第22話 浪費癖

「私に協力しろ。悪いようにはしない」


「子作りなら喜んでするけど」


「いいよ」


「……いいよ・・・?」

向日葵ひまわりは怪訝な表情をして彼を見つめる。


「結婚するし、子供も作ろう」


「だが一人は選ばん。優紀、霞澄、向日葵、冬蘭。お前達全員を私のものにする」

真っ直ぐ、冗談気を微塵も出さず。彼は最も犠牲の少ない、苦い解決案をその場に提示した。


「何言って──────」


「例えば私が1人選んで結婚したとする。子宝に恵まれたとする……さて、その時点で他の奴らは、完全に諦め切れているでしょうか?」


「それは……」


「お前達は諦め切れると信じているが……バックにいる組織はどうだ?ヤクザ、大企業、国防軍、世界中に散らばるインフルエンサーの親衛隊……そいつらが簡単に手を引くか?彼女らを簡単に許すと思うか?」


「答えはNOだ。お前だって柳会の幹部の娘だからってタダじゃ済まされないだろう。向日葵……私達は何処かで妥協しなきゃいけないんじゃないか?」


「向日葵。私の言う通りにしろ。もし呑めないなら……お前達が考え得る限り最悪な出来事を起こさねばならないかもな」


「おもろい提案やんけ。断るわ」


「…………」


「アホ言いなやマツぅ〜。それっぽい論理でごちゃごちゃにしてゴリ押しする腹積もりなんやろうが……そうはいかんで」


「重婚したらそれはそれで内戦は起こり得るやんか。家督に財産の相続とか、あと普通に何らかの不平不満は常時起こるもんやんか」


「結婚したらはい終わりちゃうねんで。ほんま可愛いわァ」


「私に出来ないと思うか?」

男のドスの効いた声が寝室に響く。


「…………」


「早く返事を聞かせて欲しいものだがな。さっさとしないと身体が冷えて風邪引くぞ」


「……無理やろ。マツかて好きな女がシェアされてたら嫌やろ?」

玩具を取り上げられた子供のように俯き、若干頬を膨らませ上目遣いで睨みつける。


「残念。私の聞きたかった回答じゃない」

ベッドの隣にあるテーブルの、卓上ウォーターサーバーからコップに水を注ぎ、冷水を喉奥に流し込んで胃酸の味を薄め誤魔化した。


小型拳銃を彼女の腹に押し当てながら、ゆっくりと抱き寄せ、髪を撫でて、犬同士がコミニュケーションの為にそうするように、自らの鼻を彼女の鼻に押し当てた。


向日葵もゆっくり腕を伸ばして彼の背中を、服の上から背骨の線の通りに撫でる。


「結果はどうあれ、次は式場で会うやろな」


「そうかもな」




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