第305話 何処に行こうというのかしら?
地下3階層に降りて来たら、古戦場の内装になっていて敗残兵の幽霊が至る所にいた。
「歩、あの幽霊って掃除屋になる?」
「いや、あれは地下3階層の内装の一部だ。投影されてる映像みたいなものだよ」
「そうなんだ。罠は?」
「地雷があちこちにある。踏まないように飛んで行くよ」
古戦場ゆえに地雷が仕掛けられており、歩は夜霧を
地雷は踏まずとも爆発するタイプであり、歩達が通過したら自動で爆発した。
(踏まなくても爆発せずとも殺意が高いな)
地雷によってダメージを受けることはないが、地雷の爆発する範囲が広い上に古戦場がどんどん焼け野原になっていく仕掛けは危険と言えよう。
扉には戦場で死に際の兵士達の映像がランダムで投影される。
『死にたくない! 死にたくない!』
『うわぁぁぁ、足がぁぁぁぁぁ!』
『置いて行かないでくれぇぇぇぇぇ!』
「悪趣味ね。早く行きましょう」
望愛はアルテメジアのやり口に不快感しかないようで、歩に早く先に進もうと訴えた。
歩も同感だから、扉を開けてボス部屋の中に進む。
そこにいたのはデュラハンなのだが、騎乗しているのが霊馬ではなくヒッポグリフの幽霊だった。
全身甲冑の装飾も豪華だったはずなのに、激しい戦闘のせいでボロボロである。
『8分以内にルインドロイヤルライダーを倒せ。失敗した場合、次に塔に挑戦できるのは24時間後で地下1階層からやり直しとする』
「攻撃は実体と幻影を織り交ぜて使って来る。属性攻撃は召喚した幽霊経由で全部使えるらしい」
歩が説明している間に、ルインドロイヤルライダーの配下らしき兵士の幽霊が4体現れ、それぞれが火水土風の
更にルインドロイヤルライダーは腰から提げていた銃を取り出し、幽霊に弾丸を埋め込むように発射して幽霊も歩達に向かって飛んで来る。
「不純物が混じってるせいで、
「跳ね返すから問題ない」
歩は夜霧に
当然のことながら、ルインドロイヤルライダーは自分の武器でそれを捌こうとする。
「させないよ」
逃げるしかなくなったから、ルインドロイヤルライダーはヒッポグリフの霊に空を飛ばせて逃げる。
「何処に行こうというのかしら?」
望愛が
霊体を動かすのは魔力だから、
「我ガ配下達ヨ、我ニ力ヲ」
ルインドロイヤルライダーは全ての配下の霊を召喚し、それらを1つに融合させる。
「止まったままだなんて的になるだけよ」
再び望愛が
激しい爆発で大ダメージを負い、ルインドロイヤルライダーのヘルムが歩達の足元に転がって来た。
「じゃあな」
モーニングスター形態に変えた夕靄に
望愛の攻撃で大ダメージを受けており、その上で歩のフルスイングを受ければルインドロイヤルライダーは力尽きた。
虹色の魔石がその場に現れ、それと同時にルインドロイヤルライダーのヘルムが現れる。
「歩、お疲れ様。そのヘルムって安全なアイテム? 呪われてたりしない?」
「微妙なラインかな。ルインドヘルムだってさ。これを被ればルインドロイヤルライダーと同じ鎧を付けた姿に変身できてパワーアップするんだけど、好戦的になって被ってる時間が長くなる程に理性が失われてくらしい」
「また世に出せないシリーズだね。ヤルダバオトスーツと一緒だわ」
「実用性がいまいちなアイテムをドロップするモンスターを配置するなんて、これも新手の嫌がらせなんだろうな」
歩も望愛もアルテメジアのやり方にムッとした。
地下4階層に降りたら、階層内が暗雲に包み込まれていて探索者達の幽霊が入口付近に密集していた。
「掃除屋が出るぞ。望愛、あれをやってみよう」
「うん。私もこの時を待ってたわ」
