メスガキ魔王ちゃんと、ナビされても魔王城に到着しない女勇者
小花ソルト(一話四千字内を標準に執筆中)
第0話 アタシは寂しくなんかない
「はーぁ、やんなっちゃう……今度の参考書も分厚いなぁ、いつ終わるんだろ、これ……」
勉強机に片方のほっぺたをプニッと乗せて、怠惰に閉じかけたジト目で、何冊も積み上がった書物を眺める、魔王女エネミラ。片手で適当にページをパラパラと、見たこともない魔法陣が垣間見えて、これから自分はまた新しい魔法を取得するんだと悟った。
でも、いくら彼女が新しい力を手にしたって、ご褒美もなければ、誰も喜んでくれない。魔王の養子となった時から、彼女の日常は「何でもできることが当たり前」という、退屈兼過酷なものに変わってしまっていた。
「こんなの習ったって、どうせ誰も褒めてくれないし……。はーぁ、退屈だなぁ……」
最近ため息が増えた気がする。初めは夢中になって習っていたのに、今では一人きりの勉強部屋が、妙に寒くて、そして狭く感じるのである。
「なんか飲も……ココアがいいな〜」
だらだらとした猫背のまま、椅子から立ち上がって、部屋の扉を開けた。黒曜石のように黒々とした冷たい石の壁と、壁に設置された燭台から青い炎が揺らめいて、綺麗に反射しているのが見える。
ビビットなピンクの靴下が、灰色の絨毯を踏みしめて、食堂を目指す。道中に出会うのは、魔王の配下の魔族たち。養子であるエネミラにもお辞儀こそしてくれるが、会話が弾んだことは一度もなかった。
(ハァ、こいつらと話したって、忙しいので、とか、そんなんばっか! ママから言われてるんでしょ、アタシと話すなって!)
フン、と顔を背けて、エネミラは彼らの目の前を素通りしてやった。
寂しくなんかない、と強く自分に言い聞かせながら。
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