ヒロインに攻略された攻略対象しかいない乙女ゲーに転生した〜孤立して国外追放されそうになっている悪役令嬢が可哀想だったので救ってみた〜
皇冃皐月
プロローグ
「な、なによ。その平民がいけないんでしょう? 平民風情でありながら、オラン様に馴れ馴れしくして。どうせ魅惑の魔法か何かを使っているのよ」
金色のくるくるカールをゆらゆら揺らしながら、目の前に立ちはだかる美男たちと美女一人に向かって堂々と言い放った。
「ティアレ。アルジェだって学園の生徒だよ。ここにいる以上、みんな平等。平民とか貴族とか気にしちゃダメだよ」
「そうだ。フェルの言う通りだ。貴族……それも公爵家の令嬢であるお前が平民差別をするのは些かどうかと俺は思うぞ」
「オレはフェルやレオンみてぇーに聡明じゃねぇーからそれらしいことは言えねぇけど。ただティアレの言ってることが間違ってる。それだけははっきりわかる」
緑色の髪の毛が特徴的なカワイイ系のフェル、黒髪にメガネでまさに知的な印象を相手に与える風貌のレオン、そして赤い髪の毛で筋肉質なポルト。
「揃いも揃って擁護でして。平民の魅惑に打ち負けるだなんて貴族としての意識が足りないのではなくて?」
「なに……っ!」
「ほらほら、落ち着いて。ダメだよ、ポルト。手出しちゃ」
「……っ」
誰がどう見ても頭に血が上ったというような反応を見せたポルトをフェルが窘める。
「オラン様は魅惑されておりませんよね?」
「……魅惑なんてものはない。そうだろ、ティアレ」
「え、ええ……知りません。私魅惑とかそんなの知りません」
ティアレと呼ばれる彼女は首を横に振る。
「だそうだ。俺はティアレを信じる」
青髪のオランは彼女の言葉を簡単に信じた。
教室で繰り広げられる押し問答。
それを私はぼーっと見る。見守る。
私にとってこの光景はあまりにも見覚えのあるものであった。
目の前にいるキラキラした人物たち。彼ら彼女らは私がやり込んでいた乙女ゲー『まほラブ』のメインキャラクターたちだ。アルジェという子は『まほラブ』のヒロインで、その周りにいるキラキラ男たちは攻略対象。彼らと対峙している金髪令嬢は所謂悪役令嬢というやつだった。
今目の前で繰り広げられているのはゲーム終盤のイベント。ここでオラン。この国の王子様の好感度が高いと、悪役令嬢であるティアレは紆余曲折を経て国外追放となる。
何度もプレイしてきた。何度も経験してきた。
けれど妙にドキドキする。
理由は多分単純だ。
私はゲームをプレイしているのではなく、この世界で生きているからだ。
意味がわからないと言われるかもしれない、それは私もそうだ。私だって意味がわからない。わからなさすぎて困っている。
所謂異世界転移というものをしてしまった。
乙女ゲーの世界に。
しかもヒロインであるアルジェでも、悪役令嬢であるティアレでもなく、私が転生したのは名も無き少女。モブキャラってやつに異世界転移してしまった。
こういうのってさ、普通ヒロインか悪役令嬢だよね。
乙女ゲーをプレイしている時には悪役令嬢のティアレなんてクソ喰らえ。ヒロインの邪魔ばかりいつもして、うざいし、キモいし、さっさと退場して欲しい。そう思っていた。
だが、いざ目の前で多数から糾弾されている姿を見ると、なんというか可哀想と思えてしまう。今までの行いを考えれば自業自得……なはずなのに。同情してしまう。
「平民風情が。王族さえも魅惑して操るとはなんたる大罪。皆様が味方になろうとも、わたくしは絶対に許しませんわよ」
「おい、ティアレ。それ以上はやめろ。それ以上口を開くのなら、俺は親父にぜんぶ言うぞ。今までのことも、今回のことも」
「そうですか。ぜひどうぞ。わたくしの正当性が認められるだけでしょうけれど」
オーッホッホッホと笑う。
けれどこれがティアレの破滅。
この後、ティアレは取り調べを受けることになる。そしてティアレは正当性を勝ち取ることができず、国の、公爵家の、貴族の品位を下げたとして国外追放となる。
それが私の知っているシナリオ。
あまりにも可哀想だ。
ゲームをしている時はヒロイン目線でプレイするので何も思わなかったが、こうやって見ているとティアレが弱いものいじめされているように見えてしまう。
自業自得。
だけれど見るに堪えない。
「お、お、おかしい……です、よ。学園を持ち出したのなら、学園で完結させるべきです。オラン様のその発言は平等を謳うものとしてあるまじき……発言かと、思ったり、するわけで……」
勢いに任せて飛び込んでしまった。喋れば喋るほど、今私はとんでもないことをやらかしたんだという思いが強まって、言葉の強さは尻すぼみになっていく。
「ふん、地方貴族の分際でなにを偉そうに言っているのかしら。けれど見る目はあるわね」
「……すまない。たしかにアルメリアの言う通りだ。さっきの発言は短慮だった。撤回しよう」
擁護したはずのティアレに言葉で殴られ、攻撃したはずのオランに擁護されてしまった。
な、な、なんだこれぇ〜。
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