かつて日本という国が……(+1/自主企画)

アイス・アルジ

かつて日本いう国が……(一話完結)

 今は地下深く、かつての地球、青空の下に日本という国家があった。

 

 考古学者の卵、KRシシーは〝ミユニオン〟の地下情報庫で膨大なデータを発掘中に〝日本〟という新属の古代国家ネイションを発見した。発見した箇層は三万八千年前のデータ領域。この領域では今までいくつかの国家ネイションが発見されているが、この〝日本〟は、ごく小規模な国家ネイションのようだ。

 今、国家という概念はない。地球には〝ミユニオン〟という、ただ一つの社会構造があるだけだ。かつての〝デスコースト〟(資源枯渇に伴う最終戦争)を生き延びた人類はミユニオンを形成した。人類に残された資源は過去の膨大なデータのみで、多くの科学技術と学術知識が失われた。人は権威に従う生物だ、しかし人口が著しく増加すると、行き過ぎた権威主義と資源の争奪が激しくなり、人と人類を破滅の道に押しやった。 

 ミユニオン社会においては、権威は厳しく制限されている。何よりも、人口が激減したことで人類は一つにまとまった。そして、地球はデスコーストから再生し始めた。植物相と昆虫類はいち早く再生し、増殖した。ミユニオンも新たな時代に向け、再興を始めている。しかし人口が増えることで、人々の共生意識の分断と、権力争いの再発の可能性が増す。過去の過ちを繰り返さないため、古代国家の形成と分断、戦争に至るメカニズム、社会構造変化に関する研究が行われている。

 膨大なデータの中で、発掘作業が行われた箇層はごく一部で、今までに発見されている古代国家は主に〝USα〟〝中家c〟〝NATu〟三大属国家のみだ。この中に小規模なランドも含まれているが、詳細は明らかになっていない。三大属国家の特徴として、USαは大統領という一つの権力があり、その下に二つの勢力があった。この二つの勢力が分断をもたらした。中家cも一つの権力にまとまっていたようだが、周辺小国ランドとの間に分断と対立、抗争があったようだ。NATuはいくつもの小国権力構造に分断していた。またUSαには、これとは別に〝ホリッド〟という別の精神構造があり〝デズネィランド〟という内部小国を築いていたようだ。大統領とデズネィ国の関係は不明だが、対立していたような記録はない。中家cとNATuにも、〝党会〟や〝宗会〟という補助的な構造があったようで、これも研究途中だ。

 KRシシーが発見した日本国家ネイションは、USα、中家c、NATuに属していない、全くユニークな国家のようだ。目立った権力構造はなく、〝コミK〟という精神構造に統一されていたようだ。コミK精神の痕跡は、USα、中家c、NATuの内部にも見つかっている。もしかしたら、日本国家はその発祥場所の可能性がある。これは重要な発見かもしれない。

 KRシシーは、がぜん日本国家への興味が増した。もっと研究すれば、過去の過ちを繰り返さないための見識が得られるかもしれない。彼は賢人教授に提出するレポートの作成に取りかかろうと、この発見を記録した媒体を咥え地上へ舞い戻った。そして、人起源のコンピュータに記録媒体をセットすると、夕焼け空を見上げた。 

 

 説明が遅れたが、彼ら人類(正しくは人類後継者)は翼があるため、デスコーストを生き延びることができた。しかし、もしまたデスコーストのような最終戦争が勃発したら、次は生き延びられる保証はないのだ。 

 KRシシーはと一鳴きすると、未来を見つめ、黒光りする嘴でキーボードを叩き始めた。

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