第13話 天候予想
「くそ! この私が矮小な人間ごときに負けることなど、あってはならない!」
「負けたくないですよねぇ? 負け、取り消したいですよね?」
「そんなことができるのか?」
「彼女を倒せば、あるいは」
俺は女神パリスを指差す。当のパリスは余裕の笑みを崩さない。
「管理者たるパリス様の権能を奪い取ろうというのか。よし、乗った!」
竜王はあっさりと提案に乗った。まぁ、リスクを負うのは結局俺だけだしな。
「遂にこの時が来ましたね、司どの。やっちゃってください!」
聖女エリオナも賛同した。こいつは俺の計画を知っている。この時のために色々と尽力してくれた。
「もう好きにしろ」
カレンはもはや諦めモードだ。
「裁定の女神パリス。六盟制度の管理権を賭けて、貴様に勝負を申し込む」
【いいでしょう。現存六盟王の全会一致を以て、六盟制度管理権を賭けることを承認します。規程に則り、賭けの内容はこちらが指定します】
全能の女神が相手で、賭けの内容は向こうが決める。これ以上なく不利な戦い。だが、勝算はある。
【『現地時刻における2030年3月23日中に、アラビア半島に位置するルブアルハリ砂漠に雪が降るか否か』これを予想していただきます】
そんなもの、降らないに決まっている。だが、わざわざ賭けの内容に選んだということは、降らせる目算があるということ。パリスの全能の力があれば、砂漠といえど確実に雪は降る。
ならば、雪が降らないよう動く方がやり易い。
「私は『降らない』に賭けます。砂漠に雪が降るなどあり得ない」
【そうですか。では、1ヶ月後の清算の日を、楽しみにしていますよ?】
パリスは穏やかな笑みを浮かべたまま、消え去った。
これからが本番だ。
「しかし、随分と都合よく大統領が辞任するものですね。どんな手を使ったんです?」
アリシアは他人事のように訊いてきた。俺の部下なら、本命の作戦についても事前に知ろうとしそうなものだが。
「これを使った」
俺は黄色の付箋を取り出した。
「はぁ。つまりどういうことです?」
「聖女エリオナとの八百長は、洗脳術式を譲り受けるためのものだった。ほとんど価値のないペーパークリップや付箋を賭けていたのは、パリスを油断させ、監視を緩くするため。そして、エリオナにはこの付箋に術式を刻んでもらった」
「なるほど。最初にわざと負けて付箋を引き渡し、次はわざと勝つことで術式を刻んだ付箋を取り戻したわけですね」
「その通りだ。俺の八百長試合にも、意味があったということだ」
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