第20話 永遠に、君と



 高校生活は、思った以上にあっという間だった。


 雄也と違う学校に通いながらも、私たちはずっと変わらずに過ごしてきた。


 「別々の学校でも、全然大丈夫だったね。」


 卒業式の日、校門の前で待ち合わせをしていた私たちは、晴れやかな空を見上げながらそんな話をした。


 「まあな。でも、最初は不安だったろ?」


 「……うん、ちょっとだけ。」


 「俺もだよ。」


 雄也はそう言って、私の手をそっと握った。


 「でも、結局ずっと一緒だったな。」


 「ほんとにね。」


 高校生活の思い出を振り返ると、いつも雄也がいた。


 お互いの学校の文化祭に遊びに行ったり、テスト前にカフェで勉強したり、記念日には必ずデートしたり。


 (これからも、ずっと一緒にいたいな。)


 そんな想いを胸に、私たちは次のステージへと進んでいった。


 ***



 高校を卒業し、大学に進学してからも、私と雄也の関係は変わらなかった。


 大学生になっても、お互いに時間を見つけて会うようにしていた。


 「今日は何食べに行く?」


 「和食の気分かな。定食とか?」


 「じゃあ、行きつけの店、開拓しようか。」


 大学近くのレストランを巡ったり、勉強で忙しい時期は図書館で一緒に過ごしたり——。


 どんな時も、私たちは寄り添っていた。


 そして——。


 大学4年生の冬、ついにその日が訪れた。


 ***



 その日、私たちは久しぶりの旅行に出かけていた。


 行き先は、付き合って初めてのデートで訪れた水族館。


 「懐かしいね。」


 「うん。ここで、雄也がすごいドヤ顔で手を繋いできたんだよね。」


 「え、そんなことあったっけ?」


 「忘れたフリしないで!」


 二人で笑い合いながら館内を巡る。


 だけど、どこか雄也の様子がおかしい。


 (なんか……緊張してる?)


 いつも余裕そうな雄也が、少しソワソワしている。


 そんな違和感を感じながら、私たちは展望デッキへと出た。


 「ねえ、彩花。」


 「ん?」


 「……こっち向いて。」


 そう言われて振り向くと、雄也は私の目をまっすぐに見つめていた。


 そして——。


 「俺と結婚してください。」


 スッと片膝をついて、小さな箱を開ける。


 中には、シンプルなダイヤの指輪が輝いていた。


 「えっ……?」


 一瞬、頭が真っ白になる。


 (え、これって……?)


 「ずっと前から決めてた。」


 「……いつから?」


 「たぶん、中学の頃から。」


 雄也は少し照れたように笑いながら続ける。


 「高校が別になっても、大学生になっても、ずっと彩花のことが好きだった。これから先も、ずっと隣にいてほしい。」


 私は、涙が出そうになった。


 「……ほんとに、私でいいの?」


 「俺は彩花以外、考えられない。」


 迷いのない雄也の言葉に、胸がいっぱいになる。


 (私も同じ気持ちだよ。)


 「……よろしくお願いします。」


 涙をこらえながら、私は微笑んで、彼に手を差し出した。


 「ありがとう。」


 そう言って、雄也はそっと私の指に指輪をはめた。


 (これからも、ずっと一緒だね。)


 世界が幸せな色に染まった気がした。


 ***


 それから数年後——。


 私たちは、たくさんの大切な人たちに見守られながら、結婚式を迎えた。


 純白のウェディングドレスを身にまとい、バージンロードを歩く。


 祭壇の前で待っている雄也と目が合った。


 (かっこいい……。)


 タキシード姿の雄也は、いつもより少し緊張しているみたいだった。


 「綺麗だよ。」


 小さく囁かれて、思わず頬が赤くなる。


 そして、牧師の前で永遠の誓いを立てる。


 「彩花、俺はこれからもずっと、君を大切にする。」


 「……私も。」


 指輪を交わし、誓いのキスをする。


 その瞬間、会場が大きな拍手に包まれた。


 (夢みたい。でも、これは夢じゃない。)


 私たちは、本当に夫婦になったんだ。


 ***


 式が終わった後、雄也と並んで会場を歩く。


 「奥さん、これからよろしくお願いします。」


 「……なんか、照れるね。」


 「じゃあ、もう一回プロポーズする?」


 「もういいよ!」


 「でも、何回言ってもいいくらい好きなんだけど。」


 「……ばか。」


 でも、そんな彼の言葉が、私は心から嬉しかった。


 どんな未来が待っていても、彼となら大丈夫。


 「これからも、ずっと一緒にいようね。」


 「当たり前だろ。」


 満開の桜の中、私たちは新しい人生を歩き始めた。


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