暇奈留有機の大冒険新装版
ぶよっと猫背
第一話「ナイスガイ異世界に行く」
新装版に向け分割誤字排除加筆しました。
“ホーエバープロミネンス宣言”
諸君、吾輩は旧スクエア派ベイグラン党党首、暇奈留有機である。
この物語は、異世界にて二千年の時を超え、美女三名と吸血鬼一名に囲まれながら世界を救った男の記録である。
読者諸君、準備は良いか?
星評価を押す覚悟はあるか?
よろしい……
ならば、開幕だ。
―――、エターナルあらすじ、―――
酔っ払いゲーマーが女神をボコって悦に入っていたら、画面の中から異世界転移。
これは、理不尽と笑いとチートと懲罰が混ざった、俺様式異世界転移譚である。
読者よ、覚悟せよ。これは“異世界転移”の皮を被った“俺様懲罰ギャグ地獄”である。
……それは理不尽が始まりであ~る……
―――、その日の俺様は酒を飲んでいた、―――
じゃぶじゃぶと飲んでゲハハハと笑う。
数年前発売された当時「最高難度」と謳われた某アクションRPGゲーム。
「ストレイエッジ」をプレイしていた。
隠しボスを最高難易度で挑み、こちらも装備強化・レベル共にカウンターストップまで育てている。
いざ勝負っ!
と言う訳で、一対一で最強の隠しボス『闇の女神』と戦っていた。
長い戦いの果て酔っ払いである俺様が操る最強剣士が闇の女神を切り捨てた。
これであとはラスボスを叩き潰せばCG美しい隠しエンディングを見れるわけじゃ~~
そのエンディングを録画してゆっくり鑑賞したら今日は気持ち良く寝ようと決めていた。
その為に最強隠しボスを切り伏せたわけじゃん。
本日の戦闘チャレンジ回数は最強を相手に一回で済んだ。
回復アイテムの使用は四回で済んだ。
隠し最強ボスとの戦いは余りにも俺様の描いた絵図通り攻略できて気分が良かった。
―――、気分よくそのまま戦闘を最初から最後まで録画していく、―――
戦闘はじめと戦闘終わりに主人公を操りポーズを決めてみたりした。
この映像取るために都合二十日をかけた。
酒とエナジードリンクと徹夜の繰り返しでだいぶ精神がハイテンションかつ眠くなっていた。
気分は上々。
戦闘は終わり。
後は闇の女神の意味深な負け惜しみを聞けば終わりなのだが今回は違った。
「ふえ~んナニコレっ!理不尽だようッ!!お兄ちゃん助けて~~!」
「え?」
俺様はぼんやり口から言葉を零し画面に釘付けに成った。
凛々しい最強の女神はそんな事は言わない。
予定では画面内で……
「貴様、その力、王から受け継いだか……」
みたいなことを言うのだが……
今回は甘ったれな妹風味に情けなくも半泣きに……
「ふえ~んナニコレっ!理不尽だようッ!!お兄ちゃん助けて~~!」である。
ポカンとしつつも俺様はぐびりとチューハイを一口飲んだ。
う~ん梅味アルコール度数九パーセントは最強!
そんな感想と共に画面向こうの珍事を見つめる。
大型モニター内では呼び出されたショタ兄貴が「どうした妹よっ!」と言い。
それに返事を返し妹の闇の女神がこう言う。
―――、其れは変な会話劇だった。
「お兄ちゃんっ!酷いんだよっ!この人、私と言う怪我人をっ!手足が義手義足な私の寝込みを襲って勝ち誇っているのっ!」
ハードな作品世界を壊すなと言いたい、ぶりっこ辞めろ。
「それは許せんな」
いや同調すんなよ。ショタ兄い……
「そうっ!これで千跳んで二十七回目!理由は私をコテンパンにぶちのめす華麗な映像を取りたいからっ!!」
何故知っている女神様……
「何だそれは?我らの拠点を襲い秘宝を奪うだけでは飽き足らずそんな恥辱を妹の貴様に与えるとはッ!」
まあ、ゲームだから許してよ。
「そうだよっ!この人っ三十七歳のニート以下の引きこもりおじさんっ!」
あっ致死量です。
「お仕事もしないでゲームのテクだけで女神の私を延々と虐めたのっ!」
オーバーキルっ!死体撃ち!
辞めてライフはゼロよっ!
