間 これが最後
ここは、どこだ。
ロックが目を開けると室内は薄暗く、それよりも湿気とカビと、ずっと風呂にも入っていないきつい体臭の匂いがして、顔をしかめる。
暗闇に目をこらすと、暗くジメジメした空間には数人の人間がいるのがわかった。みんな壁際にいて動きはないが、あぁとかうぅとうめき、ただダルそうな呼吸を繰り返している。
(あぁ、ここは……)
ロックはどこかを察した。
合わせて自分に何が起きたのかを思い出した。
(ジアラ……ジアラ……もう、お前には)
起き上がった身体を、ロックはまた横たえた。床は石……寝ていても快適さはゼロだが、もう何もやる気はなくなった。
ひたすらに口にするのは「ジアラ、すまない」という言葉。それは何度も何度もこぼれるが、それを伝えることはできない。
ふと、左腕がズキンと痛んだ。皮膚に触れてみると何かが埋まっているかのように盛り上がっている。何をしたっけと考える。
(ここに来る前、なんか、夢中で……)
ジアラから、いつかもらった角の欠片。それは彼が暴れて壁にぶつかり、角がかけてしまった時にもらった、彼の身体の一部。
それを手放したくないと思って、無意識で、身体の中に――。
(ジアラ……)
身体の中に、ジアラを感じる。
これが唯一、残された、これからの全てだ。
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