未来戦争~未来を制するものが勝利を掴む、新しい戦争が始まる~

@laptop

第1話

気象は晴れ、爽やかな風が吹く山々の森の中、人々は銃を構えて戦争に明け暮れていた。軍隊は陣を敷いて、向かい側の山にいる敵と対峙、いわゆる交戦状態である。


 東の王国と西の共和国、2つ軍の力は拮抗しており、なかなか勝負が決まらなかった。ある時は王国が勝鬨を上げ、またある時は共和国が勝利の祝杯を挙げる。ほとんど同じ数の戦力に、同じような兵器の数々と、その力の差は存在しないに等しかった。

 

 だが、ある時だった。突如として、一方が相手の行動を先読みし続け、連戦連勝を繰り返し始めたのだ。兵士たちが戦争の終わりを感じとる中、軍の将校たちは自分たちの終わりを感じ始めた。


 東の王国軍を指揮する大佐の下へ、またしても作戦の失敗が告げられた。

 

「報告します。敵は陽動にかからず別動隊を捕捉、部隊は壊滅したとのこと」


 報告を受けて、その拳を握りしめた。


「なんということだ、また作戦が易々と……」


 大佐は自身の作戦の失敗を聞かされ、やりきれないような失意の底に居た。寝る間も惜しんで考えた作戦が一蹴される、そのことへの理不尽な感情が溢れていた。


 しかし、失望するだけではなかった。その敗北の原因にも予想が付き始めたのだ。


 「以前の作戦は実行する前に漏洩していた。ということは今回も情報の漏洩なのか……」


 報告した部下に大佐は情報の漏洩についての調査、その状況について問いただした。


「情報の漏洩についてはの調査はどうなっている。やはり密偵が入り込んでいたか」

 

 大佐は焦っていた。これ以上赤子の手をひねるように負けてしまっていては、自身の面子が立たないからである。


「そのことについて――」

 

「いませんでしたよ、大佐」


 報告役の後ろから声が聞こえた。誰だと聞くと、木々の後ろから男がその姿を現した。


「大佐、依頼の件で報告に参りました」


 男は制服の一部を掴んで、階級章を見せた。


「その制服は……情報部の少佐殿か」


 少佐は不気味に微笑んで返事をした。

 

「ご命令通りに、調査が完了いたしました」

 

 事態を重く見た大佐は、潜入捜査を得意とする情報部隊に事の原因を探るように要請したのである。


 「それで密偵が、スパイがいなかったのは本当か」


 大佐は怪訝そうに聞いた。


 「ええ、少なくとも作戦を漏洩している者はいません」


 大佐は不思議に感じた。存在することの証明と比べて、存在しないを証明することはかなり至難の業、しかし堂々といないと答えるその姿を見て、とても嘘とは感じられなかった。


 「分かっていますよ、存在しないことを言い切るのは無理と。けれど証拠はあるのでご安心を」


 「本当だろうな、その話」

 

 少佐は手元に資料を持つと、ついに話を切り出した。


 「かつて数多の戦場において、多くの作戦を成功させてきた貴方がこの状況。すべての作戦は敵に読まれてしまう。なのでこう予想した訳です、情報はスパイによって漏れていると」


 「違うとでも……」


 「半分正解で半分違います。情報は確かに知られていますが、スパイなんてものではなかったのです」


 その答えに大佐は息を吞む。


「依頼されていた通りに密偵がいる線で調査したところ、意外なことが分かりました」


 一向に結論を話さない少佐に大佐は険しい顔をして問いただした。


 「なんだと言うんだ少佐、いったい何が原因だというのだ」


 焦る大佐に落ち着いて聞くように少佐は告げると、原因について語り始めた。


 「……捕まえた敵の将校から情報を吐かせたところ、彼らは未来について書かれた書物を手にしたようです」


 その信じられない情報に大佐は唖然とした。


 「未来などと信じられるか。助かりたいがために適当なことを言ったに違いない」


 「いいえ、未来世界はあります。何故かと聞かれれば――」


 少佐は手元の写真を困惑する大佐に突き付けた。そこには巨大なビルが立ち並ぶ、この時代では見ることのできない風景であった。


 「我々はその未来世界に行くことができたのです。これから、そのことについてご説明いたします」

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