ワールド・ヘリテージ・ギャンブラー~連敗王、全能の神に挑む~

川崎俊介

第1話 連敗王vs魔王

「遅いぞ。黒瀬司」


 赤髪の女、カレンが俺を詰る。俺が会場に到着すると、既に他の【六盟王】は揃っていた。


「すみません。道に迷ってしまいまして」


「ここには一瞬で転移できる。迷いようがあるか!」


 ここは【虚空の庭】と呼ばれる特殊な異空間。【六盟王】の資格があればすぐに転移できる。


「すみませんねぇ、まだ慣れていなくて」


 もうここでのギャンブルは6回目だが、敢えてそんなことを言ってみせる。バカを演じたほうが得策だ。


「あれで六盟王の一角なのか」


「どういうわけか知らんが、【虚空の庭】は黒瀬司を現世代表に選んだ。我々の一存では変えられんよ」


「僕らに出番が巡ってくるまで、サポートに徹するしかないということか」


 現世サイドのカレンとホンファは、聞えよがしに陰口を叩いてくる。


 実際俺はこのところ、鉛筆やペーパークリップを賭けて異世界代表と対決し、負けを繰り返している。これで現世にも異世界オルティアスにも大した影響は出ていない。


 だが生憎、それも今日で終わる。


 俺の任期は9ヶ月で、ギャンブルは月に一度。残り3回で、この制度を破綻させる。


【オルティアス全権、エリオナ様の任期は終了しました。今回は、黒瀬司様と、ゼスト・ダンヴェール様の対決です】


 対戦相手の魔王ゼストが現れた。相変わらずとんでもない魔力と威圧感だ。


「地球上の全ての水力発電所を賭けます。水源もセットで。私が負けたらあなたの物です」


 俺が宣言すると、皆どよめいた。特にカレンは顔面蒼白といった様子だ。


「正気か? それだけの施設が失われれば、地球のエネルギー供給も大きく乱れるであろうが」


 魔王ゼストは、こちらの心配までしてくれた。随分と親切なものだ。


「それくらい賭けなければ面白くないでしょう? 私も、文房具を賭け続けるのに飽きてきた頃でしてね」


 カレンは顔を真っ赤にして何か喚いている。顔を青くしたり赤くしたりと忙しい奴だ。


「そうか。しかしそれに見合うだけの文物が思い当たらなくてな」


「星喰いの石を賭ければいいでしょう。あれは、自身は変化せずに物質をエネルギーに変換する奇跡の触媒です。いちいち発電所を利用しなければエネルギーを供給できない我々にとっては、喉から手が出るほど欲しい代物ですよ」


 魔王ゼストはこの提案に乗るはずだ。何せ、星喰いの石はエルフの里の宝物。そして、エルフは魔王国と敵対関係にある。勝てばエネルギー資源が手に入り、負けても敵であるエルフの力を削ぐことができる。


 魔王にとってはメリットしかない。


「良い提案ですな。承諾しましょう。して、賭けの内容を決めて頂きたい」


 俺が連敗王だからか、ゼストは呆気なく賭けの内容を決めさせてくれた。


「日本標準時における西暦2030年1月23日中に、東京都内で自爆テロが起こるか否か、予想して頂く。あなたが正解すればあなたの勝利。不正解なら私の勝利ということでどうでしょう?」


「いいだろう。私は『起こらない』方に賭ける。わざわざ具体的に予想内容を指定してきたということは、万全の警備を固めるつもりなのだろう?」


「さぁどうでしょう? まぁ、どっちみち未来のことは女神パリス様にしか分かりません。ですから、何でもいいでしょう」


「それもそうだな。さすがは【連敗王】。勝敗への執着がないのは良い美徳ですな」


「では、1ヶ月後まで、互いに備えるとしましょう」

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