掃除屋が出現する時、階層全体が激しく揺れて天井から針が飛び出し、その先端から雷が落ちて幽霊達を1つの塊にまとめていく。
「変身にも魔力が使われてるわ。暴走させたらどうなるのかしら?」
望愛が
変身にイレギュラーなことが起きた時、アルテメジアの意図していない変化が生じることになる。
現に光の中で1つの塊になった幽霊達だが、その塊は不安定になって2つに分裂して白い狼と黒い狼の姿に変わった。
「ゲリとフレキ。どちらとも掃除屋だ。ゲリが氷と雷、木属性、フレキが灼と蒸、泥属性を使う」
「「アォォォォォン!」」
ゲリとフレキの咆哮により、地下4階層全体が揺れる。
しかし、その直後にゲリとフレキの両耳が切断される。
「「アフゥア!?」」
ゲリとフレキの耳を切断したのは、歩が事前に配置していた六幻だ。
吠えて敵を威圧させたと思った時、死角からいきなり両耳を切断されれば音が聞こえなくなり、ゲリもフレキも恐慌状態に陥る。
「次は鼻だ」
夜霧の力で時を止め、歩はゲリとフレキの鼻を夜霧で切断する。
「「キャイン!?」」
聴覚の次に嗅覚を奪われ、ゲリとフレキの尻尾はペタンと股下にしまい込まれている。
「良さそうな毛皮よね。消えちゃうならきっちり回収したいわ」
望愛が
機動力が奪われていなければ、望愛の攻撃を避けることはできるのは間違いない。
だが、ゲリとフレキが避けようとした時に六幻が実体化し、ゲリとフレキの四肢を切断する。
「「アフゥア!?」」
寒さに強い狼が基のモンスターだが、
凍ったゲリとフレキはもう何もできないので、歩は剥ぎ取れるだけ剥ぎ取ってからとどめを刺した。
ゲリとフレキのそれぞれから虹色の魔石がドロップしたが、ドロップアイテムは1つだけだった。
「望愛、お疲れ様。毛皮はどうする? 慎重に剥ぎ取ったから大丈夫だと思うけど」
「歩こそお疲れ様。毛皮は毛布とコートにしたいな」
「なるほど。知り合いに加工してもらうんだっけ?」
「うん。毛布と毛皮のことは任せてくれて大丈夫」
毛布とコートは望愛が好きにすると言うから、歩はドロップアイテムを調べてみる。
それは節制の仮面であり、白と黒のカラーリングが縦に半分になっている狼モチーフのアイマスクだ。
(魔力消費量を減らすか魔法の攻撃力を高めるか切り替え式の仮面ね。これも望愛にあげよう)
「望愛、節制の仮面を着けてみる? 魔力消費量を減らすか魔法の攻撃力を高めるかを切り替え式で選べるんだって」
「そうなの? じゃあ、歩とお揃いだし着けようかな」
望愛は歩とお揃いになれると喜び、歩から節制の仮面を着けた。
「どう? 似合う?」
「似合ってるよ。強そうな魔女感が増してる」
「外見からそう思わせるのも大事よね」
ゲリとフレキを倒したことで歩と望愛はゆっくりと地下4階層を観察できるようになった。
闘技場の受付ゆえに、
スタチューミミックの姿もなく、受付の奥にある通路を進めばボス部屋の扉があった。
【
「えっ、待って。この先侵入不可なんだけど」
「え? なんで?」
先に進めないと聞き、望愛はその原因を歩に訊ねた。
「地上のチャーハン達が地上4階層のボス部屋を踏破しない限り、ここから先に進めないんだってさ」
「そんな縛りがあったのね。だとすると、しばらく待つしかないわ。休憩しましょう」
「そうだな」
同時進行のチャーハン達が地上を探索しているが、彼等が4階層のボス部屋を踏破するまで歩と望愛は強制的に足止めされる。
一旦入口に戻って塔の外に出る選択肢もあるけれど、チャーハン達ならそこまで時間をかけずに地上4階層を踏破できると信じ、歩達はこの場で休憩することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます