うちんと〜もりもり家〜
侑李
陽梨お姉ちゃん
2048年 8月
数年前、郊外に購入した半二世帯住宅で森千陽、咲里夫婦と三森弥咲、璃華夫婦は同居生活を続けていた。その娘達は皆夏休みに入り、森家は咲里の実家に、三森家は弥咲の実家(といっても璃華の実家(璃華は千陽と恵梨の実姉で、3人の実家でもある)もすぐ隣接している)にそれぞれ帰省していた。なお、三森家の長女陽梨は現在12歳、絶賛反抗期中で2人の母親にはついていかず、生物学上父親である千陽達の方に同行していた。
「陽梨ちゃんなほんなこて、ちーちゃん(咲里の両親は千陽が小さい頃から知っているのでこう呼ぶ)の小学校ん時そっくりね」
普段あまり会わず久しぶりに会った陽梨の成長ぶり、益々パパの千陽に似てきたその綺麗な顔に「あん頃のちーちゃんだ!」と何か懐かしさを覚えるのは咲里の両親、望と鈴である。
「望兄ちゃんも鈴姉ちゃんもあんま言わんでよ、女で父親似ってなんかあれだし」※望も鈴も葛西家(璃華、千陽、恵梨の実家)三森家の祖父母達よりだいぶ年下で、陽梨は気を遣ってじいちゃんばあちゃんとは言わない。
「あーそうね、ごめんごめん。ばってんほんなこてちーちゃんと弥咲ちゃんといい感じで遺伝子受け継いでむしゃんよかたい」
「じいじ、おれは?」
「咲もかっこええよ」
「えへ」
照れ笑いする咲に、かっこいいと言うより可愛いなとデレデレな祖父母である。して、一旦皆で森家のご先祖さまの墓参りに行って、下の子達と娘夫婦を先に帰らせて、陽梨と咲にだけちょっと出かけよっかと告げる鈴と望。
「鈴姉ちゃん、どけ行くと?」
「ん、ちょっとご飯食べ行こか」
「普通に言うつたい(言うんだ)・・・こぎゃん時って「着いてからのお楽しみ」ってやつじゃにゃあとや」
「そぎゃん言うてもすぐバレるたい。それに陽梨ちゃんもいくら血は繋がっとらんだっちゃ、私達にゃ孫んごたもんちゅうか、ちーちゃんの娘なんだけん普通に孫と思とるし、そぎゃん気使わんで、ばぁばでええて」
「ばってん、やっぱ気にするばん。あっちのばあば2人より若いんだし、それに私も政美もこん子達とちごてしょっちゅう顔出すわけじゃにゃあし」
咲を指しながらそう言って、それにママ達の1番上のお姉ちゃんで元野球選手として有名な葛西陽葵と歳も変わらんのに余計年寄り扱いみたいな呼び方はしづらいよと言う陽梨。こういう陽梨の言動を見ると、鈴も望もやっぱこの子はあの葛西家と三森家の遺伝子がかなり濃い子だな・・・と改めて思う。して、ファミレスに着いた一行は、たまたま来ていた千陽の両親の冬未と隼瀬、そしてその次女の芳美と恵(恵は千陽や咲里の幼なじみの親友でもある)夫婦と孫の累のご一行とばったり出くわして、隣のテーブルに座る。
「望ちゃん、あんなら伝票はこっちに渡してええけん」ヒソヒソ
「なんなん、そらでけんよ隼瀬ちゃん、いくら陽梨ちゃんも咲もよう食べる言うたっちゃ、別に気にするこつにゃあけん・・・」ヒソヒソ
隼瀬と望のこのひそひそ話は距離的に普通に皆聞こえており、これに芳美も「いやいや、ここは私らが」と加わってうちが払う、いやうちが!と堂々巡りになって結局、食べてから考えようとの結論に行き着いて、なぜか陽梨と咲が恵を挟む格好で、陽梨や咲にとってはいとこにあたる累は望の横に席を移動する。
「ねえ、ちあき兄ちゃんは?」
「あー、今日は一緒じゃないとよ、やっぱ累ちゃんも千陽お兄ちゃん好き?」
「うん、パパよりひゃくばいかわええ」
「100倍かぁ、そっかぁ・・・」
そのパパ、恵の顔を見るとさほど気にしてないようで、まあ幼稚園からずっと千陽と一緒にいて、比べられたところでもう何も気にしないんだろうなと思う望である。で、彼も既にアラフィフに入っているとはいえ男子、じゃあおじちゃんは?と大人気ない事をいたいけな小学1年生に聞いて、隼瀬もじいじは?と加わって来る。
「「「「ふたっとも大人気な!」」」」
亭主陣と陽梨のツッコミを 「「せからしい」」と一蹴して、累の答えを待つ59歳(隼瀬)と46歳(望)の男子2人。累は初めて男子の圧というのを経験して、どうしたもんかと少し悩んで答えを出す。
「ま、まあじいじも望兄ちゃんもフツーにかわええよ、もちろんパパもね」
「「「おお・・・」」」
「わざわざパパも入れてくれてありがとう、累」
「仲間はずれはかわいしゃあし・・・それにパパはかわええけど、ちあき兄ちゃんがきれいすぎるだけで・・・・・・」
「累・・・」
