君の隣が特別になるまで
@yuzuyuzuyuzu00597
再会と違和感
1. 再会
放課後の空気には、どこか独特な解放感がある。
教室を出て、薄暗くなり始めた校舎の廊下を歩きながら、俺は何をするでもなく帰るつもりでいた。
いつもなら、そのまま家に帰るだけだ。友達と寄り道することもあるが、今日は一人になりたかった。
理由は特にない。単純に、そんな気分だった。
しかし、気づけば俺の足は駅前の小さな本屋へと向かっていた。
そこは、昔から通っていた場所だ。小学生の頃はよく立ち寄っては、立ち読みをして時間を潰した。最近はあまり来ていなかったが、ふと懐かしくなったのかもしれない。
店のドアを押し開けると、本の匂いと静かなBGMが耳に心地よかった。適当に雑誌コーナーを眺めながら、本当に読みたいものを探すわけでもなく、ただ時間を潰すように立ち読みを始める。
「……あれ?」
突然、聞き覚えのある声が背後からした。
振り返ると、そこには見慣れた顔があった。
「……雪?」
彼女――雪は、俺と同じく本を手に取ったまま、驚いた顔をしていた。
「やっぱり! なんか後ろ姿が似てるなーって思ったんだよ!」
彼女は相変わらず明るく、楽しそうに笑っている。
俺は一瞬、どう返せばいいのかわからなかった。
確かに、幼馴染だ。小学生の頃は毎日のように一緒に遊んでいたし、家も近所だった。
だけど、中学に入ってからは別のクラスになり、会う機会も減った。それから同じクラスになっても話しかけられずにいたので、今こうして会話するのは、1年ぶり……いや、もしかすると2年ぶりくらいかもしれない。
「久しぶりだな」
そう言いながら、俺は少しだけぎこちなく笑った。
「ねえねえ、なんでここにいるの?」
雪は変わらず俺の近くに寄ってくる。昔から距離感が近いタイプだったが、中学生になってからは少し違和感を覚えるようになった。
「別に、なんとなく」
「ふーん? わたしもなんとなく寄ったんだよね~。やっぱり考えること一緒だね!」
雪は楽しそうに笑う。
「……今、どんな感じ?」
「ん? なにが?」
「学校生活とかさ。楽しい?」
「まあ、普通かな。雪は?」
「うん、楽しいよ! 友達も増えたし!」
俺はそこで少しだけ言葉に詰まる。
「そっか」
「でもさー、やっぱりこうやって会えると嬉しいね!」
雪は本当に無邪気にそう言う。
「なーんか懐かしいなあ。小学生の頃は毎日のようにここで漫画読んでたよね」
「ああ、そうだったな」
話していると、少しずつ昔の感覚が蘇ってくる。
「ねえ、ちょっと久々にぶらぶらしない?」
「え?」
「せっかく会えたし、どっか行こうよ!」
雪はそう言って、俺の腕を軽く引っ張る。
こういうところは昔と変わっていない。
俺は少しだけ考えたが、特に断る理由もなかったので、頷いた。
「じゃあ、ちょっと歩くか」
「やった!」
そうして、俺たちは久しぶりに二人で歩き出した。
2. 久しぶりの帰り道
雪と並んで歩くのは、本当に久しぶりだった。
夕方の街は少しだけ肌寒く、秋の訪れを感じさせる風が吹いている。
「ふふ、なんか変な感じ」
雪が笑いながら言う。
「何が?」
「こうやって一緒に歩くの、めっちゃ久しぶりだからさ。昔は当たり前だったのにね」
「まあ……そうだな」
そう言いながら、俺も同じことを考えていた。
小学生の頃は、学校が終わるといつも一緒に帰っていた。途中の公園で遊んだり、駄菓子屋でお菓子を買ったり。
でも中学に入って、学校が別々になってからは、そんな時間もなくなった。
「ねえ、覚えてる? あそこの駄菓子屋」
雪が指差したのは、商店街の一角にある古びた店だった。
「ああ、まだやってるんだな」
「そうそう! ここでよくチョコ買ってたよね!」
「雪がいつも俺の分まで買わせてたんだろ」
「えー? そんなことあったっけ?」
雪は悪びれる様子もなく笑う。
「覚えてるくせに」
「ふふ、バレたかー」
そんな他愛のないやりとりが、妙に心地よかった。
俺たちは特に目的もなく、ただ昔を懐かしむように歩いた。
「ねえ、こっち行こう!」
雪が急に俺の袖を引っ張る。
「え、どこ?」
「いいから、ついてきて!」
俺は少し驚きながらも、逆らわずに歩いた。
3. 二人だけの場所
雪が俺を連れてきたのは、小学生の頃によく遊んでいた公園だった。
「おお、懐かしいな」
「でしょー?」
滑り台やブランコ、鉄棒はあの頃と何も変わっていない。
俺たちはそのままベンチに腰掛けた。
「ここ、まだ残っててよかった」
雪はそう言いながら、少しだけ遠くを見つめる。
「よく鬼ごっことかしたな」
「うん。でも、わたし足遅かったから、いつもすぐ捕まってた気がする」
「確かにな」
「えー、そこはフォローしてよ!」
雪が頬を膨らませる。
「事実だろ」
「むぅー……まあ、いいけどさ」
雪はすぐに笑顔に戻る。
「でもね、たまに思うんだよ」
「何を?」
「今、わたしたちが違う中学に通ってるのって、やっぱりちょっと寂しいなって」
雪の言葉に、俺は少し驚いた。
「……そうか?」
「うん。だって、小学校の頃は毎日一緒だったのに、今はこうして偶然会わないと話せないじゃん」
「まあ、それはそうかもな」
俺は少し視線を落とした。
雪がそう思っていたなんて、正直、考えたこともなかった。
「でも、こうしてまた会えたし、よかったよね!」
雪は明るく言う。
その笑顔を見て、俺の胸の奥で何かが引っかかる。
「……なあ、雪」
「ん?」
「その……学校、楽しいか?」
「うん! 楽しいよ! 友達もたくさんできたし!」
雪は嬉しそうに話す。
「そうか……」
「でもね」
雪は少しだけ声を落とした。
「やっぱり、こうして話せるのが一番楽しいな」
俺は一瞬、言葉を失った。
「……そうか」
「うん!」
雪は無邪気に笑う。
その言葉が、なんとなく俺の心をくすぐった。
4. 変わり始めた気持ち
それからしばらく、公園で昔話をしたり、バカみたいな話をしたりしていた。
「そろそろ帰ろっか?」
雪がそう言ったのは、空が完全にオレンジ色に染まった頃だった。
「そうだな」
俺たちは並んで歩き出す。
「ねえ、また会える?」
「ん?」
「今日みたいにさ、またこうやって話せる?」
雪が俺の顔を覗き込むように聞く。
「……まあ、暇な時ならな」
「やった! じゃあ連絡先交換しよ!」
「え?」
「今まで交換してなかったのが不思議なくらいだよね」
雪は当然のようにスマホを取り出す。
俺もそれに倣い、LINEのQRコードを表示する。
「これでオッケー!」
雪は満足そうに微笑んだ。
「じゃあ、帰ったら早速メッセージ送るね!」
「はいはい」
そんな会話をしながら、俺たちは家の近くまで戻ってきた。
「じゃあね、また連絡する!」
雪は手を振ると、自分の家の方向へと駆けていった。
その姿を見送りながら、俺はふと、胸の奥が妙にくすぐったい感覚に襲われる。
(なんだ、これ……)
今まで何とも思っていなかったはずの幼馴染が、今日はなぜか少し違って見えた。
それが何なのかは、まだ分からなかった。
でも、一つだけ確かなことがある。
――俺は、雪のことを気にし始めていた。
―― あとがき ――
初投稿です
これまで友達に「こんな物語がいい!」みたいなのを書いてきたのですが、今回友達に小説投稿サイトに投稿してみなよ!と誘われたので初めてみました。
私としてはさっさと付き合って欲しい!って思うタイプなので結構早めに付き合ってイチャイチャが始まると思います笑
ということでこれからよろしくお願いします
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