83.ツンな理由

「あの……ひょっとしてだけど……ど、ドウマ様と話していたの?」


(っ……!)


 リーゼの質問は完璧に当たっていた。


「えー、えーと……」


「界さん、私、誓って、誰にも言いません」


「え……?」


「だから、どうか教えてもらえませんか?」


 リーゼの眼差しは真剣そのものであった。


 その表情を見て、界は思う。


(これは、ただの好奇心から来るものじゃないんじゃないか……)


 だから、界は意を決する。


「……そうだよ」


「……!」


 リーゼは自分で聞いておいて、いぜ的中すると言葉を失う程、驚いていた。


「……す、すごい…………ど、どうやってドウマ様を従えて……」


【ぬ……】


 リーゼの言葉に、ドウマは少々、むっとした様子だ。


「リーゼさん、誤解しているよ」


「え……?」


「僕はドウマを従えてなんかいない」


 リーゼは目を丸くする。


「ドウマは……えーと……そうだな……」


(あ、あれ……、ドウマって……なんだろう……俺にとってのドウマ……)


「ドウマは……隙あらば、乗っ取ろうとしてくる厄介な奴であり……」


「……」【……】


「師匠であり……」


「……!」【……!】


「そして…………とても……とても大切な人だよ」


「……!」【……~~】


「…………界さん、やっぱり……とても信じられません」


 リーゼは俯き気味に呟く。

 だが、今度は顔をあげて、語りだす。


「……界さん、私は最初、界さんに……その無礼な態度を取ってしまっていましたよね?」


「え、えーと……どうだったかな?」


(……確かにちょっと冷たかったけど。無礼とは思わなかったけども)


「それは……きっと……界さんのことが、羨ましかったからです」


「え……?」


「界さんは、最強と呼ばれる鬼神ドウマ様の依代の子でありながら、そのドウマ様を従え……あ、失礼……えーと、うまくやってるじゃないですか」


(……うまくやれてるのかな)


「それで、界さんもご存知ですよね? 私の中にも……いるんです」


「……ひょっとして……ローレライさん?」


「そう、ローレライ」


 リーゼはヴィンターシュタイン家に代々伝わるとされる精霊〝ローレライ〟の正式継承者とされている。


 以前、リーゼはローレライをホムンクルスとして、具現化させる訓練において、失敗してしまったのだ。


 ホムンクルスとは、日本の〝魄術〟にあたる技であり、魔力を守護霊体へと変化させる技術のことだ。


「私は、ローレライの継承者でありながら、ローレライを具現化することもできない未熟者。なのに、界さんはあのドウマ様を制御下においていると聞いていた。界さんは訓練の時も、それにこうして夜も訓練をするような努力家なんだって今は知ってます」


(……う、訓練してたのもバレてたか……。ちょっと恥ずかしい……)


「それを知った今だからわかるけど、私はなんの根拠もなく、あなたを逆恨みしていたのだと思います」


「……」


「だから……ごめんなさい……」


(………………え? 女の子ってこんなに大人なの? 何、この適格な自己分析と謝罪まで……。ドイツのお国柄? 霊の審判者ガイストリヒターだから? それとも家柄のいいお嬢様だから? 俺が前世の6歳の時は……父ちゃんと母さんがいなくなって流石にちょっと荒んでたけど、その前はかっこいいオリジナルの技名とか妄想してるだけのアホだったと思うが……)


「そ、そんな……お気になさらず……」


 界はリーゼの大人っぷりに、恐縮するしかなかった。


「そ、それで……界さん……」


「はい?」


「恥をしのんで……お願いがあるのですが……」


「あ、うん。自分にできることであれば……」


「ありがとうございます」


 リーゼはぺこりと頭を下げると、唇を一度、結び、そして質問する。


「界さんは……どうやって…………どうやってドウマ様を落としたのですか?」


「へ……?」【……~~】


(……落とすとは一体?)




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