第五十三話 ドキッ!女だらけの温泉回

「ふぐっ...」


顔の上に何かが乗っていて息苦しくなった私は目を覚ました。


「ふわぁ〜、なんだステラか」


すやすやと眠るステラを顔から剥がしてベットにゆっくり降ろし布団を被せる。二度寝をする気分でもなかったため宿から出て少しだけ散歩することにした。


「あ、そういえばバックと魔銃無くしたままだった...いいや、ついでに探しに行こっと」


いつも入れているバックがないため魔導書パンドラをシャツとズボンの間に挟んで私は外へと出た。


「うぅ〜ちょっと寒いな」


次に行く国は確か寒いんだっけと体をさすりながら遺跡の方へと向かうとなにやら騒がしく私の足取りは自然と早くなった。


「だ・か・ら!この素材は俺達が使ったっていいだろうが!」

「ダメですぅ〜、これは先生達のものですぅ〜」


どうやら言い争いをしていて一人はアリーさんでもう一人は初めて見る人だった。

人だかりが出来ていたが私だとわかるとみんな道を開けて通してくれた。近くへと行くとセチアさんがいたので事情を聞くことにした。


「セチアさんおはよう、何があったの?」

「貴殿か、実はな...」


彼女はここまでの経緯を話してくれた、どうやらあの黒き龍の死体をどうするかで揉めているらしい。

セチアさんがいる、北の郷は私たちに明け渡そうとしていて、東の郷を納めているアールさんは使わないなら寄越せと言っているらしい。

正直、私たちが貰ってもしょうがないんだよね、邪魔だし。こんな大きなもの持ち運ぶなんてしたくない。


「どうする、君が決めてくれるのが一番いいんだが」

「これって売ったら幾らぐらい?」

「そうだな、多分働かなくても良いぐらい...か?」

「...そっか、少し待ってもらっていい?私が勝手に決めるわけにはいかないし」

「わかった...だそうだ、しばらくコレに手を出すな!」

「チッ、わかったよ」

「先生〜、怖かったですぅ〜」

「うっ!」


この人背骨を折るつもりなのってぐらいに抱きしめてくるのなんで?

すぐさま剥がすとアリーさんはなんか悔しそうな顔をしたが私は探し物を探しにきたんだ。


「何か探し物ですか?アリーも手伝いますぅ〜」

「探し物というのはコレか?」


セチアさんは木に引っ掛けてあったバックを渡してくれた。


「これこれ!え、どこにあったの?」

「龍の背中に引っかかってたんだ、おそらく水が競り上がってる一緒に流れたんだろう」

「うわー、ありがとう!」


中身を確認すると魔銃と強化パーツも全部入っていたけど、当然のことながらクティちゃんの礼装はなく、調味料は全部ぶちまけられていたため中は変な匂いがする。


「うぇ〜、一緒に入れてたの忘れてた」


匂い取れるかな、取れなかったら気になってしまう。

でも、取り敢えず見つかっただけマシと思うことにしよう。


「どうした、浮かない顔して何かなかったのか?」

「いや、なんでもない」

「そうか...ところで、昨日のアレは本当なのか?」

「アレって?」

「その、君とあのエリシア嬢が婚約している、と」

「へ?何それ!?してないしてない!」


身に覚えのないことに勢いよく首を振って否定する。

寝たあとそんなことになってたの!?


「ということはぁ〜、先生はフリーって事ですよねぇ〜」


アリーさんが近づくてヒュンっと私たちの間に見覚えがある杖が突き刺さった。どうやらエリシアちゃん達もここに来たみたいだ。


「コナミ大丈夫ですか?」

「え、エリシアちゃん...危ないよ?」

「平気ですよ、あなたに当てるようなヘマはしませんから」

「ひいいい!」


それってアリーさんを狙ったって事?

