第3話
彼女は街の歩道をゆっくりと歩いていた。袋の中で微かに揺れる箱の感触が、彼女に安心感を与えている。周囲の景色は夕焼け色に染まり、ビルのガラス窓に映るオレンジの光がキラキラと輝いていた。通りを行き交う人々のざわめきや車の音が、遠くから響いているように感じられた。
「これを飾ったら……。」彼女は心の中で、また先ほどの想像を繰り返した。選んだミニチュアセットを部屋のどこに置こうか、他の雑貨とのバランスはどうなるだろうか。そんなことを考えているうちに、自然と足取りが速くなっていく。
ふと、彼女は足を止めた。小さなシナモン&ロールカフェが目に入ったのだ。店先には黒板の看板が立っており、手書きのメニューが可愛らしいイラストで飾られている。紅茶の香ばしい香りが風に乗って漂い、彼女を誘うように感じられた。
「少しだけ寄っていこうかな……。」そう呟くと、彼女は店の扉を押して中へ入った。
シナモン&ロールカフェの中は静かで心地よい音楽が流れていた。木製のテーブルと椅子が並び、壁には小さな絵や写真が飾られている。どこかで見たことがあるような、その穏やかな空間は、彼女の心をさらに落ち着かせた。
「いらっしゃいませ。」店員の優しい声が彼女を迎えた。彼女はカウンターに近づき、メニューをじっと見つめる。そこで目に留まったのは、季節限定の特製シナモンティーだった。
「これ、お願いします。」注文を済ませると、彼女は窓際の席に座った。袋の中のミニチュアセットが入った箱を膝の上に置き、そっとその角を撫でる。
注文したシナモンティーが運ばれてくると、カップから立ち上る湯気と共に優しい香りが広がった。彼女は一口飲み、ふうっと息をついた。ほんのり甘い風味が口の中に広がり、心の奥底までじんわりと温められるようだった。
窓の外には、薄暗くなった街並みが見える。人々が急ぎ足で通り過ぎていく中、彼女はその景色をぼんやりと眺めていた。
彼女はシナモンティーを楽しむと、会計を済ませて店を出る。シナモン&ロールカフェを後にして再び歩き出すと15分で家に帰宅した。彼女は真っ直ぐ自分の部屋へと向かった。部屋に着くと、まずは電気をつけ、袋からミニチュアセットを取り出した。箱を開けると、そこには想像以上に精巧な作りの小物たちが並んでいた。ひとつひとつを手に取り、組み立てていくうちに、彼女の心はさらに高揚していく。小さな世界を自分の手で創り出しているような感覚だった。
完成したセットを棚に飾り、その横にお気に入りの本やキャンドルを置く。彼女は少しだけ後ろに下がり、全体を眺めた。そして思わず笑みがこぼれる。「うん、いい感じ。」
部屋に満ちる温かい灯りが、彼女の未来を照らしているようだった。
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