第13話 美少女に自分の選んだ下着を付けさせたい
「美羽たん。次この服着てみて! 絶対似合うから」
「わ、私にそんな可愛らしいの似合わないって。そういうのは花ちゃんの方が似合うんじゃない?」
「じゃあ一緒に着よう! 美羽たんが前で私が後ろね!」
「そんな二人羽織みたいに着ることは想定になかったよ!」
「大丈夫だから! 後ろから美羽たんの髪の香りをクンカクンカしたりしないから! 絶対しないから! 私を信じて!」
「信じられる要素が一切ない!」
私と美羽たんはサクラモールのブティックを端から端まで物色を行っていた。
楽しい。
今まで一人で何となくふらついていただけの場所が好きな人と一緒ならこんなに楽しいだなんて!
「み、美羽たん。はぁはぁ。つ、次は、下着売り場、い、いかない? はぁはぁ」
「急に全力疾走した後みたいな息切れ起こしてる!?」
「普通の、お、お友達らしく、一緒の試着室の中で、は、履き合いっこしよ?」
「普通のお友達は絶対そんなことやらないからね!」
えぇ!? やらないの!? 下着履き合い!? それをやらずに女子高生は何をして戯れているの!?
やばい、美羽たんがドン引きした顔を向けてきている。このままじゃ変態と思われてしまう。
私がちゃんと純な心の持ち主であることをアピールしなくちゃ。
「わ、わかった! 下着の履き合いっこはさすがにちょっと恥ずかしいよね。そういうの無しにしても下着売り場にはいかない? 普通に下着を買おうと思っていたし」
「……下心ないと言い切れる?」
「もちろん! この瞳を見て!」
私は大きな目をキラキラ輝かせて曇りのない瞳を美羽たんに見せつける。
美羽たんは終始怪訝そうな表情を崩さなかったが、しぶしぶ首を縦に振ってくれた。
「いやっほぉぉ! 美羽たんの下着も私が選んであげるからね!」
「別にいいよ。自分で選ぶよ?」
「だめ! 私が選んだ下着を美羽たんが身に着けることに意味があるの! 『今、美羽たんは私の選んだ下着をつけてくれているのかな』って妄想するだけで……ぐへへ……捗るなぁ」
「ほら下心あった!!」
美羽たんがこの場からダッシュで逃げ出そうとするが、ガッチリとホールドして彼女の逃走を許さない。
「ねえ、美羽たん。私がお金出して下着を買ってあげるから……今身に着けている下着を私に売ってくれる気……ない?」
「助けてぇぇぇ! ここに変態がいるぅぅぅ!」
ジタバタ暴れる美羽たんを引きずるようにして、私はスキップ交じりでランジェリーショップへと向かった。
全ての目的は……美羽たんの下着を手に入れる為!
もはや自分の欲望を隠そうともしない私は結局『変態』の称号を与えられてしまった。
「わかった。じゃあ私の下着あげるから美羽たんの下着頂戴。それならいいでしょ?」
「…………」
「今悩んだ?」
「な、ななな、悩んでないぃ!」
これはもしかして脈ありだろうか。
もし脈ありなら、嬉しいな。美羽たんの為なら私は喜んでパンツを差し出すからね。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
服や下着を物色していたらあっという間に正午を回り、フードコートで昼食。
その後、ゲームセンターに言ったり、屋上スペースで身体を動かしたりとめちゃくちゃ充実した時間を二人で過ごしていた。
「うへへ~」
ニヤケ顔で歩くのはもちろん私——ではなく美羽たんの方だった。
この数時間で美羽たんとはある程度打ち解けたと思う。
最初の頃は全然こんな笑顔見せてくれなかったもんなぁ。懐いてくれて嬉しい。
「美羽たんがご機嫌で嬉しいな。そんなに私の下着を持ち帰れるのが嬉しい?」
「下着交換なんてやってないからね!? 嬉しいのはこっち! こっちの方!」
美羽たんの手元には私がゲームセンターで取ってあげた大きなクッションが握られていた。
大きなお花の形のふかふかなクッション。
UFOキャッチャーで二千円は使っちゃったと思うけど、美羽たんにプレゼント出来て私も大満足だった。
「花ちゃん。可愛いクッションをプレゼントしてくれてありがとう。大事にするね」
「う、うん! そのクッションを私だと思って使ってね! ちゃんと美羽たんのお尻に敷いてね! み、美羽たんのお尻に敷かれていると想像するだけで私は……私はぁぁ!」
「どうして花ちゃんはいつも途中から変態染みた妄想を挟んでくるの!? そんな風に言われると普段使いしづらくなるよ!」
とか言いながら大事そうにクッションをギュっと抱きしめる美羽たん。
私からのプレゼントを本当に喜んでくれていることが分かって、こちらまで嬉しくなる。
「花ちゃん。今日はとても楽しかったよ。私と会ってくれてありがとう」
「こちらこそ! すっごくすっごく楽しかった! ま、また、遊びたい……な?」
秘奥義甘え声の上目遣い。
初めて使う奥義だったが、私の可愛さと甘え声は親和性が高いはず。
可愛さの相乗効果で美羽たんをノックダウン! なんちって。
「は……はい……! また……メッセージ……し、します」
「~~~~!!」
どうやら秘奥義は効果抜群だったようだ。
美羽たんの顔が真っ赤になり、めちゃくちゃ照れくさそうに次の約束を取り付けてくれた。
そのいじらしい様子を見て、熱が伝熱するように私も真っ赤になっていた。
このまま解散しちゃうの、寂しいな。
せめて、もう少しだけ美羽たんに触れ続けていたいと思い、私は無意識化に美羽たんの手に自分の手のひらを重ねた。
「~~っ!」
ハッとした表情で重なった手を見つめる美羽たん。
若干の躊躇の後、美羽たんは自分から私の手を握ってくれる。
「~~~~っ!!」
美羽たんが……美羽たんが……私の手を握ってくれている。
名残惜しそうに、離れることを嫌がるように私の手を力強く握ってくれている。
幸せな気持ちが胸いっぱい広がりながら、私達はゆっくりとサクラモールの出口へと向かう。
このまま、一生出口にたどり着きませんようになんて、可愛らしい思いを抱きながら。
「——花ちゃん? ——美羽子?」
だけど幸せな時間はほんの刹那なもので。
聞き覚えのある声が背後から聞こえてきたことで楽しかった時間は終焉を迎えることとなるのであった。
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