2キス♡暗殺とデート

「ん〜〜〜♪

よく寝た!

おっはよう!」


バルコニーの手すりから城下を見下ろして朝の挨拶をしてみる。


雲ひとつない爽やかな青空の下、気持ちよく背筋を伸ばす。

太陽を見上げて思いっきり息を吸い込むと空気がおいしい。


「おお〜! 今日も守護竜ちゃんが気持ち良さそうに都の上空を優雅に飛んでるね!」


聖なる守護竜に守られた聖王都ルパ。

この世界でもっとも勢力を誇る大国ルパの首都だ。

東側のほぼ中心にそびえる聖なる王城。

王女であるわたしは王宮の最上階にある部屋を数室与えられている。


そして対極に位置する西側には神が創造したと言われる巨塔が天を貫いている。

貫くって言ってもそれくらいに高いということなんだけど、実際に見上げるとてっぺんは見えない。

足元には国教でもある聖皇教会の本部、神々しさ抜群の神殿がある。


地平線まで広がっているとも思えるくらいに広大な城下には、商業エリアや工業エリア、住宅エリアなどに別れ、時代を追うごとに都市開発が行われている。

都市の外側にはさらに広大な農場が広がっていて、耕種農業、畜産農業ともに盛んだし、地方や他国からも物流があるので色々な意味で国民が飢えることはない。


南側の海岸線には貿易港や漁港はもちろん軍港も備えている。

もちろん陸地にも軍事施設はあるけれど、ここ十数年は動乱や国家間の争いもなく平和な世が続いている。

大規模な魔獣退治なんかにも軍隊が必要になることがあるし、有事に対応できるように軍事訓練は日頃からしているみたい。

とはいえ、平和を過ごす軍人たちはどうしても気が緩みがちになっていると国王であるパパが嘆いていたのを覚えている。


この都市の最大の特徴は魔導科学がとても発展していること。

都市の整備も行き届いていて、水路や上下水道も完備。

都市計画も過去にしっかり見直されて区画や公道も整然と張り巡らされている。

ここからはよく見えないけれど城下では多くの人たちが息づいて、毎日の生活を謳歌しているはずだ。


でもね?

これだけ大きいとさ?

良いことだけじゃなくって良くないことだってあったりする。




「今日もいい天気だね!

絶好のデート日和だよ!」


「サラ様、本日のお召し物はいかがしますにゃ?」


寝室に戻るとわたしのかわいい侍女が待ってくれていた。


「そうだねえ♪

今日は商街区で食べ歩きデートをしたいし?

いっぱい買い物をする予定だし?

ミンケちゃん、街歩きコーデでお願いしてもいいかな!」


「本日は養護施設の視察もございますにゃ。

お忍びとはいえ平民服ではにゃく訪問用のドレスがいいと思いますにゃ!」


ばさっとシンプル清楚なドレスを両手に掲げるもふもふ。

にゃんこ耳がぱたぱた、にゃんこしっぽがぶんぶん。

くりくりの栗毛と白毛に瞳はまさに猫眼金緑石クリソベリルキャッツアイ

趣味丸出しのゴシックロリータに身を包んだ、わたしに仕える獣人にゃんこ娘の侍女。

背が小さいのに無理やり高く持ち上げるもんだから全身がプルプル震えてる。


「ミンケちゃん……きゃぅわいい〜!

なんてかわいいの!

なんてもふもふなの!

くふぅ〜〜〜!

なでなでしてもいい!?」


「く、苦しひでふ!

もう力いっぱいもふもふしてますのにゃ〜。

そんにゃことより早く朝食も召し上がって欲しいのにゃ。

せっかく料理長が心を込めて作ったスープが冷めてしまうにゃん」


「ミンケちゃん、よだれ垂れてるよ?

運んでるお皿にこぼれ落ちそう!

どれどれ?

くんくん……

なるほど、魚介の旨みがたっぷり詰まったスープドポワソンだね」


刻んだ香味野菜とぶつ切り白身魚など数種類をしっかりフレーク状になるまで炒め切る。

そこにトマトペーストやお酒、香辛料をどっさり入れてしっかりぐつぐつ煮溶かすまで数時間かけて煮込む。

すり潰しながら漉し切ったスープを前回ストックしておいたスープストックに半量合わせる。

今回と前回のを合わせることでお魚さんの種類が増えて旨みがアップするっていうもの。

こんなの濃厚美味しいに決まってる♪


「ほらほら、ミンケちゃん。

あ〜ん♪」


スプーンにすくったスープをかわいい鼻先に持ってくと?

ぱっくん。

ミンケちゃんのお顔がとろけてる♪


「ふふ。

もう一回♪

どんどんいっちゃお〜♪」


ちぎったパンもスープをつけて放り込んじゃう♪

表皮はパリッとしていて内側はもっちり。

独特の香りと酸味がある全粒粉のパン。



「んにゃ!?

サラ様の朝食を食べてしまったのにゃ!?

しかも全部あ〜んでにゃ!?」


「全部食べちゃったね〜!

お子ちゃまなミンケちゃんのぱっくんな幸せに、わたしは大満足だったよう♪」


「んにゃ〜。

今日もサラ様の甘やかしに負けてしまったのにゃ〜。

サラ様、ちゃんと食べにゃいとお胸に栄養がいかにゃくにゃっちゃうのですにゃ」


「はうっ!

あとでちゃんと買い食いするから大丈夫だよ!

それじゃあ着替えよろしく〜!」



「はい。きっちり髪も結い上げて清純に仕上げましたにゃ!

ミンケの仕事がとってもかわいく綺麗にゃ!

ペンダントヘッドに真珠が清楚なネックレスにするにゃん♪」


「毎日ありがとね!

それじゃあ、行ってきま〜す」

「行ってらっしゃいませにゃ〜」


おでこにちゅ〜したらとってもうれしそうに照れてくれた♪





「ごめ〜ん!

待ったあ?」


「……いえ。

約束の時間より一時間早く着いただけですから」


「一時間も!?

今までで一番長いね?

ほんとに早すぎだよ〜。

いくらぽんこつだからって、そんなに早く到着しなくてもいいんだよ?」

「自室を出たのは三時間前です」


「二時間、なにをしていたのかな?」

「……聞かないでください」


「わかった!

でもさ!

わたしのために遅れないように出発してくれたってことだよね!

約束をちゃんと守ってくれてうれし〜!」


「抱きつかないでください」

「やだ」

「日中の勝負の時間は始まってます。

無理矢理は好感度だだ下がりですよ?

離れてください」


「しょうがないなあ。

今日こそわたしのことを好きになってもらうからね!」

「嫌です」


嫌ですとか言いながらわたしの好きの言葉にふいっと顔を背けてる。

表情は見えないけどきっと顔を赤らめてると想像する。

ほんとにかあいいなあ。


「さあ、今日も楽しい勝負デートの始まりだね♪」


なんて感じで毎日が夜と昼の勝負。

ことの発端は一ヶ月前。


この国の王女であるわたしが公爵令嬢のリーリエに暗殺されたことから始まる。

そう!

わたしは一度、暗殺されてしまっているのだ!

死因は心臓への刺し傷。

凶器は刃渡りの短い諸刃の短刀、つまりダガー。

就寝したところ、忍び込んだリーリエにサクッと殺されてしまったのだ!


わたしは苦しんだ!

いや、死んでたみたいだから苦しくないんだけどね?

なんていうか魂がこう?


そんでなんかね?

暗い中で苦しんでるところにね?

女神様が現れたわけよ!

ぱあっと神々しい光が輝いてあたりは真っ白になった。


「なにごと!?」

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