幼いながらに男心を配慮してくれる娘が愛おしくてたまらずぎゅむムムッ、くぅー!と後半は某サッカーフリーク兄弟みたいになりながら抱きしめる恵。そして陽梨も、うちのパパは異次元なだけでメグ兄ちゃんも普通に美人よと恵をおだてる。
「陽梨ちゃんもありがとう」
「まあパパもばってん(だけど)、1番意味わからんとはこのじいじばってんね」
陽梨が指さす隼瀬の顔、実年齢とはかけ離れたご尊顔を見て、確かに・・・と、その隼瀬の若さの秘密を1人抱え込む冬未を除いてこの場の全員があー・・・と本当にこの人なんで何年経ってもいつ見ても老けないの?という表情で見る。
「な、なんね皆して・・・ちゅうか冬未のそん顔はなんね」
「え、いや・・・」
「?あ、お義母さん達ん事思い出した?」
「ま、まあそんなとこ・・・」
「そっか、あん時な、お義母さんの時な急だったし、お義父さんもすぐ後追いするごつで・・・僕も未だに思い出すけんね・・・・・・」
「あん人達ないつも隼瀬ば気にかけよったけんな・・・ってメグちゃんも鈴ちゃん達も陽梨達もごめんね、なんかしんみりさせて」
「んねんね・・・それよりばぁば、ばぁばのママとパパ、私とか咲、累、政美、華、菫、楓のひいばあちゃんひいじいちゃんか・・・ってどぎゃん人だった?ひいじいちゃんは私が4歳の頃まで生きとった言うばってんあんま覚えとらんし」
「んー、いつも一生懸命働いて、疲れとっても一切ばぁばとかじいじにはそぎゃん顔見せんでね、いつも人ん事ばっか心配して、自分の身体の事も・・・・・・」
冬未も隼瀬も思い出して瞳いっぱい滲ませながら、思い出話をゆっくりと、じっくりと噛み締めるように語って・・・この前亡くなった隼瀬の父、孔の話もまた語って・・・・・・すっかりもらい泣きする陽梨は頭の上に不思議な、何かどこか懐かしい感覚を覚えてふと上を見る。
「陽梨・・・?」
「今、なんか見えん何かに撫でられたごた・・・」
それを聞いて、姉ちゃん怖い話やめてよなんて言う咲だが、冬未と隼瀬はあ、そうだ陽梨は・・・と顔を見合わせる。陽梨はあまり覚えていないようだが、冬未の父、葛西亮は妻に先立たれた後、娘夫婦が引き取って一緒に生活しており、陽梨もちょくちょく会っていたし、彼女も「じっじ」と呼んでよく懐いていたのだ。して、その「じっじ」がこのお盆に帰ってきて曾孫の顔を見に来たら、また娘夫婦が泣いていて「この子達まだ心配だけん頼むよ」と言う具合に陽梨に触れてきたのではないか・・・と直感的に冬未と隼瀬、そしてその娘の芳美も、千陽の幼なじみとして生前の亮の人柄をよく知る恵も思った。して、帰った後、咲里ママと一緒にお風呂に入って、何となくこの時の話をする陽梨。
「そっか・・・陽梨なしっかりしとるけんね、多分ママ達ん事とか頼むよって言いに来たっだろね」
「ばってん、なんでママ達じゃなしに俺に言いに来たっだろ」
「まあ、陽梨な普段からしっかりしとるし、ママ達ん事もよう見てくれとっしね、そぎゃんとこも亮じいちゃんなしっかり見てくれよったって事たい」
「ちゅうか死んでまでそぎゃんみんなの事気にかけるって、いい人とか通り越してもう神さんよね」
「はは、確かになんか、あん人なら神さんなっとってもおかしにゃあね。ばってんそんなら、そん神さんに触れられた陽梨にゃこれからなんか加護のあるかんしれんばん」
「まあ、そんならひいじいちゃんも俺より妹達に加護つけて欲しいばってんね・・・」
その陽梨の言葉に、ああこの子はこういうところが父親の千陽と本当によく似てるから、あの心配性なじいちゃんも気にしてるんだろうなと思うと同時に、それなら亮は娘夫婦だけじゃなくてこの陽梨自身を心配してくれてるんだろうなと思う咲里である。
「陽梨な咲達の事ほんなこて大事にしとっとね」
「そら俺なあん子達みんなの姉ちゃんだけん・・・陽葵姉ちゃんがママ達ん事ば大事に思う気持ちと同じたい」
「そっか・・・そらやっちゃんば大事に思うのともまた違うと?」
「うん、まあそら寧子なもちろん俺の大切な人ばってん、咲も政美も華も菫も楓も、皆おらんなら俺は「姉ちゃん」じゃにゃあわけだし、あん子達にかっこ悪いとこは見せられんど?」
下の子達に、妹達にかっこ悪いお姉ちゃんであってはいけないと言う陽梨に、かつてあの人も同じような事を言ってたな・・・と、今まさに陽梨が名前を出したその人の顔が重なり、やっぱり姉妹が多い中で一番上の姉というのはああいう顔というかオーラのある感じになっていくんだろうか・・・と、風呂から上がって布団に入った後もしばらく考える咲里であった。
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