第10話 Jリーグとわたし
某サッカークラブファンとしては腹正しいが、巷にはJリーグについて的を得た言葉がある。すなわち税リーグ。
もちろんアンチサッカーファンが作った造語であり侮蔑的な響きはするが、筋が違うとはいい切れない。集客に苦しむクラブは、スポンサー収入も乏しく行政の支援を受けて事業を継続しているし、そもそも興行する場所も練習場も自前ではなく自治体の施設が多い。
プロ野球はどうなんだって声もあるが、彼らが支払う施設使用料はJリーグクラブより高い。俺が好きなクラブは、県立のサッカー専用スタジアムをホームとして自治体から管理を委託されているが、県の資料によると施設の収支は赤字である。
もちろんサッカーファンはチケットを買い、あるいは視聴料を支払って観戦しているのだから行政施設をタダ乗りしているわけではない。しかしサッカーが嫌いな納税者からすれば税金の無駄使いに思える。泥臭い感情論だが、Jリーグが公金に依存していることは事実である。
俺はもともとサッカーにかぎらずスポーツ観戦は嫌いであった。幼少のころゴールデンタイムに巨人のナイターが放送され好きなテレビ番組が見れなかった。高校では野球の応援のため学年単位で駆り出されるのは苦痛だった。
ましてサッカーは漫画で見るスポーツと考えていた。小学生のころキャプテン翼という荒唐無稽な漫画が流行った。当時日本はワールドカップどころかオリンピックにも出場できず、日本人のプロ選手は皆無だったと記憶している。その漫画の主人公はブラジルに留学してプロ選手になることが目標だった。
俺が中学生のころ、三浦カズ選手が高校を中退して単身ブラジルに渡りプロ契約したという記事が漫画雑誌の巻頭に掲載された。そのときは素直に驚き世の中には夢を実現できる人がいるんだと思ったが、日本代表はやはりワールドカップに出ることは出来なかった。
ワールドカップ出場するため国内リーグをプロ化する。その話をきいたころ俺は某サッカークラブ参加に批判的だった。大学の講義で提出したレポートでは、成功する見込みは乏しいといった内容で進めたと思う。
俺はその町を知っていた。父が入院していた病院があり母の運転で何度か訪れた。ヤンキー漫画に出てくるようなロケットカウルのバイクが真昼間に走っており、右翼の街宣車が道端に止まっていた。大きな工場と開発からもれて誰にも見向きされない空き地。雀荘と飲み屋と風俗店ばかり目立つ市街地。
町おこしのためプロサッカークラブを作る。ここでどうやって成功するんだ?数年後多くの自治体や企業が見学に来るような奇跡を、俺はとても想像出来なかった。
日本経済がバブル崩壊のため右肩下がりに落ちていくなかJリーグが誕生した。就職氷河期第一期生としては、その喧噪が不思議で仕方なかった。民間企業の求人が前年の半分になり、大企業はおろか中小企業の会社説明会に数ランク上の大学の学生がきていた。また内定取り消しになった知り合いもいた。去年までの売り手市場は何だったのだ?浮かれ気分はバケツで冷や水をぶっかけられた。
なにがドーハの悲劇だ。なにがJリーグ初代覇者だ。俺には関係ねえとやさぐれた気分の毎日だった。そんな中ふとテレビをつけると独特のヘアスタイルの選手がすごいスピードでドリブルしていた。サッカー番組はいつも反射的に消していたのだが、その選手から目が離せなかった。
30年以上経ったいまでは、昔のようにスタジアムに行く機会はへったがネットでの観戦は生活の一部になった。そして信じがたいが三浦カズ選手は還暦目前だというのにいまだに現役続行中である。さすがにこれを予見出来た人はいないと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます