史上最強の魔女である私、いつの間にか恐れられ過ぎて一人ぼっちになってしまったので、可愛い女の子の奴隷でも買って色々と求めちゃおうと思います
リヒト
第一章
孤独の魔女
───昔々、そのまた更に昔。
一柱の女神と、更にもう一柱の女神が地上の覇権をめぐって争った。
それはそれは気の遠くなるほどの長い戦いであったが、その戦いは唐突に幕が引き下ろされた。それをもたらしたのは神々の戦いの中で逃げ惑う他なかった地上の定命種の一つ。
人類の手によるものであった。
ただの知性を持たぬ獣であったはずの存在が、神々も意図せぬ形で知性を得た種族である人類が神々の力を模倣した技術、魔法を伴って神々の争いへと介入したのだ。
二つある女神のうち、人類に寄り添いって味方とした女神が、逆に人類と敵対した女神に勝利した。
長きにわたる争いは、人類による介入で終わったのだ。
この争いに勝利した女神は唯一神とされ、敗北した女神は邪神とされた。
しかし、その長きにわたる争いによる後遺症も存在していた。
地上は荒れ果て、ぶつかり合う神々の力に歪ませられるような形であるべき本来の生物の姿から逸れた『魔物』が生まれてしまった。
争いが終わり、邪神は封印され、唯一神も何処かに消えていってしまった中で、地上に残された人類はその魔物と戦い続けていた。
そして、その戦いは遥か昔より永遠と続き、現代にまで続いていた。
むしろ、年々悪化し続けていた。魔物の勢力圏は続々と拡大し、人々の住まう地域は年々少なくなっていく───そのような中で、たった一晩によってその魔物の勢力圏の約九割が消滅した。
「こ、こんなことが……こんなことが許されていいの、だろうか?」
天には魔法陣が描かれて煌めき、地上では何もかもを焼き焦がす炎が揺らめく。
魔物たちの勢力圏の何もかもが焼き尽くされ───それを引き起こしたのはただ一人の少女であった。
その少女はまるで朝露に輝く白百合のように清らかで、儚げな美しさをたたえている。
柔らかな光をまとった透き通るような白い肌は、まるで陶磁器のように滑らかで、指先が触れれば壊れてしまいそうなほど繊細。長いまつげが影を落とす大きな瞳は、澄んだ湖のように深く、そこに映る景色すら美しく染め上げるかのよう。
風に揺れる髪は絹糸のようにしなやかで、地上の炎に照らされて黄金の輝きを宿している。
「……っごく」
ただ、その相貌に感情の色はなく、ゾッとするほどに無表情だ。
地上を燃やし尽くすその少女は己の起こす神が如き状況を前にしても、何も思っていないようだった。
「あれが、あれが噂、の……」
「……ははっ、本当に、人なのか?」
「神よ……」
淡々と地上を燃やし、全てを消し去っていく。
その少女の姿を見る人々の頭に飛来するのは畏怖であり、恐怖であり、信仰であり。
「あれが、魔女……」
ありとあらゆる感情でもってその少女のことを人々は───魔女、と呼ぶのだった。
■■■■■
魔物たちの生存圏の多くを焼き払い、一気に人類の住める土地を増やした人類の救世主とも言える魔女に対し、人々は恐れを抱く。
感謝ではなく恐れを。
だが、それも仕方ないのないことであった。
魔女の素性を知っている者はこの世界に誰もおらず、その無理解が恐れを生み出していた。
「あぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!?何も言えなかったっ!?」
何故、人類を救ったとも言える魔女の素性を誰も知らないのか。
それは魔女と呼ばれるその少女は人類の窮地を救ってみせてもなお一切表舞台に立つことがなかったからだ。
故にこそ、全てが謎に包まれる少女には多くの逸話が存在していた。
───曰く、魔女は神の世より生きた英傑である。
───曰く、魔女は子供を連れ去り、実験体にしてしまう怖い存在である。
───曰く、魔女は孤高の存在であり、人々を嫌う。
───曰く、魔女は世界の管理の為に主神が遣わした神の使いである。
───曰く、魔女は邪神の生まれ変わりである。
数多の逸話。
それらは多種多様であるが、決して魔女を下に見るようなものなどない。人々は誰もがその魔女のことを恐れ、畏怖していた。
膨れ上がった数々の逸話はそれらの証明であると言えるだろう。
「うぅ……何で私は誰にも話しかけられないんだっ」
しかし、その魔女の実態。
それはただ、誰にも話しかけられないようなコミュニケーション能力が極端に低い少女でしかなかった。
「あぁー。私はこのまま一人ぼっちで死ぬのか……何も出来ず、独りぼっちで私は死ぬのか……」
森の奥深くに建てられた一つの洋館。
そこのベッドで魔女と呼ばれる少女は一人、そこで寝っ転がりながら静かに涙を流す。
魔女と呼ばれる彼女はその内心に孤独を抱える、そんな悲しき少女でしかなかった。魔女。その異名はかなり独り歩きしているのが実情だった。
「魔物を倒せば……みんなの困りごとを解決すれば、誰かが感謝する為に私の方に声をかけてくれたり、何なら力を示したのだから何処かが私を登用するために声をかけてきてもいいのにぃ」
この少女は考えに至らない。
そもそもとして自分への連絡手段を持つ者など存在せず、己が何をしようとも他者から接触されるはずがないことを。
「そうだ。奴隷を買おう」
そんな当たり前のことに気づけない愚かな少女はふと、その天才的な思考回路でもって己の孤独を埋めるための術を思いつくのだった。
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