第21話
クラリスとの密会の次の週。俺たちは、ついにダンジョン攻略の授業に臨んでいた。
「これより、ダンジョン攻略の授業を始める!」
先生の大きな声が運動場に響き渡った。
生徒たちは皆、緊張した面持ちで静かに先生の話を聞いている。
「今回のダンジョンは、王国内でもっとも初級のものだ。だから、そこまで気を張る必要はないぞ。」
とはいえ、初めてのダンジョン攻略ということで、生徒たちは緊張を隠せない様子だった。
「まあ、ないとは思うが……」
先生はふと真剣な表情になり、腰に下げた袋から手のひらサイズのガラス瓶を取り出した。
「もし危険な状況になった場合、この緊急連絡ガラスを割れ! 俺がすぐに駆けつける!」
そう言って、生徒たち一人ひとりにガラス瓶が配られる。
これを割れば、先生に自分の現在位置が伝わるらしい。
「では、各チーム順番にダンジョンに入っていけ。」
ーーー
先生の合図とともに、最初にダンジョンへ入ったのはレオンのパーティーだった。
彼らの編成は——
・剣術の達人 レオン(前衛・アタッカー)
・回復役 ヒロイン・リリアナ(ヒーラー)
・槍使い ガレット(サブアタッカー)
・タンク役 ブラッド(盾役)
(……理想的なパーティー構成だな。)
前衛・後衛・支援とバランスが取れており、ゲームでもこのメンバーで物語を進めることになる。
一方で、俺のパーティーはというと——
・俺(魔法使い・土魔法)
・アリシア(魔法使い・闇魔法)
・インテリメガネくん
(……偏りがすごい。)
「フッ、僕に声をかけるとは、君たちはなかなか見所のあるヤツラだな。」
そう言いながら、インテリメガネくんことゼクトは、どこか誇らしげな表情で頷いていた。
(いやいや、お前、明らかに嬉しそうだぞ……。)
目尻に涙が浮かんでいるのを、俺もアリシアも見逃さなかった。
まあ、学園内でも"知識オタク"として浮いていた彼にとって、誘われること自体が嬉しかったのだろう。
「それで、ゼクトはどんな武器を使うのかしら?」
アリシアが興味津々に尋ねる。
(確かに、見た目的には遠距離支援タイプに見えるが、もしかしたら近接戦闘もできるのかもしれない。)
もし近接武器が扱えれば、前衛としての役割を持たせることも可能だ。
そんな淡い期待を抱いていると——
「僕はこいつを使う!」
ゼクトはそう言いながら、背負っていたカバンから短弓を取り出した。
「……弓か。」
俺とアリシアは、無言で視線を交わす。
(後衛・後衛・後衛……完全に後衛特化パーティーになっちまったな。)
だが、当のゼクトは俺たちの反応など気にも留めず、得意げな表情を浮かべる。
「君たちは何の武器を使うんだい?」
「俺は土魔法を使う。」
「私は闇魔法ですわ。」
それを聞いた瞬間——ゼクトの表情が固まった。
「……つまり、僕は弓使いで……このパーティー、全員後衛ってことか。」
(今さら気づいたのかよ。)
「まあ、最初のダンジョンだから、そこまで苦労することはないと思うが……。」
「念のため、ゆっくり進んだ方がいいわね?」
アリシアが提案するが、俺は首を横に振った。
「いや、俺は最深部に、できるだけ早く行きたい。」
「何か目的でもあるのかしら?」
「……単純に、自分の実力を証明したいだけだ。」
俺は適当な言い訳を作って答えた。
ーーー
だが、本当の目的は違う。
それは——
最深部で起こる"イベント"に間に合うこと。
原作では、このダンジョンのボスはそこまで強くない。
しかし、帝国の策略によって本来よりも強化されたボスが登場する。
そして、その戦いの中で——
槍使いのガレットが致命傷を負い、パーティーを離脱することになる。
彼は優秀な戦士だが、原作ではこの負傷によって今後の戦いに参加できなくなる。
これは"負けイベント"として、プレイヤーに"物語の厳しさ"を突きつける重要な展開だった。
(だが、俺はガレットを見捨てるつもりはない。)
負傷すれば、彼は学園を去り、以降のストーリーに絡めなくなる。
しかし、ガレットがいれば今後の戦力として貴重な存在になるのは間違いない。
(助けるしかない——知っていて放置するなんて、俺にはできない。)
問題は"どのタイミングで介入するか"だ。
助けるのが早すぎると、レオンたちの成長の妨げになる。
だが、遅すぎればガレットは致命傷を負い、取り返しがつかなくなるだろう。
理想の展開は——ボス戦の終盤で、俺たちのパーティーが駆けつけること。
とはいえ、俺たちのチームはダンジョンに入る順番が最後だ。
つまり、できる限り急いで進まなければならない。
「よし、二人とも準備はいいな?」
俺は、改めてパーティーメンバーの顔を見渡す。
アリシアはやる気満々の表情で頷き、ゼクトはすでに短弓を手にしていた。
「……さあ、行こうか。」
俺たちは、ダンジョンの闇へと足を踏み入れた——。
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