第3話 出会い

火球フレア・ボム!!」


 セツナは考える前にその場から一歩下がる……だったが、重力の違いで大きく距離を取った。

 そして今までセツナがいた場所に火球が炸裂。木々が数本消し炭になって崩れ落ちる。


(すごい破壊力だな。というか、と言っていたが、アレを放ったのは、人間の女性……ではなく、見た目的には自分がいた世界だと女子高生くらいか? でも、なぜ自分が狙われる? どう見ても悪人には見えないし、カルマ値もない。このまま反撃するのは拙い気がする。それも悪い意味で。こういう嫌な勘は当たるんだよな……)


 少し様子を見よう、とセツナはそう選択した。

 が、目の前の少女は、怒り心頭とばかりに顔を真っ赤にしていた。


「なに今のアイツの動き!? まさか空間跳躍でもしたっていうのっ!! こうなったら逃げられないよう、絨毯爆撃じゅうたんばくげきで仕留めるわよ! フレイム・フォール!!」


 セツナの頭上に無数の炎の矢が出現したかと思えば、顕現と同時にものすごい勢いで落下してきた。セツナの周辺ごと焼き払うかの如く炎の矢が降り注ぐ。


「どう! 流石に仕留めたでしょう!! って、なぁ!?」


 少女は最初は息巻いていたが、その直後、目の前の光景に目を見開く。

 セツナには火傷どころか、身につけている服のほつれすらなかったのだから。

 だが、すぐさま我に返り、セツナを指差し吠える。


「貴方ね! 人さまにデビルを仕掛けたのは!? 私に何の恨みがあってしたの!!」


 その言葉を受け、セツナは思案する。が、その沈黙を肯定と見なしたのか、更に怒る。


(年の頃なら15、6といったところか)


 セツナは眼前の少女を観察する。

 髪の色はファイア・ブロンド、黒い肩当てを装着し、更にマントをしている。服自体は動きやすい仕組みになっている様だ。

 そして、先ほどの二度の攻撃を鑑みる、そんじょそこらの素人を簡単にあしらう程度の腕はありそうに見受けた。


 更に――


「あ~……そこの人、何かクロエに恨みでもあるんなら、きっぱり忘れた方がいいぞ。かかわるほど不幸になって行くから」

「ちょっとシグルド!! それってどういうこと!!」

「今更説明しなくともわかるだろ?」

「うっ……」


 クロエと呼ばれた少女の隣に長い金髪の男が立っていた。シグルドと呼ばれていた男の年齢は二十歳少々といったところか、腰に剣を差している。

鎧は動きやすい形をしている、スピード重視の戦い方だろう、とセツナは推測した。

 腕の方は……、間違いなく一級品だと直感で感じ取る。


「……とにかく、あの男を倒すのよ!! あいつがきっと犯人に違いない!! そんな怪しい格好でしかも黒色ときたら、暗殺者か何かだって相場が決まっているのよ!! あんたが犯人だ、私が決めた!! ということで、覚悟決めてさっさと吹き飛ばされなさい!!」


 横暴な、とセツナは思ったが、なにを言っても火に油を注ぐ予感がした。けれども、シグルドと呼ばれていた男の方は、まだ話が通じると思い声を掛けた。


「そんな無茶苦茶な……。そこの人、どうにかしてくれません?」

「いや~スマン、そうなったら俺でも無理だ。近頃イロイロあってな、ストレス溜まってるんだ。犬にでも咬まれたと思って諦めてくれ……」

「自分は人間だよ、ちょっと事情があるけど」

「……シグルド、どう思う?」

「たぶん本当じゃないのか? これまで会った魔族の様なにおいがしない」


 においって……犬代わりなのか? それにたぶんって何だ、たぶんって。


「だから普通の人間だって言っているだろう。これで誤解は解けたかな?」

「そうだな。おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名はシグルド=ヴァイオレット、シグルドと呼んでくれ。そしてあっちにいるのがクロエだ」

「クロエ=ミネルヴァよ、クロエで良いわ、よろしく」


 一応、誤解が解けたのか、先ほどとは違い敵意と言う物はなくなっていた。 

 内心でホッとしていたセツナは、自己紹介をする。


「自分はカミシロ=セツナ。セツナと呼んでくれて構わない」

「おおっ!! クロエの名前を聞いて驚かないぞ!! こういう対応は久しぶりだ!!」

「あんたねぇ~!!」

「まあまあ二人とも……。さて、冗談はおいといて……」

「そうだな」


「「そこにいる奴、出てこい!!」」


 自分とシグルドが同時に言った

 瞬間、森の闇が一段と深くなった……、その闇よりにじみ出てくるように人が出てくる。

 うすい緑色の髪をした青年、いや少年といった方が正しいか。

 服も同じ緑色の神官服を身につけている。

 女性が可愛らしいと思うだろう顔。

 親しみを込めた笑顔、その様に表すような顔でこちらを見ている。


 ただし、見た目は、だが。

 こいつは人とは相容れない存在だ。セツナはそれを本能で感じていた。


「これはこれは、始めまして。私はの神官をやらせてもらっているプリウスという者です、以後お見知り置きを。

 クロエ=ミネルヴァ様、シグルド=ヴァイオレット様。

 それに異界よりの訪問者、カミシロ=セツナ様」


「それで、なに? その魔族でもお偉い神官様が私達に何のご用でしょうか?

亡くなった同僚のバーシアの敵討ちかしら?

それとも私達にプライド傷つけられた飼い主の報復?」


 クロエも負けずに言い返す。

 良い根性しているな、とセツナは思った。


「そうです……といったら納得していただけます?」

「いいえ、まったく」

「ですよねぇ」

「で? 本当のところは何の用事?」


 セツナは此処は情報収集するべきだ、と思い事の成り行きを見守る。

 尤も、警戒は怠らない。何故ならカルマ値が先ほどの悪魔もどきの比ではないこと。またセツナ自身の危機感にも触れていたからだ。


「今回は我が主のことは無関係です。あなた方、クロエ様とシグルド様に興味がわいてきたので、会いに来た次第です」

「ヘ~、興味、ねぇ……」

「六つに別れし我が魔王・セルシウス様、その内の一つを倒され、生き延びた。

そしてデル・カイザー様も興味を示している。これほど面白い対象はありませんよ」


 セツナは黙って話を聞いていた。この世界の情報と事前に得た知識を照らし合わせる。しかし、先ほどの現象といい、魔族とか魔王とか。

 どうやら、根本的に違う世界のようだな、なのに。


「さっきのデビルをけしかけたのはあなたって訳?」

「ええ、ほんのご挨拶程度に。まあ、予想外の出来事もありましたが」


 そう言って、プリウスはセツナの方に一瞬、視線を向ける。


「じゃあ、挨拶が終わったのなら帰ってくれる? これからお昼ご飯なんだけど」

「いえいえ、アレは準備運動ですよ。」


 言い終わると同時に、周りに奴と同じ様な気配が2つ生まれる。


 強さは、男の方は奴に比べ弱い。

 けれども女性の方は、魔気は奴らより小さいが、闘気を隠してはいる。

 感じるプレッシャーは二人よりも強い。


「あの程度ではあなた方に失礼でしょう?」


 人畜無害、そんな顔をして奴は言った。


「まったく、ありがた迷惑ってヤツよ。バーシアといい、あんたといい、魔族の神官って奴はろくでもないのばっかしね」

「ほめ言葉として受け取りますよ」


 そして、プリウスの言葉を皮切りに、セツナのこの世界での二回目の戦闘が始まった。

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