近づくなり彼女は私の背中へ回って盾にするように隠れた。


「どうやらまだわからせが足りなかったみたいですね」

「待って待って!別に私は何もされてないから!落ち着いて!ね?」


エリシアちゃんを落ち着かせるために抑えると、少し考えて「わかりました」と、言ってくれた。

もう大丈夫だよと、伝えようとしたけどアリーさんは気がついたら何処かへと姿を消していた。


「コナミ殿、バック見たかったでござるな」

「うん、あの龍の背中に引っかかってたみたい」

「それは幸運ね」

「...でも」

「でも?」

「クティちゃんから託された礼装が...」


するとステラが鳴き声を上げてコノハちゃんのマフラー引っ張り始めた。


「ステラ、何するでござるか!これは拙者の大切な...あっ!」

「あら、これ」


マフラーの陰から礼装が出てきた、けど...


「...破れてる」


上半分だけが見つかったのだが、下半分は破れてしまっていた。念の為コノハちゃんにマフラーを取って確認してもらったがもう半分は見つからなかった。


「ごめんクティちゃん...」

「きゅ〜!きゅきゃ?」


落ち込んでいる私にステラは慰めてくれているのか擦り寄って「大丈夫?」と、心配してくれているようだった。


「ふふっ、ありがとう。元気出たよ」


私は気持ちを切り替えて、みんなに黒き龍のことについて話した。


「そうね〜、売って懐を蓄えるのも悪くないけど、あなたは何か考えがあるのでしょう?」

「うん、私は売ってコノハちゃんの里に寄付しようと思ってるんだけど...どうかな?」

「良いでござるか、もっと自分のために使ってもよいのに...」

「これが私にとっての「自分のため」だから、使って?」

「ーー!そうだ、お主はそういう人でござったな...では、ありがたく使わせて貰うでござる」


これを売り払ったお金はギルドを通して紅の里へと寄付する形となった、東の郷の人達は不満そうにしてたけどね。これをどうしようが私の勝手なのでどうこう言われる筋合いはない、ないよね?


「そうだ!この水」


もう一つの目的であるアレを忘れるところだった、龍の死骸の近くにある水溜りに手を入れた。

やっぱり丁度いい温度、これは温泉だ。


「ちょちょ!ストップ!」

「どうしたの?」

「なぜ脱ぐ!?」

「なんでって、今からこの温泉に浸かろうかなって」

「だからと言って今脱ぐな!...貴様ら早く去れ!」


するとガサガサ音を立てながらどこかへ行ってしまった、危なかった人いたんだ。


「あ〜、確かにここだと安心して入れないよね...みんなもこう言う時あるよねぇ〜?」

「急にどうしたの?」

「そんな時はコレ!岩の加護!」


岩の加護状態になり、ボクは温泉を囲うように壁を作り出し露天風呂が完成した。


「よし、これで入れるね」

「...本当に入るのか?」

「もっちのろん!そいじゃあ一番風呂をいただくとしますかね〜」

「さっきから誰なんですかソレ」

「...コナミちゃん、少し待っててもらっていいかしら?」


いいよと、伝えるとヴィルさんは壁を越え足早にどこかへ行ってしまい、数分後タオルとお酒を持って帰ってきた。


「みんなの分のタオル持ってきたわよ、みんなで入りましょう?」

「こんな朝から飲むの?」

「いいじゃない、こんな機会滅多にないもの」


飲みすぎないように見張っとこ。


「じゃあ失礼しますっと...ふは〜、いい湯だな〜」

「これは、蕩けるでこざ〜るな〜」 

「露天風呂でお酒も悪くないわ〜」

「エリシアちゃんとセチアさんは入らないの?」

「うっ...その、人前で裸になるのはちょっと」

「...左に同じだ」


二人は何故かこっちを見ようとしないんだけど、なんで?

