43章 お互いの結果報告

「おっ!気が付いたな」


シンは周囲を見て、最後に回し蹴りを食らって暗転あんてんしたことを思い出した。


「……あっ!――つっ、……いてて……ごめん、負けた」


「しょうがないよ。騎士相手に……」


「シン君は頑張りました!」


「なんか……俺の時と反応、違くねぇ?」


「あなたの場合は勝てそうな相手だったでしょう! ……私が3人も倒して引き分けなんてありえないんだけど!」


「うっ! そ、それは……互角ごかくの相手だった!」


「あっそう……。あなたと違ってシンはそれ以上の相手をしていたのよ。ねぎうのは当たり前でしょう」


「……はい、すみませんでした」


アルクが頭を下げた。

マリットは「分かればいいのよ」と言いながら、シンの頭を優しくでていた。


「……マリットじょうは、なんでシンに膝枕ひざまくらしてるんだ? 俺の時は馬乗うまのりされてたんだけど」


「えっ!、う~ん……顔?と性格?」


アルクは目をカッと見開いた、

「おい! 性格は別として、顔はそんなに違いはないだろう! こんな美形な顔をして」


「え~」

「え~」


マリットとエルナは、と声をあげた。


「まあ冗談はいいとして。そうね、アルクは雑に扱える人、シンは弟って感じでお世話したくなるのよね」


「冗談? ……顔は本気なん――」


「わかる! かわいいよね!」


エルナが気味ぎみに言って、アルクの言葉はさえぎられた。


「他に理由はあるわよ、シンは始まって以来の最年少で。本来受けれない年齢なのだけど、ギルド長の推薦らしいわ」


「そうなのか?」


「本当」


マリットの言葉を承認しょうにんするように答えた。


「本当のことを言うと、試験をなめてるわね。どんだけ厳しい所か教えてあげようかなと思ったけど……まあ、のはわかったから認めてあげるわ」


「なるほど……それにしても、あまりにも落ち着いて判断してたから、ちょっとは思ったぞ」


「そうかな?」


アルクは苦笑して、シンがもしかしたら、と答えた。

そんなやり取りを聞いていたエルナは不思議そうに首をかしげた。


「マリットはどこでその情報を聞いたの? シン君から聞いてないよね?」


「ああ確かに」


「ふふ、内緒よ」


出どころを言わないマリットに、シンはあえて聞かずに黙っていた。

マリットなら悪用するような人ではないと、ここ数日でわかった。


「……もう大丈夫。さあ帰ろうか」


立ち上がったシンを見て、アルクは大きく伸びをしながら、

「あ~疲れた。今日は外で食べようかな――」

と独り言を漏らした。


その後、みんなと別れたシンは部屋へ戻った。ドアの前に待っている者がいた。

そこにはちびが待っていた、近づいてよく見ると、その姿は泥だらけだった。


「ワン!」


「すごい姿だな」


ちびは尻尾をぶんぶん振りながら、嬉しそうに結果を報告をした。


(ぼく達、全部勝ったよ! ご主人様は?)



「はは、最後に負けてしまった……」



ちびは耳と尻尾をしゅんとさせ、声を落とした。

そこにケルがすかさず声をかけた。


(……ご主人様)


(ふむ、相当の手練てだれか?)


「ああ、騎士の人だった。たぶん団長クラス。レン団長とは違う、別の強さを感じた」


(ほう。ならいい経験だったと思って考えればいい)


(ああ。反省すれども後悔しなければそれでいい)


(ええ。負けは負けと捉え、次に生かせばいいのです)


シンは落ち込んでると思われ、苦笑しつつ笑顔で答えた。


「ありがとう、みんな」


「じゃあ先にちびの体を洗い流すか。終わったらご飯にしよう」


(うん!)


その後、ご飯をいただきながら、今日までの戦いを話し合った。

初戦でロスが、威圧いあつをかけて相手をビビり散らかし、ベロが激高げきこうしたこと。

その後はちびを中心に作戦を立て、勝利していったこと。

ちびは嬉しそうに色んなことを楽しそうに話した。

楽しそうに話していたちびに、シンは。


「楽しかった?」


(うん! 楽しかった!)


その姿を見て、シンも嬉しくなった。

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