こたつ姫――「誰でもいい……姫をこたつから出してくれ!!」

卯月 幾哉

第1話 はじまり〜タツコ姫、こたつと出会う〜

 これは、むかしむかしに北の王国で起こったできごとのお話です。


 北の王国の冬はひどい寒さで、国中が雪におおわれてまっしろになります。また、そんな寒い冬がとても長く続くのです。


「寒い……寒いわ……」


 そんな北国で生まれ育ったタツコひめは、寒いのが大の苦手でした。

 大きくなれば、そのうち体がなれるだろう。父親の王さまはそう思っていましたが、タツコひめが十才になっても、彼女の寒がりは全くおさまるようすがありませんでした。


「かわいそうにのう……。そうじゃ! だれか姫の寒がりを解消できる者がおらぬか、ふれを出してたずねてみよう」


 王さまはそんな思いつきから、国中におふれを出すことにしました。


 数日後、おふれを見てやって来たのは、ちまたで人気の魔道具まどうぐ職人です。

 魔道具まどうぐとは、魔法まほうのしかけによって色々な効果を表す道具のことです。


わたし画期的かっきてきな発明品をごらんあれ! これがあれば、ひめさまの寒さもやわらぎましょう!」

「ほう……。これはめずらしいテーブルじゃのう」


 その職人が、最近開発したという魔道具まどうぐ

 それが「こたつ」というものでした。

 四角いテーブルにふとんを取りつけたようなその魔道具まどうぐは、たしかにそれまで王さまが見たこともないような物でした。


「あたたかいわ……。まるで日だまりの中にいるみたい」


 こたつの温かさを体験したタツコひめは、たちまちそのとりこになりました。


「パパ。わたし、これ気に入ったわ!」

「おぉ、そうか! 良かったのう」


 王さまはそれを喜び、その場でひめにこたつを買いあたえました。


「ありがとう、パパ!」


 こたつの中で顔をほくほくとさせるひめを見て、王さまも顔をほころばせました。


 これにて一件落着――……とは行きませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る