第9話 入国審査水際作戦

 昔、旅行代理店の人が、飛行機が着陸して空港についたら入国審査の時に、インド系の人の後にはあまり並ばないでくださいね。スッッッッッッゴク時間かかるんで、と言っていたんです。

えー、なんで???と思っていたのですが。


なんでかわかった。

彼らは荷物がものすごく多い。

自分のもの、家族のもの、お土産、売り物。

服に食器に、飾りや、棚や小さい椅子みたいなものまで。

インド人ってカレーしか食べないと思ってるでしょ。


基本その通り。

正しくは、本当に保守的なインド人は、自分の家族が作ったものや、雇ったシェフの作ったカレーしか食べないんだって。旅行でもシェフを雇って連れて行って、材料持ち歩ってたりしたんだって。海外で、信用できる人のカレーが食べれない場合、トーストと紅茶しか食べないで過ごすと言う人もいるらしい。


と言うわけで、商品でもあるんだろうけど、自分たちで食べる分のスパイスなんだよね。

カレーの材料のスパイスも、日本だとS&Bの赤缶とか、ルーさえありゃいいかと言う感じですが、やはり本場カレー。ものすごいスパイス使うから、当然ものすごい量持ち歩くのね。


「これ何?」

「スパイス」

「これは?!」

「スパイス」

「・・・何が違うの?」

「種類が違う」


とか空港職員と話している。

あれじゃ、そりゃあ手荷物確認、時間かかるよねーと見ていたら、チョンチョンとカーディガンを引っ張られて。

え?と思ったら、インド人のおじさん。


「はい???」


米袋並にスパイスの入ったスーパーのポリ袋をいくつも見せられる。

どうも、前の人の様子見ていたら、自分もスパイスの量が多くてモメそうだから、日本人ならイージーに突破できんだろ、お前、自分のものだと言って持っててくれないか。と。

私、インド人カレー屋さんにカレー習ってた事あるんですよ。だから、スパイスはわかるんだけど。


「あのね、日本人観光客が梅干しだの醤油やワサビならまだしも、こんなに10キロも20キロもターメリックだ、クローブだって持って上陸したらおかしいでしょ・・・無理無理」


と、至極当たり前の事を言うと、なんだよ、ケチ、みたいな感じで、おじさん、どっか行く。

やれやれ、と思っていると、韓国語で女性の怒鳴り声が聞こえて来て。

どうも彼女にも同じ事を言ったらしい。

韓国人の女の子にブランドの固いバックで叩かれてたけれど。

だからさ。韓国人がキムチとか唐辛子ならまだしも、カレー粉じゃ無理あんだよ・・・・。


男に声かけりゃいいのにねぇ、若い女だからナメてんのよ、と職員も呆れ顔。

飛行機や空港で知らぬ外国人に荷物を持ってとか預かってとか、運んでなんて言われても絶対ダメですよ。今回はスパイスだったけど、違法な物だってあるんだからね、結構モメんのよ、と。


「毎日こんな事あるんですか?」

「こんなもんじゃないよー」


大変なお仕事だなあ。


「・・・で。アンタはなんでこんなお菓子入ってんの?」

「いや、来る時空港で買っちゃって。飛行機で食べきれなくて」

「あのさあ、コロンとかじゃがりことか、そこらへんで売ってるから」

「・・・・売ってんの?」


本当に、香港て日本のものたいてい売ってるんですよ。

旅行中、突然、あっ、じゃがりこ食べたいとか思っても、すぐに駅の構内とかで売ってます。

ご心配なく。






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