第6話エリート

 三人目のターゲット。

 鵜原数彦、年齢二十六、結婚二年目。


会社の次期社長の椅子に最も近いと噂される上司の娘を紹介され、歳は四つ上だったが、上司同席の二回の食事会後、交際がはじまり三ヶ月後には結婚が決まった。


 将来を嘱望されたエリートであった。

 しかし鵜原には、結婚前から付き合っている女がいて、その関係は結婚後も続いていた。

 将来を嘱望された鵜原は、国内、海外とわず、出張の際は愛人であり部下でもあるその女を、常に同行させていた。

 

 ティとマックが二人のターゲットにお仕置きをした直後、鵜原の商談名目のタイへの出張が決まった。


 ティとマックは、ターゲットより二日早く入国すると、カネさえ積めば何でもしてくれる、いつもの優しいお医者さんと合流する。


 優しいお医者さんに丁寧にお願い事をしてターゲットを待った。


 予定より一日遅い三日後、鵜原と愛人の部下が入国すると、空港で待っているように指示でもされていたのか、商談相手らしき人物と短い会話を交わすと、車に乗り込みバンコク市内の五つ星ホテルに向かった。

 五つ星ホテルといえども、タイでは日本円で23000円位から利用でき、日本企業だと無難なところだろう。


 鵜原と愛人と商談相手の四人がホテルの十二階の突き当たりの客室に入ると、五十分弱で商談相手の二人が出てきた。


 十分後、愛人の部下がキャリーケースをもって同じ階の中央にあるエレベーターに近い一室に入る。

 五分後、鵜原と愛人の部下がエレベーター前で落ち合い、ホテル内のレストランで早い夕食を済ませると、二人は十二階の突き当たりの男の部屋で朝まで過ごした。


 鵜原が一人になるのを待っていたティとマックに、チャンスが訪れたのは午前六時すぎのことだった。

 ―─鵜原は朝食をとる、愛人の部下はとらない―─は、報告書どうりだ。


 ターゲットをいつも通り優しく気絶させ、使用済みのシーツやマクラカバーの入ったキャスター付きバケットにターゲットを詰め込んで、駐車場まで運ぶと、そのままハイエースに乗せ込んだ。


 愛人の部下がエレベーター近くの自分の部屋へ戻って、化粧と着替えを済ませ再び鵜原の部屋へ入って待つが、鵜原は姿を見せない。

 ルームサービスで食事を済ませ、何がなんだか解らぬまま、一日をホテルで過ごすと、鵜原の帰りの航空チケットを部屋に残して、鵜原を捜すこともなく、翌日女は帰国した。

 

 鵜原が永い眠りから覚めたのは、タイに入って十日目のことだった。


 妙に頭がぼやけて、薄い記憶をたどりながら、そこがバンコクのホテルの一室であることを悟ると、少し安心したのか急に尿意が襲ってきた。


 横になっていたベットを出ると、一つ目のドアがトイレだったことにホッとした。

 便器の前に立ち股ぐらを弄るが、鵜原はそこにあるべき男のものがないことに唖然となるも、襲いくる尿意にどうすればいいのか解らないまま、見馴れないパンツとデニムをびしょり濡らしていた。何がどうなっているのか思考がはたらかない、仕方なく隣の浴室に入る。 


 何がどうなっているのか解らぬまま、身につけている衣服を脱ぎ捨てると、鵜原の胸には、Gカップはあろうかという膨らみができていた。

 鵜原は変わり果てた自分の女体を、浴室の鏡で眺めると、それが眼の錯覚ではない現実にただ呆然と立ちつくすしかなかった。


 海外には同行しない俺は、監視カメラのごとく、設置された五台のカメラを編集しながら、仕置きを知ることになる。間違いなく予算オーバーだ。

 

 海外になるとティとマックは過激なる。

 



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