第11話
「おー、アレが例の島か!」
「みたいだね」
かつて存在した古代魔法王国。その魔法使いたちが造ったとされる、北海道ほどの広さがあるという人工島が俺の眼下に広がる。
上から見た感じでは、人工物やその痕跡は見えない。山と海、川と砂浜、そして緑の木々が生い茂るジャングル。それだけだ。
「なんつうか、穴だらけだな」
ボンちゃんが、例によってウーちゃんに咥えられたまま喋る。もうそこが定位置だな。
見方によってはウーちゃんが喋っているようにも見えるんだけど、俺の知っているウーちゃんはこんな喋り方はしないと思う。もっとこう、幼くて健気な感じじゃないかな? そうであってほしい。
ボンちゃんの言う通り、なだらかに弧を描く島の海岸線には丸く湾があったり、見える限りの内陸部にも大小の丸い湖が無数にあったりする。穴っていうか、クレーター?
「あれ、多分神様の天罰が下った跡だろうね」
「マジか!? やっぱ神様怖ぇな!」
上空から見下ろしているから小さく見えるけど、あれ、ひとつのクレーターが小さいものでも直径三キロくらいある。大きいものは二十キロくらいあるんじゃなかろうか?
俺が全力で魔法を放ったら、もしかしたら同じくらいのクレーターを作れるかもしれない。けど、多分一回で打ち止めだ。あんなに沢山は放てないと思う。
やっぱり神様は怖いな。俺、よくあの攻撃を耐えたと思うよ。
いや? 先日の攻撃にそこまでの威力はなかったな? だとすると……
「もしかしたら、核が誘爆したのかもね」
「え」
ここって確か、古代魔法王国の核実験場だったはず。
だとしたら、もしかしたら核燃料が誘爆なり暴発なりメルトダウンからの水蒸気爆発なりを起こしたのかもしれない。
もしそうなら、貯蔵量次第だけど、あのくらいのクレーターができてもおかしくはない。
「おいおい! 放射能とか、大丈夫なのかよ!? いきなり緑のゴリマッチョになったらどうすんだよ!」
緑の豆だとグリーンピース? そら豆かな? ゴリマッチョならナタマメって線もあるか。ボンちゃんはすでにナタマメよりでかいけど。
「大丈夫、もう何百年も前の話だから、放射能はなくなってるよ、多分」
「そうかぁ? うーん、なら、まぁいいか」
もしかしたら、神様が見つけられなかった核燃料が地下に眠ってる可能性もあるんだけどね。地下って、魔素が通り難いから見つけ難いんだよ。
まぁ、放射性物質自体は神様の定めた禁忌には抵触しない。それをエネルギーとして利用しようとしたら天罰が下る。そういうルールだ。
だから放っておけば問題ない。見つけても埋め戻せばいい。単なる地下資源だ。
そもそも、俺達に核を実用化できるほどの技術や設備はないしな。
古代魔法王国のそういった設備は神様が徹底的に破壊しているだろうから、俺達が入手する方法もない。無用の心配だろう。
「とりあえず、あの湾の砂浜になってるところに降りてみよう。ちょっと高台に拠点を作って、そこを中心に周囲の探索、かな」
「「「はい!」」」
「ラジャー!」
なにはともあれ、久しぶりの冒険だ。ちょっとワクワクする。
◇
ふむ、とりあえず南国だな。ヤシの木があるところは南国。ハワイアンセンターとか。
あっ、鳥が飛んでる。尻尾長ぇ。孔雀っぽい。
基本、鳥はお友達だ。俺の宿敵、虫を喰ってくれるからな。
中には果物を喰う鳥もいるんだろうけど、俺は豆科だからな。果実をつけないから関係ない。
「なぁなぁビート、さっき鳥が飛んでたけど、この島って魔物はいるのか?」
「ん? うーん、少なくとも、この近くには強いのはいないっぽいね」
「そうなんだ?」
「ここ、絶海の孤島な上に、大きな海流からも外れてるっぽいんだよね。だから、鳥みたいな、空を飛べる魔物しか来られないんじゃないかな?」
なるほど。鳥の楽園ってわけか。
海の魔物なら近づけるけど、上陸はしないだろう。海に出なければ安全っぽいな。
「よし、安全なら問題ない! ウーちゃん、探検に行くぞ!」
ほら、あっちだよあっち。森の方。
いや、カジカジペロペロじゃなくて。あふん、そこは駄目ぇ!
「そうだね。念の為に周囲の状況を把握しておこうか。ウーちゃん、タロジロ。〝お散歩〟に行くよ。皆、設営よろしく!」
「「「承知しました!」」」
む、俺が言っても動かなかったのに、ビートが言うと動くんだな。キーワードは〝散歩〟か。ワンコだもんなぁ。
いいなぁ、ワンコ。囓られるのは困るけど、モフモフ加減と忠実さはポイント高いよな。あっちの世界にもいないかな?
舐められるのには慣れた。ビートもよく舐められてるしな。親愛表現なら問題ない。俺も舐めてあげたいくらいだ。ほぉら、ペロペロォ〜。
「思った以上に歩きづらいね。やっぱ人の手が入ってない原生林だからかな」
「そうなの? 俺は自分で歩いてないから分かんねぇわ」
「うん、獣道もなくて……アレ? 獣道っぽいのがあるな」
「ほう?」
獣道って、これか? 確かに、ちょっと下草が掻き分けられてる感じだな。
ということは、それなりの大きさの獣がいる?
「ヤバそう?」
「いや、そんなに大きくはないっぽい。辿ってみよう。いい獲物だったら食料にできるかもしれないし」
「了解ー」
当面の食料は、昨日狩ったアナゴさんで足りると思うけどな。
いや、足りないかもしれん。あのネコ娘が物凄い勢いで消費してたからな。明らかに体積以上の肉が消えている。あの娘、何者?
「……近いね……あっ、あそこ! 木の上に巣がある」
ビートの指先を辿っていくと……確かに何かあるな。でもあれ、巣っていうより……
「あれ、ツリーハウスじゃね?」
「確かに、そんな感じだね。ということは、それなりの知能を持ったヒトか魔物がいるってことかな?」
マジか! こんなジャングルに原住民が!?
「じゃ、もしかしてエルフとか?」
「いや、この世界のエルフは普通に家を建てて住んでるらしいよ。世界樹の話も聞いたことないし」
「なんだつまらん。そいつらエルフじゃねぇよ」
ファンタジーを理解してないな、この世界のエルフは。夢がない。
まぁ、あっちの世界にはエルフ自体いないんだけどな。ファンタジーを理解してないな、あの世界は。
おっ、そのツリーハウスから何か出てきた。【千里眼】でズームイン!
んー? 緑の肌に小柄な体躯……あー、アレはアレだな。
ゴブリンってやつだな、多分。
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