「それで私を倒す意味も分かっていないのっ!」
……しくしく……
……五月蠅いよ……知らんて……
「ううむ其れはいかんな、闇の女神を倒す勇者は本来闇の代わりに世界に希望の光をもたらすがお役目、それもせずただ面白半分に女神を倒されては困る」
ゲーム、だよな?
なんか会話劇がゲーム表現以上に生々しく画面内で続いている……
「……」
この会社何時からブレイクスルー起こした?
「そうっ!この人私を倒して力を奪っておきながら全然世界に光の希望をもたらしていないのっ!」
ウルセ~小説の光のおっさんでも読めってか?
「これじゃ何のために私、この人の試練に成っているか判らないっ!」
そう言って闇の女神はボロボロの服と体を抱きしめしくしくと泣き始めた。
それを呼び出されたショタ兄貴はそっと抱きしめ頭を撫で慰めた。
それから表情を改めた。
「神よっ!日本の女神アマテラス神よッ!約定を違えし愚か物が日本国民で現れた。賠償にこの者を差し出せっ!」
その瞬大型モニターがぺかっと輝き画面から手が伸びてくる。
ポカンと珍事を見つめる俺様をつかんでTV画面内に引き込んだ。
俺様は情けない悲鳴を「あ~~~~~~っ!」と上げた。
気づけば土下座する人物がいた。
神々しい古代の和式古典礼服を着込んだ美しい女性。
彼女がTVゲームの登場人物たる闇の女神とショタの兄貴に謝罪している。
「許されよ~我らよりそんな愚か者が出るは神として~国としても~憂慮して居るが対策その他努力にもかかわらず~この手の愚図を好き勝手遊ばせたこと謝罪する~賠償にこの物の肉体と魂を捧げる故どうか良しなに~」
なんか速攻で天照大御神様に見捨てられる俺様。
その言葉を受けゲームキャラに過ぎないはずの闇の女神は泣き止みゆらりと立ちあがりこう言った。
「ふっフフフッ!日本人一匹ゲット!こいつのポテンシャルを改造すれば勇者様に魔改造も可能っ!罪を根拠に命令には絶対服従にしてくれるっ!」
そう言うと闇の女神は闇色のマジックボールを生成して俺様にぶっ放した。
よける暇なく高速で迫ったマジックボールの直撃を受ける。
次の瞬間、俺様の肉体がどろどろに痛みなく溶けて球形物質に変異。
意識はそのまま正常に保たれ知覚も可能な不思議な状態になってしまった。
「何じゃこりゃ?ヒック」
どうやら酔っぱらい過ぎて変な夢か幻覚を見ているらしい。
その後三柱の神様から俺様、物っ凄い怒られてしまいました。
説教と改造の一年。
その果て、俺様は兵器として異世界に出荷されることが決まった。
だが酔いが抜けず、話は半分も覚えていない。
……でも、物はもらった。
いや、チートか……
攻略本、をもらった。
不老不死もついてきた。
無限成長。
無限アイテムボックス。
大剣。
防具一式、
それに―――所持金十万プラムをもらった。
これが俺の「懲罰」装備でやんす。
中々に格好良い装備の山である。
へへへへ俺には似合わないぜっ!
悔しいっ!
……ダイエットしてればよかった……
―――、この装備で、異世界フェンデルを光の希望で満たすのが俺様の懲罰労働らしい。
だがチートをもらっても果たしてできるかどうか。
俺様、悲しき無能だぞ、ぐすん。
そんな俺様に神様は変なチャンスと言うか懲罰を科したわけだ。
まあ両足が復活してゲームっぽい世界を闊歩できるだけで俺様は幸せである。
そんな幸せな夢を見て俺様は眠りについた。
神様は俺みたいなクズに幸せな夢を見せてくれた。
今見た幻覚はそう言う事にしておこう。
おやすみなさい。
ぐうぐぐぐうぐうぐううぐううん……スヤアァ……
こうしてここに、暇奈留有機君、事、暇成る駄目有機物君の大冒険は始まった。
次回──ナイスガイ、草原に立つ。
両足がある。
チートもある。
だが、俺様は泣く。
異世界は、優しくない。
ぐすん……だが……無能なりにあがくべしッ!
俺様式、異世界懲罰譚──開幕。
星一つで俺様の懲罰がちょっとだけ軽くなるかもしれん……
星三つで女神の泣き顔がちょっとだけ笑顔になるかもしれん……
星五つで俺様が異世界でちょっとだけマシな扱いを受けるかもしれん……
いや、無理かもしれん……でも押してくれ。
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