランド品、化粧品、宝石、革製品、シルク製品、そして、忘れちゃいけない育毛剤と精力剤。


漢方屋はそこ彼処かしこにあるんだけど、普通に蛇だのオットセイの珍だのが現物で置いてある。

蛇はね、テーマパークでたまに見る、ペロペロキャンディーみたいなウィンナーっぽくされて売ってます。


知人の出向会社員は、香港の光化学スモッグと、一年中最強の冷房ですっかり持病の喘息が悪化し、もうこれは中国四千年にすがるしかないとゼコゼコ喘鳴状態で漢方薬局に行ったら、日本人男性はスケベしかいないと思われてるから、お前コブラにするか、オットセイにするかと言われて、「違う、違う、そうじゃない、俺は喘息で」(あの懐メロでどうぞ)と言ったら、「何だ、そんなら梨を食え」と言われて帰ってきた。

二年後、帰国したら全快。

原因は香港の大気汚染ですね。


 香港土産の定番に、育毛剤と精力剤と言うのがメジャーだったのよ。

 泊まってたホテルの地下に、ちょっとした雑貨屋があって、朝晩通るたびにおばちゃんに営業かけられてた。

ある日、そもそもこの店、何屋なんだろうと思って入ってみたの。

基本、外国人観光客が泊まるホテルだから、土産になりそうなもの何でもある。


「一番のおすすめは何??」と聞くと「これ!!!」と出してきたのが、ヤクルトくらいのボトル。

見た目は「ドレッシング・・・????」。

「チガウ!!!!よく見て!!!」と言われてラベルを見ると、昔の中国の春画みたいなのが描いてあって。

うわあ、ちっともエロさ感じないゆるキャラっぽい画だけど、これ精力剤か!!!


「これね、スゴイよ。獣のようになるよ!!!!!」


け・・・獣のように・・・!!!!???


「さっきもね、アメリカ人の夫婦の客に、五本売ったよ!!!セ○クス・ビーストって言って・・・」


いや、それで売れたんかい。そして買ったんかい。五本も・・・。


「・・・えー、怖・・・。飲むの???」

「無問題!塗るの!!!」


おばちゃん、とっても表現出来ないような卑猥な仕草で、真剣に女性のココ、男性のココ、と教えてくれる。


「塗るのぉ・・・???・・・獣ったってさあ、何の??」

「虎とかゴリラとかじゃない??」


おばちゃん、グッと親指を立てて。


「・・・ン〜犬!!!!」


・・・・犬ぅ・・・・?????


リアルっつうか、まあ、医薬部外品未満の実力っつうか・・・。


「本当だよ!!!!ワタシ、ハズバンドが七つ下。でもこれのおかげで、ハズバンドは元気もりもり!!!犬よ!!!私はビジネス忙しくて相手できないから、チガウ人とね。それで私は毎日元気に商売出来る。私たち、ハッピーよ!!!!」


・・・・待って待って。ハズバンドにこの薬与えない方がいいんじゃ・・・。


「・・・・これはいらないや・・・」


「じゃ、この健康器具買っていけ」


と、ゴルフボールくらいの球を二つ手渡される。


「・・・何これ」


ますます分からない。

どうもこのボールを片手の手の中でくるくる回す事によって血行が良くなり健康増進になると。


「長生きするよ、病気しないよ!!!」


いや無理あるわ。

せいぜいボケ予防・・・。


友達が「私、こう言うのとか知恵の輪得意なんだよね!!!」と言ってふざけてやりだす。


「嗚呼もう!!へたくそだね!!もっと男のボールを触るみたいにやるんだよ!!!」

と、どこまでも下ネタぶちかますおばちゃんが超高速回転させて見本を見せてくれる。

・・・・おばちゃん、すげえな、何と巧みな・・・いや、もう匠じゃないか。


「いやあ、七つ年下のハズバンド、何やってる人なの???」


旦那さんの方が気になってきた。

おばちゃん、少女のように嬉しそうにニコニコして。

旦那さんの事、大好きなんだなあ。


「私、ハッピーよ。毎日、私が仕事に出る時に一緒に朝ご飯食べに行く。そしたら、私はここに来る。ハズバンドは公園まで散歩して、マッサージに行って、その後、昼ごはん。そのあと、ハズバンド、犬になりに行く。そしたら、私が帰って来るの家で寝てて待ってる」


・・・・おばちゃん、それ、ホントの犬に近い、、、。


「毎日、大好きなハズバンドと一緒。私は大好きな商売出来る。ハッピーよ」


・・・・・うん。なんか一周回ってハッピーな気がしてきたよ。

で、二人で、よく分からないチャイナ生地の財布とポーチのセットを色違いで購入。


帰国して使おうとしたところ、私のポーチのジッパーは全く開かず、友達のがま口財布は全く閉じなかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る