Part.3

🐟 7 🐟

  ◇  ◇  ◇



 両翼が風を掴む。その鶴はクールに滑空していた。ずっしりと脚にたずさえるのは、今日の戦利品。質のいいアジをひとまとめにしてくれるとは、ニンゲンはやはり我々ギャング鶴の下僕なのだろう。この世を鶴が翼握しょうあくする日も近い。


 朝日に目を細めながら飛ぶ鶴の背後が、ふいに騒がしくなる。緩慢な動きで後ろに視線を泳がせる鶴。



「クェ?」


「まぁぁぁぁああてぇぇええええ!!!!」



 鶴の目に映ったのは、びゅーんと宙を飛んで近づいてくる人影ふたつ。ニンゲンが見たことない飛び方で迫るのに鶴は恐怖した。



「ギャァァアアアア!?」



 ニンゲン――ファウストの操縦で鶴に速攻追いついたエレナ。がしっとエレナは鶴に飛びつく。ケースを掴むその足を引き剥がそうとするエレナと抵抗する鶴の空中乱闘。ファウストは並走する速度をゆるめて傍観した。



「この鶴! あたしのアジを放しなさい!」



 鶴はズボッとくちばしでケースを蓋ごと貫いた。



「あ!」



 ごくん。鶴は数匹のアジを慌てて丸のみした。



「キィー! ズルいよそんなの!」



 エレナは鶴の首元に抱きついた。



「キュゥゥゥウウウウ!!」



 締め上げられ奇声を発する鶴。



「吐け! 出せ!」


「キュゥウ」



 激しいアップダウン。すると急にあたりが暗くなり、一人と一羽は同時に空を見上げた。


 バサッと大きな羽音とともに強風。髪の毛と羽毛がかき上げられる。エレナたちを覆い隠すような影を落としているのは、頭上を飛ぶ巨大な鳥だった。



「なっ、何このデカドリ!」



 エレナの悲鳴とともに、がぶり。デカい鳥はエレナと鶴をその大きなくちばしで挟んだ。



「ぎゃーーーー! 喰われるぅぅうう!」


ワシに憑依した悪魔ですねぇ」



 デカドリに抵抗するエレナの横からファウストが、興味深そうにモノクルに手をやった。



「言うてる場合か! 助けてぇぇぇドクタァァァア!」


「クェェェエエエエ!!」



 ごくん。デカ鷲は断末魔もろともエレナと鶴を飲み込んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る