日本じゃ普通なんだけどな、まあ人によっては恥ずかしいとかあるか。無理強いは良くないもんね。


「そっか、じゃあ上がったら一人ずつ入りなよ?私たちが見張っとくからさ!」

「...ええ、そうします」

「...ああ、わかった」


最近は水浴びだけだったし、今はゆっくりと堪能しよう。

しばらく寛いでいると私はふと気になった、目の前にある二つの大きなメロンに。

自分のと見比べるとそれ月とスッポンぐらいの差だ。


「あら、どうしたの?あたしのコレに目を奪われちゃった?」


うおっ、揺れて跳ねたお湯が目に!


「ーー!あ、あの!コナミはやっぱり大きい方が好きなんですか!?」

「え、う〜ん、どうだろう」


正直言って胸の大小は別に気にしてはない、ただ単に世界は理不尽だと思い知らされているだけ...ホントダヨ。


「確かにあった方がかも知れないけど、女の子は胸じゃなくて愛嬌だと私は思うな」


もちろん嘘偽りない本音だ。胸なんて、ただの贅肉だよ!贅肉!


「あら、そう言いながら羨ましそうに見てるじゃない」

「みっ、ミテナイヨー!別に気にしてないとかじゃないもん!」

「試しに、揉んでみる?」

「...別に気になるとかじゃないけどお!?そんなに言うならお言葉に甘えて!」


ゆっくりと水面に浮くメロンへと手を伸ばした途端、私の視界に水飛沫が上がって目の前にエリシアちゃんが浸かっていた。


「後で入るんじゃなかったの?」

「も、揉むならわたくしのはどうですか!?」

「逆にいいの!?」

「あら狡いわよお嬢ちゃん、コナミちゃんはあたしのを揉みたいって言ったのよ?ねえ?」

「揉むならわたくしぐらいが丁度いいんです!ね!コナミ!」


同意を求められても揉みやすい大きさなんて知らない、助けを求めるべくコノハちゃんの方を見ると彼女はいなくなっていて何かの棒が浮かんでいた、どうやら潜ってその場から逃げたみたいだ。

こうなったらもう上がるしかない、バレないようにそーっと出よう。


「貴殿らは毎回こんなことをしているのか?」

「ちょっと待って、変な誤解しないで!?」

「なら我も...」


そう言うとセチアさんは私の後ろに入ってきて、すっかり逃げ道を塞がれてしまった。


「わ、我はそこまで大きくはないが...どうだろう、その...揉みごたえはあるのではないか?」

「うそーん!逃げ場なし!?」


確かにセチアさんの胸は二人と比べたらない方かもしれない、けれど私にはない立派なものを持っている。

これが世の男性だったらなんとも羨まけしからん状態かもしれないが私はそんな思春期男子みたいな感情は持ち合わせてはいない。

そうこう考えている内に頭にはセチアさんの、左腕にはエリシアちゃん、右腕にヴィルさん、六つのメロンに挟まれた私はまるで宇宙猫のような空間に意識を持っていかれた。


「や、柔らかいです...」


それは!もう!とても!柔らかい!

揉んではいない、だが感触は残っている!頭に!腕に!なんかもう!ね!ね!!

私には絶対届かない領域だと思い知らされてます!!

こんなん照れちゃうから!!


「あ、上がります!もうムリーー!」


足早に私はここから逃げて森の中へと逃げた。

流石にメロンはもうお腹いっぱいだ!


「はあ〜、少し揉んでおけば良かったかも...いやいや!何考えてんの私!?」


温泉に浸った後は感傷の海に浸っていると、「うわっ!」と、ビックリされてしまい、顔を上げると声を出したのはリエラちゃんだった。


「えーっと、何してるの?」

「...メロンに襲われて」


なんともいえない顔をして、「そっか」とぼやく。

そうだよね訳わかんないよね、すると彼女は隣に座って私に何か言いたそうにしていて、少し悩んで口を開いた。


「あのね、貴方にお願いがあるんだけど」

「何?」

「お姉ちゃんをあなたの旅に連れて行ってくれないかな?」


まさかのお願いに私は息を呑んだ。


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