第10話 君の隣で


 放課後の生徒会室。窓の外には夕焼けが広がり、赤く染まった光が室内に差し込んでいた。


 雄也は少しだけ息を吐いて、私をまっすぐに見つめた。


 「……昨日の返事、聞かせてほしい。」


 昨日、雄也に告白された。でも、私はすぐに答えられなかった。


 だけど——今はもう迷っていない。


 私は静かに深呼吸して、彼の目を見返した。


 「……私も、雄也が好き。」


 その瞬間、雄也の瞳がふわっと優しく揺れた。


 「……ほんと?」


 「うん。昨日、すぐに答えられなかったのは、紗奈のこととか、いろいろ考えちゃったから。でも、やっぱり私は雄也が好き。」


 言葉にするだけで、心臓がドキドキする。でも、もう誤魔化したりしない。


 「……ありがとう。」


 雄也はそっと微笑んで、私の頭を優しく撫でた。


 「え、ちょっと……!」


 「かわいい。」


 「なっ……!」


 急にそんなこと言われたら、恥ずかしくて顔が熱くなる。


 「……ほんとに、俺たち付き合うんだな。」


 「そうだね。」


 「めっちゃ嬉しいんだけど。」


 雄也は照れくさそうに笑いながら、私の手を取った。


 「……こういうの、恥ずかしい?」


 「……少しだけ。」


 「でも、彩花のこういう顔、俺しか見られないの、ちょっといいかも。」


 「ちょ、やめて!」


 恥ずかしさで思わず手を振り払おうとしたけど、雄也は離さなかった。


 「でもさ、付き合ってること、みんなには内緒にしない?」


 「え?」


 「ほら、彩花って生徒会長だし、俺も副会長だから、変に噂になったらやりづらいだろ?」


 確かに、学校で恋愛の噂が広がるのはめんどくさい。


 「……うん、それがいいかも。」


 「ってことで、俺たちは“秘密の恋人”ってことで。」


 「なんか、その言い方ちょっと恥ずかしいんだけど……。」


 「じゃあ、これからはバレないように気をつけないとな。」


 そう言いながら、雄也は私の手をギュッと握った。


 (え、それバレるから!)


 「まず、学校ではこういうの禁止ね!」


 慌てて手を振り払うと、雄也は楽しそうに笑った。


 「了解、彩花会長。」


 こんな風に冗談を言い合えるのが、すごく幸せだった。


 私の特別な人。


 これからは、彼の隣で——。


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