第八話 不穏への亀裂

『この手紙を読んでいるということは以下同文、これはおそらく君が旅たってノーマン町にて最初に手に入れた手紙だろう、仲間は出来たかな?それとも1人で旅をしてる?どちらにせよ君の旅はきっと困難な事ばかりだろうがそれも旅の醍醐味だ楽しむといい。

 そして君に渡した魔導書パンドラも少しは覚醒してるはずだ...前回書き忘れたが覚醒すれば君の記憶が必ず戻るわけじゃないし手紙も同様だ、この2つはあくまでヒントだからね。

 今の小波の記憶を思い出すきっかけは私にもわからない、だが君なら全ての記憶を思い出せると信じている、だって君は戸村小波なんだから。

 次は王都・ゼルネティアへと向かうといい、そこに次の手紙がある...と思う。

 P.S 今回は爆発しないから警戒しなくていいよ』


 ・・・


 窓からの月明かりに照らされ眩しかったのかコナミは目を覚ますと隣のベッドで寝ているエリシアを起こさないよう身支度をして宿を出るとノーマン町の観光スポットで有名な灯台へ向かった。

 灯台の下に設置されているベンチに腰掛けるとヴィルから受け取った手紙を改めて見返して魔道書パンドラを見ると確かに『希望の大剣』以外にもいくつか覚醒していたが自然とため息を吐いた。


「いつ頃出てたんだろう、それにしても...」


『水の加護』

『泳げない君もたとえ溺れてもコレがあれば安心』

『全ての調味料の頂点に立つ塩』

『どんな食べ物にも塩や、塩を振りかけろ!』

『釣り竿をぐらい長い槍』

『戦闘洗濯干し釣り、万能槍とはこれのことよ!』


「...なんか雑、水とか槍はまだわかるけど塩って、まあ役には立つけどさ...こう...あるよね、もっとこうなんかさ...『希望の大剣』と落差がひどいよ...」


 試しに塩出してみよう、と大剣を出した時と同じ感覚で手をかざしてみるが無反応だった。

 自分の記憶の片隅にある塩を使っていた時の感覚を思い出して次は魔導書パンドラを振り掛けるようにやってみると塩がパラパラと出てきて手に少しだけ付けて舐めてみるとしっかりと塩だった。


「うん、塩!!」


 まあこれはこれで、と納得しつつすっかり目が覚めてしまったためしばらくここで海を眺め日の出でも見ようとゆっくりしていると酒瓶を片手にヴィルがやってきた。


「コナミちゃん夜更かしはだーめ、身長伸びないわよ?」

「...お酒くさいんですけど」


 息をするように隣に座ろうとしたが、あまりの酒臭さに間を開けるようにベンチの端に座ろうとしたがヴィルの尻尾に絡まれ隣に動けなかった。

 お酒の匂いが凄すぎてじたばたと逃げようとするが抜け出せず諦めると帽子を取られた。


「やっぱり狐族なのね」

「か、返してよ!」


 ポフっと素直に帽子を返され拍子抜けしてると何事もなかったかのように酒瓶を元気にラッパ飲みしていた。

 なにもないの、と見ていると目が合い彼女はただ微笑んでいるだけだった。


「なに、何かして欲しかったの?」

「...てっきり殺されるかと思った」

「そんな物騒なことしないわ、ほんっとコナミちゃんは小さくてかわいいわね」

「ち、小さいって言わないで!まだ成長期がきてないだけだから、今はまだ本気出してないだけだし!これから伸びるよから!」


 記憶を少しだけ思い出したコナミはどうやら自分が小さいのはコンプレックスだったらしい。


「見てなよ!コレからヴィルさんぐらい大きくなるから!」

「あらあら、それは楽しみね〜」


 ちなみに2人の身長差は40cmだ、恐らく無理だろう、ヴィルは微笑ましく強がるコナミを撫でながら酒を飲み干すと絡んでいた尻尾が力が少しだけ抜け、その間にコナミは抜け出した。


「あら空になったわ」

「なんかみっともないよ...」


 空になった瓶を逆さまにして最後の一滴まで味わい尽くそうと酒好きここに極まれりといった感じをみてドン引きのコナミだった、そんな中1人の男が苦しそうに近づいきた。


「あ...うぁ....」

「だ、大丈夫!?」

「...!コナミちゃん、近づいちゃだめ!」

「へ?...ぐえっ!!」


 服をグイッと掴まれ無理矢理後ろへ引っ張られ近づいた男を見るとそいつは剣を振るっていた、すると男は苦しみだし背中から腕が続々と生え、首からは火傷や殴られた跡がある顔が2つ飛び出した、その姿はまさに異形だ。


「ごほっ、ごほっ...なにあれ、グロ...」

「なんなのこいつ!?」

「「「うがああああ!!!!」」」

「う、うるさっ!」


 異形は咆哮をあげて灯台を殴りつけると、この町のシンボルの灯台が無常にも崩れ落ち近くの民家に落ちて行き辺りは悲鳴で溢れ一瞬のうちに平和だった町が崩れ去った。


「なに...してくれてんの!!」

「「「うがぁ!!」」」

「うっそ...やばっ!」


『希望の大剣』を取り出し、斬りかかるが異形の方も剣で受け止め力で押し切ろうとしたが他の5本の腕も剣を持っており斬られそうになったが突然異形の腕が凍る、氷の出どころをみるとヴィルが氷で槍を造ってコナミを助けてくれた。


「あっぶな〜、ありがとう!」

「考えなしに突っ込んだらダメよ?」

「「「うおあ!!」」」

「てやっ!!」

「ふん!!」

「フッフッ、ハッハハハ!どうやら実験は成功のようだな!」


 コナミは大剣でヴィルは氷の槍で闘いながら高笑いが聞こえ上を見上げるとそこにはドラゴニュートのヴィルとは違う禍々しい角と翼を生やした男...魔族が見下ろしていた。


「そいつらはこの僕が作り上げた最高傑作だ、そこの3人は死に際ですら離れたくないと言っていいてね、だからずっと一緒にいられるようにしてやったんだ...僕ってば優しいとは思わない?」


 騒動の原因となった魔族と改造され異形となった人間が2人に襲いかかる。

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