第35話 それ次やったらマジで〝これ〟だからね

「ほら、ここなら大丈夫だから」

「大丈夫だからって……ここは……」


 連れてこられたのはちょっと広めな個室。

 手すりがたくさんあって、手を洗う蛇口があったりする……部屋?


「しょうがないじゃん! 平川くんがそんな状態なんだから、とにかく見えないような場所に行かないとって思ったら……ここしかなくて……」

「ご、ごめん……そうだったね」


 どうやらこの世界では、男子が膨張してしまっている状態というのはかなりはしたないことらしい。

 

 元の世界でいうと……例えるのが難しいな。

 

 制服のスカートの裾が背負っているリュックに引っかかって、パンツが丸見えなのに全然気づいていない女子高生、といったところか……?


 うーん、ピンとこないな。

 俺自身が恥ずかしい状態にあるということは理解したけれど、元の世界でも公共の場で膨張している状態を見られることは恥ずかしいしな。

 ネタっぽく見えないということだろうか。


「……てか平川くん、まだ収まらないのそれ」

「えっ? あ、ああ、そうみたい」

「普通の男子ならしばらくしたら元に戻るはずなのに……なんでそんなに元気なのさ……」


 仕方がない。原因は凛々亜にもあるのだから。

 というか、凛々亜は普通の男子を知らないだろ。


 ここに来るまでの間、凛々亜が俺の俺自身が見えないように壁になって歩いてくれた。

 

 だが壁になるということはそれだけ密着するということ。

 風呂上がりのいい香りがする凛々亜の髪、胸元や脚まわりが緩い館内着、柔らかい身体――


 嗅覚、視覚、触覚から刺激を受けているのだ。そう簡単に収まるわけがない。


 あんなにフィジカルバカな感じだけど、凛々亜のやつしっかり『女の身体』なんだよな……

 出るとこ出て引っ込むとこ引っ込んで、柔らかくて――


「ちょっと平川くん、聞いてる?」

「えっ……あ、ぼーっとしてた」

「もう、こんなときにぼんやりしないでよ。とにかくソレ、どうにかしないと」

「あ、ああ、そうだな……どうしよ……」

「まあ私はお邪魔だろうから一旦外に出るね。収まったら戻って来て」

「えっ、ちょっと待ってよ」


 俺は凛々亜が出ていくのを引き止める。

 黙っていれば元に戻るかもしれないけれど、それでは再び膨張することもあり得る。

 

 ただでさえこの世界の女子は肌を見られることに躊躇いがない。

 緩い館内着を身にまとっている凛々亜が近くにいたら、刺激を受けてしまってまた同じようなことになりかねない。


 それなら一旦処理するしかない。

 でもおかずも何もないのに一人で処理するのは……


 そこで俺は閃いた。

 先程凛々亜との勝負で手に入れた『言うことを聞いてくれる権利』の行使だ。


 ロデオマシーンで一回使ってしまったが、まだ二回残っている。使うならこのタイミングだ。


「な、なに? どうしたの平川くん? まさか一人が怖いとか?」

「そういうわけじゃなくて、外ヶ浜さんにコレの処理、手伝ってほしいなって」

「なっ……何言ってるの平川くん!?」

「お願いだよ、一人じゃどうしようもないんだ。さっきの『言うことを聞いてくれる権利』を一回分行使するからさ」


 俺は両手を合わせて凛々亜へ頼み込む。


 元の世界の女子なら嫌嫌ながら仕方がないので手伝ってあげる……という感じになるのだが、ここは貞操逆転世界。

 凛々亜は「本当にいいの?」という感じのリアクションを見せる。


「で、でもここでおっ始めちゃったらさすがにバレるよね……」

「確かに。壁薄いし、外ヶ浜さん声大きいしね」

「う、うるさいなあ」

「あっ、あれならいけるかも」

「あれって?」

「挟み込んでもらおうかなって。外ヶ浜さんの胸で」

「――!?」


 凛々亜はびっくりして言葉を失う。

 ただでさえデカい瞳の凛々亜が更に目を見開いている。

 

 あっ……さすがに貞操逆転世界の女子とはいえ、これはドン引きされるやつかな?


 俺は不安になってしまい、先程の言葉を撤回することにした。

 

「い、いや、やっぱり今のなし。代わりに他の方法でも……」

「や、やるっ! ってかそういうの、エロ漫画の中の話だと思ってたのに、本当にできるなんて!」

「えっ、ええ……」

「というか、平川くん男子のくせによくそういうの知ってるよね。おまけに『言うことを聞いてくれる権利』を使ってまで私にやってほしいだなんて、やっぱりどスケベなんだ」

「そ、そういうわけでは……」

「否定しなくていいんだよ? 大丈夫、そんなことで平川くんのこと嫌いになんてならないから。むしろ大歓迎」

「お、おう……」

「ふふっ……じゃあ、とびっきり優しくするから……」


 凛々亜の口調は、元の世界のクズ男が女の子を引っ掛けるときみたいな甘ったるいものだった。

 シチュエーションに興奮してしまっているのか、彼女はヤる気満々だ。


 壁際に立たされた俺は、館内着のズボンを脱がされた。


 そのまま頬張りそうな勢いだったが、凛々亜は館内着のシャツを脱いでトップレスになり、自分の胸でそれを挟み込んだ。


「……どう? こんな感じ?」

「う、うん……すっごく柔らかくて……いい」

「ほんと? 私の胸、大きいだけでどうしようもないと思ってたけど、まさかこんな役に立つなんて」

「包み込まれる感じ……新感覚」

「へえー、案外エロ漫画も間違ったことを描写してないのかもね」

「うん……い、いいから、は、はやく動いて……」

「そんなにイイの……? じゃあ、遠慮なく……」


 凛々亜の胸がリズミカルに上下する。

 視覚的にも背徳感がすごいし、刺激も新鮮で脳が痺れそうだ。


 あっという間に限界のときが訪れる。


「ご、ごめん……!」


 俺は自分の意思で衝動を制御できなかった。


「あっ……やばっ……すごい……」


 もっと楽しんでいたかったが、相変わらずの早撃ちを披露してしまった。


 俺は特有の疲労感を感じながら、凛々亜の顔を見る。

 やけにうっとりしていた彼女の表情がとても印象的だった。


 ベトベトになった自分の胸を触っている凛々亜は、なんだか今までにないくらいとろけた顔をしている。


 ……もしかしてだけど、俺は凛々亜の新たな性癖を開発してしまったかもしれない。 

 確かに他の男子じゃここまでしないらしいからなあ。


 これで『言うことを聞いてくれる権利』はあと一回。


 何に使おうかなと考えているうちに、今日のところは解散となった。

 次の一回は、もっとここ一番というときに使おう。


 ちなみに、スマホの位置情報はずっとオンになっていた。

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