第6話 遊園地デート…!?前編



 「ねえ、彩花先輩!」


 放課後、生徒会室に入るなり、剣斗が勢いよく駆け寄ってきた。


 「今度、生徒会メンバーでどこか遊びに行きませんか?」


 「遊びに?」


 「そう! みんなでリフレッシュしようって話になってて!」


 そう言いながら、剣斗はパンフレットを差し出した。それは、遊園地の特別招待券。


 「たまたま家に余ってて、せっかくだから先輩たちもどうかなって!」


 生徒会のみんなで遊園地か。悪くないな、と思ったけど——。


 「他のみんなは?」


 「実は……予定が合わなくて、行けるの彩花先輩と雄也先輩だけになっちゃいました!」


 「えっ?」


 「二人で行っちゃえばいいじゃん!」


 剣斗はキラキラした目で言う。


 (つまり……これ、デート……!?)


 断る理由もなく、私は戸惑いながらも「わかった」と返事をした。


 ***


 迎えた遊園地当日。


 「意外だな、彩花ってこういうところ来るんだ?」


 「え、普通に好きだけど?」


 「そっか。なんか、いつも生徒会長としてしっかりしてるイメージだから。」


 「今日は生徒会関係ないし!」


 雄也はクスッと笑い、「じゃあ、今日は思いっきり楽しもう」と言った。その言葉に、胸が高鳴る。


 最初に乗ったのはジェットコースター。


 「うわ、めっちゃ高い!」


 「怖いの?」


 「別に!」


 言った直後、猛スピードで落下し、思わず雄也の腕を掴んでしまう。


 「あ、ごめん!」


 「いいよ。」


 さらっと言われて、逆に意識してしまう。


 次に行ったのはお化け屋敷。


 「怖かったら、手、貸すけど?」


 「なにそれ、余裕だし。」


 ……と思ったけど、暗闇の中、突然現れた幽霊に驚いてしまい、気づけば雄也の腕を掴んでいた。


 「言っただろ?」


 笑う雄也の顔が、近い。


 (なんか……今日の雄也、ちょっと違う。)


 その後、観覧車に乗ることに。


 ゆっくりと登っていくゴンドラの中で、ふと沈黙が訪れる。


 「……彩花。」


 「ん?」


 「もし、俺が他の誰かを好きだったら……どう思う?」


 「え?」


 突然の質問に、心臓が跳ねた。


 「それって……好きな人いるの?」


 雄也は少しだけ微笑んで、「どうだろうね」と答える。


 (その言い方、なんなの……?)


 鼓動が速くなる。


 遊園地デートは、思っていたよりもドキドキする時間になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る